うちの子は、中学校までの学習の遅れを取り戻せていないため、高校に入学してからも授業についていくのがやっとです。しかも、本人の学習意欲が低いため、自宅で学習することがほとんどありません。どうすればよいでしょうか。
(質問者:宮城県/高1女子・母)
A「個別最適化」が解決の鍵。少人数指導の塾や通信教育など、その子なりのペースで学べる環境を用意する
前の学年で習ったことなど、授業で既習事項とされている学習内容が定着していない子どもの場合、その子の理解度に応じた内容を、その子に合ったペースで学ぶことが極めて重要です。いわゆる「個別最適化」された学習をすることができれば、その子なりのペースで着実にステップアップすることができます。「できた」「分かった」という実感が持てれば学習意欲が向上し、自宅での学習時間も少しずつ伸びていくでしょう。現在は「個別最適な学び」の必要性が認識されつつありますが、実際の日本の学校教育は予算や教員の数に限りがあるため、その実現に向けてはまだ道半ばです。学習の遅れを取り戻すためには、学校だけではなく、家庭で何らかの手段を講じる必要があるでしょう。例えば、自分のペースで学習を進められる塾はその1つです。数人の子に1人の先生がついて、その子のペースで個別指導をしてくれる塾もあります。もちろん、家庭教師によるマンツーマン指導もよいのですが、料金が高いのがネックです。自分のペースで学べる通信教育やICT教材を活用してもよいでしょう。最近は、各自の理解度に応じて問題が出されるAIドリルや、ゲーム感覚で楽しく学べる仕かけが凝らされた教材も多数出ています。お子さんやご家庭の状況に合わせて最適な手段を見つけていただきたいと思います。
子どもが勉強についていけないという状況が発生してしまうのは、子ども自身の問題ではないと思っています。日本の学校教育システムの基本は、大人数での集団一斉授業です。学力の異なる大勢の子どもが、1人の教師から同じ内容を同じペースで教わるのですから、すべての子どもにとってちょうどよい難易度の授業の実現は極めて困難です。易しくすれば、できる子は授業がつまらなくなってしまいますし、難しくすれば、分からない子は置いてきぼりになってしまい、どちらにせよ、子どもは授業を受ける意欲をなくしていきます。つまり、学習の「遅れ」は、そうした教育システムの弱点に起因する問題なのです。
私自身、子どもの頃は数学が大の苦手でした。しかし、教員採用試験では数学も出題されるため、20歳を過ぎた年齢で中学1年生の数学からやり直しました。すると、かつて全くできなかった数学が、びっくりするほど簡単に感じました。理由は主に2つあって、1つは、「勉強しないと教員になれない」という絶対的な必要感。もう1つは、私の場合、中学生の時にはまだ数学的思考については、脳の発達が不十分であったのではないかと思っています。その後、何年かかけて脳が発達し、20歳を超えてから数学の内容について理解したり、思考したりする力が獲得できたのだと考えています。同じように、お子さんも今後の発達によって理解できるものが増える可能性もあります。今は焦らずに、個別最適化された学習環境を整えてあげましょう。
また、比較的好きな教科・得意な教科を伸ばす視点も大切です。親はつい、子どものできない部分や苦手な教科に向き合わせることに注力しがちです。しかし、好きなことに焦点をあてて、それを伸ばすことで、子どもに自信がつき、苦手なことも頑張ってみようという気になるかもしれません。教科学習はすべて苦手という場合は、勉強以外の趣味や特技に打ち込ませてもよいでしょう。子どもが好きな物事を応援することで、その子が楽しい毎日を過ごし、自己肯定感を伸ばしていけば、勉強にもよい影響を及ぼします。一見、回り道のように思えるかもしれませんが、長い目で見守ってあげてください。