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  • 『VIEW next』高校版 2024年度 4月号

次代を担う全国の若手教師が集まり語り合う「若手教師・教育創造MTG」第2期・第3回オンラインミーティング 詳細リポート

2024/04/19 09:30

2020年4月にスタートした、若手教師による対話のコミュニティー「若手教師・教育創造MTG(ミーティング)」は、23年10月、新たなメンバーで第2期の活動をスタートした。24年2月にオンラインで開催された第3回ミーティングでは、メンバーの関心が高い「進路指導」「探究学習」「主体的・対話的で深い学び」の3テーマについて、先生方の実践の発表と、それを基にした対話が行われた。その様子をリポートする。

◎ミーティング概要

・実施日時 2024年3月16日(土)15:00-17:00(Zoom開催)

・プログラム

「若手教師・教育創造MTG」第2期・第3回オンラインミーティング
(2024年3月16日実施)

当日参加された先生方

〈セッション1〉グループ1「進路指導」における実践のシェア

「進路指導」のグループでは、4人の教師が実践を発表した。

北海道・私立旭川明成高校の佐藤卓也先生は、生徒が夏季休業中に旭川市とその周辺の地域を訪問し、自治体の職員から地域の課題や取り組みを聞き、自分たちが将来どのような形で地域の活性化や住みやすい町づくりに貢献できるかを考えた取り組みを紹介した。自分の将来をイメージする力が乏しい生徒が少なくない中、実際に地域の具体的な課題について知る機会をつくったことで、自分なら課題に対して何ができるか、そのためには大学で何を学べばよいかを考える生徒が増え、総合型選抜・学校推薦型選抜の合格者増加に着実につながっていると述べた。

山形県立鶴岡南高校の五十嵐(いがらし)雄大先生は、「地学基礎」の地球史の分野と大気・海洋の分野の一部で自由進度学習に挑戦した。自由進度学習が知識・技能の習得を始めとするコンテンツベースの学力の担保や、総合型選抜・学校推薦型選抜で特に重視されるコンピテンシーの涵養にどのようにつながっているのかを検証した実践を披露した。大学入試を踏まえた学習目標が必要な高校では、どのようにすれば真の個別最適な学びが実現できるのか、今後も引き続き授業改善を模索したいと五十嵐先生は語った。

広島県・私立如水館(じょすいかん)中学校・如水館高校の田栗和馬先生は、2年次12月の三者面談で、クラスの生徒が保護者に「志望先プレゼン」を行った取り組みを紹介した。生徒は志望校の入試科目や進学に必要な費用などを調べ、保護者に説明。「その大学に進んで何を学びたいのか」「他の大学との違いは何か」といった保護者からの質問に答える中で、自身の志望理由に対して他者から共感を得るためにはどのように伝えるべきかに気づいた生徒が少なくなかったという。その結果、3年次4月時点の第1志望校決定率は70%と、大きな飛躍を見せた。

石川県立小松高校の菅村吉晃(すがむらよしあき)先生は、今後取り組んでみたいこととして、「進路シラバス」の作成を挙げた。近年、勤務校の教師の教職歴や進路指導の経験が多様になり、さらに働き方改革によって校務の効率化が求められている中で、何を目指し、何に時間をかけ、そして何を手放すのか、校内での合意形成が今まで以上に重要になってきている。生徒も多様化・多層化する中で、進路指導において最も重要な「希望進路の実現」と「自走できる生徒の育成」を両立するためのガイドラインとして進路シラバスの作成を構想していると語った。

〈セッション1〉グループ2「探究学習」における実践のシェア

「探究学習」のグループでは、5人の教師が実践を発表した。

北海道釧路湖陵高校の西川由紀恵先生は、生徒の自己肯定感の向上と主体的に学習に取り組む態度の育成を目的とした、探究的な英語の授業実践について共有した。クラスをグループに分け、グループ内で生徒が教師役になって、自分の担当するパートをほかの生徒に教える「ジグソーリーディング」などの取り組みを紹介した。生徒が人前に立つようになったことで責任感が生まれたことや、主体的な学びが促進され、英語4技能検定「GTEC」の結果が向上したことなどと説明した。

栃木県立足利清風高校の田島祥行(よしゆき)先生は、同校の2年生が探究学習だけに取り組む「探究Week」と呼ばれる3日間の活動について共有した。卒業生との対話、第一線で活躍する社会人による講演会、探究学習で取り組んできた個人研究の成果発表などのプログラムを経験した生徒から、「社会で活躍している人は遠い存在だと思っていたが、自分の身近にもいることが分かった」「高校生の自分にも、夢に近づくためにできることがあると気づいた」などと、未来に向けて自信を得たことを感じさせる声が多く上がったという。

富山県立富山北部高校の嘉志摩(かしま)有希先生は、同校普通科の1年生、2年生の探究学習を、「体験」と「成果物」をキーワードにコーディネートした1年間の実践について語った。里山整備のフィールドワークや流域治水に関するシンポジウムなど、研究者や地域住民とともに考え、学び、年度末には全員が3000字の論文を完成させた。地域の素晴らしさに気づくことは、生徒にとって進路意識を深めるきっかけになったと、嘉志摩先生は手応えを語った。

