学校では最近、タブレットを使って授業を行っているようですが、私たち親世代が経験したことがない学び方なので、家庭でどう教えてよいのか分かりません。私はいわゆる「ゆとり教育」を受けてきた世代のため、授業の内容自体も私が習っていないことが多く、子どもの教科書を見ると、知らない内容がたくさんあります。そのような、親が知らない学習内容や学習方法について、子どもにはどう教えればよいでしょうか。

(質問者:三重県/小2女子・母)

A無理に教える必要はない。生活の中で「知識の杭」を打つことを優先して

学校で学ぶことをすべて家庭でも教えられるようにする必要はないと思います。家庭ならではの生活や学びを大切にしてください。私がお勧めする学びは、普段の生活や遊びの中で、楽しく、知的な刺激を与えることができる「楽勉(らくべん)」です。

具体的には、植物や動物を育てる、昆虫採集に行く、海や里山で遊ぶといった、自然に触れる体験のほか、水族館や動物園、博物館、プラネタリウム、鉄道博物館などの施設に行くのもよいでしょう。同時に、教育的な内容の映像や、良質な動画を見るのもよいでしょう。できるだけ本物を見たり、本物に触れたり、本物を体験したりすることがポイントです。

本物に触れる体験をすると、子どもは「何だろう? すごい! 面白そう!」などと、非常に大きな影響を受けて、知的好奇心が育ちます。例えば、土星の環を天体望遠鏡で観ると、大人でもすごく感動します。それまで写真で見ていたものや知識として知っていたものとはレベルの違った感動があります。こうした本物体験をすると、その後でそれに関する情報や知識に触れた時に、非常に興味を持って臨めるようになります。これは、喩えて言えば流れる川に杭を打ち込むのと同じです。杭があれば流れてくる物がそこに引っかかって溜まります。つまり、生活という流れる川に本物体験によって知識の杭を打ち込むのです。すると、それに関する情報や知識が流れてきたとき引っかかって溜まるようになります。本物体験による知識の杭がなければ、そうした情報や知識もどんどん流れていってしまいます。

もちろん、すべてのことに対して本物に触れて体験することは難しいので、図鑑や学習漫画、カルタなどの楽勉グッズも大いに使いましょう。それらも知識の杭を増やすのに役立ちます。そのようにして、生活や遊びの中でごく自然な形で刺激を与え、知力を鍛えておきましょう。勉強が好きで学力が高い子は、そういった「知識の杭」がたくさんあるものです。遠回りに聞こえるかもしれませんが、勉強が好きになりますし、学力の向上も期待できます。ですから家庭では、学校での学習内容を教えることにこだわらなくても、大丈夫です。