千葉県立実籾(みもみ)高校の吉浦鉄二先生は、スポーツの力を通じて地元・習志野(ならしの)市を盛り上げることを目的として、生徒がスポーツビジネスを学ぶ地元大学の学生と協働して、習志野市を本拠地とするアメリカンフットボールの社会人クラブチームの応援グッズを開発した活動を紹介した。生徒たちは、マスメディアでも広く紹介されたその取り組みを通じて、協働して取り組むことの苦労を経験しながら、0から1をつくり出す楽しみを味わったという。

東京都・私立多摩大学附属聖ヶ丘中学高校の出岡由宇(いずおかゆう)先生は、生徒が駅前の通りに出向き、地域の人たちに向けて地域課題に関する探究学習の成果を発表する「街なかプレゼン」などの活動について共有した。また、生徒の探究学習を支援するマインドを教師に醸成する取り組みとして、教師が自分の興味・関心のあるテーマで講義やワークショップを行う夏季休業中の特別講座を紹介。生徒が探究学習に没頭できる環境をつくるためには、まずは教師自身が探究することを楽しむことが必要だと語った。

〈セッション1〉グループ3「主体的・対話的で深い学び」における実践のシェア

「主体的・対話的で深い学び」のグループでは、2人の教師が実践を発表した。

福岡県立筑紫丘高校の徳永拓也先生は、英語のニュースのリスニングを活用した、主体的・対話的なリスニング学習の実践を紹介した。従来のリスニング学習は、教師の指示の下、クラスの生徒が一律に同じ音声を聞き、問題に答えるという内容だったが、1人1台端末の整備をきっかけに、生徒自身が聞きたい英語のニュースを自分の端末で選び、ペアを組んでいる相手にその内容を伝える活動を行った。授業中に自分が聞いた英語を楽しそうに伝え合う生徒の姿が見受けられ、模擬試験でも、リスニングの成績が上位層、下位層ともに飛躍的に上昇したという。

山形県立山形北高校の柴田勝将先生は、独自に簡易化したジグソー法と自由進度学習を取り入れた新しい授業構成への挑戦について語った。柴田先生は、従来の授業における「説明→演習→共有→振り返り」という構成では、短い時間であっても説明を聞くのに抵抗を感じる生徒が少なくないという課題を感じていた。そこで、教師からの説明を廃止し、2人1組になった生徒が互いに違う資料を読み込み、その内容を共有し、演習に臨んだ上で、生徒各自が復習の必要性を感じた内容を学習する自由進度学習に取り組む時間を設けた。すると、授業への生徒の参加意欲は明らかに向上し、自由進度学習の時間は効果的な復習の場となった。定期考査の点数もそれまでよりも平均10点上昇したという。

〈セッション2〉各グループがメッセージや課題を全体に共有

「進路指導」「探究学習」「主体的・対話的で深い学び」の3つのテーマごとに分かれたグループでは、各教師からの実践発表の内容を踏まえ、全国の学校現場に向けて発信したいメッセージとその背景、今後取り組むべきことについて議論した。

そして、各グループでファシリテーターを務めたメンバーが、グループ内で話し合われたことを参加者全体に向けて発表した。

グループ1「進路指導」

ファシリテーターを務めた富山県立南砺(なんと)福野高校の土田俊輔先生は、「生徒、教師ともに多様化が進む中、生徒も教師も、もっと視野を広げなければいけない。教師においては、多様性を認め合いながら、目線合わせをすることも欠かせない。進路シラバス、ポートフォリオの活用を通して、一人ひとりの教師の進路指導の成功・失敗をシェアしていくことが、表面的ではない本質的な目線合わせのためにも重要だと考える」と、グループ内での議論の要点を語った。

グループ2「探究学習」

ファシリテーターを務めた多摩大学附属聖ヶ丘中学高校の出岡由宇先生は、「探究学習を推進する上でのキーワードは『巻き込み』だ。学校外の人材、そして教科やキャリアを超えて校内のすべての教師を巻き込まないといけない。そのためには、渉外担当など、探究学習のコーディネートに専念する分掌を新設しながら、ここに集まったメンバーのように、教師自身が探究学習を楽しむ文化を学校につくっていくことが重要だ」と、グループのメンバーが得た気づきを説明した。

グループ3「主体的・対話的で深い学び」

ファシリテーターを務めた山口県立岩国総合高校の川端雄也先生は、「主体的・対話的で深い学びの実現には、学びの目的に対する生徒の納得感が必要。そして、学びの成果は、すぐに出る生徒もいれば、時間がかかる生徒もいる。私たち教師は、新しい実践の共有だけでなく、生徒を信じて、生徒に任せ、生徒を待つことの大切さを共通理解していくことが欠かせないと考える」と、グループでの話し合いの成果を語った

23年度は3回にわたってオンラインで開催された「若手教師・教育創造MTG」(第2期)。23年10月からの約半年間の活動を振り返った参加者からは、「同じ意気込みやモチベーションの仲間に会えることは最高の時間だった」「自由進度学習や教えない授業など、新しい実践に挑戦するきっかけが得られた」「学校外の人たちと広くつながりながら、さらに自分の能力を高めていかなければいけないと痛感した」などと、活動の価値や意義を実感する声が多く聞かれた。

「若手教師・教育創造MTG」(第2期)は、24年度も活動を継続する。これまでメンバーが重ねてきた対話の中で得た気づきを、それぞれの実践へとつなげ、その成果や課題をメンバーに還元していくことになるだろう。その活動の様子は今後も随時紹介していく。

※各先生の在籍校は、2023年度3月時点のものです。

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