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次代を担う全国の若手教師が集まり、語り合う「若手教師・教育創造MTG」第2期・2024年度・第4回オンラインミーティング・リポート
2025/04/24 12:00
全国から集った若手教師が自身の教育活動について報告したり、様々な教育課題について語り合ったりするオンライン・コミュニティー「若手教師・教育創造MTG(ミーティング)」。2024年度は、メンバーである若手教師12人が、それぞれの問題意識や興味・関心に基づいて設定したテーマに、グループや個人で取り組むことを通じて、自分自身をバージョンアップさせるチャレンジをしてきた。第4回オンラインミーティングでは、活動を通じて自分自身をどのようにバージョンアップさせることができたか、各メンバーが成果や気づきとともに報告した。その内容をリポートする。
◎これまでの活動
第1回オンラインミーティング 2024年7月12日(金)17:00-19:00(Zoom開催)
第2回オンラインミーティング 2024年9月13日(金)17:00-19:00(Zoom開催)
第3回オンラインミーティング 2024年12月20日(金)17:00-19:00(Zoom開催)
第4回オンラインミーティング 2025年2月28日(金)17:00-19:00(Zoom開催)
取り組んだテーマ
「授業において、生徒の力をどのようにして借りれば、うまくいくのか」
(メンバー:北海道羽幌<はぼろ>高校・小山<こやま>知倫<とものり>先生、山形県立鶴岡中央高校・五十嵐<いがらし>雄大先生、山形県立山形北高校・柴田勝将先生、東京都立田柄高校・島田愛実<まなみ>先生、山口県立岩国総合高校・川端雄也先生、福岡県立筑紫丘高校・徳永拓也先生)
授業改善の方向性として「生徒の力を借りること」を打ち出した6人のメンバーが、自由進度学習を含む自己調整学習などを授業に取り入れるなど、試行錯誤を重ね、互いの成果や課題を共有しながら授業改善を続けてきた。
山口県立岩国総合高校の川端雄也先生は、教師が教えない授業に取り組んできた。同じチームの教師たちが、誰からも指示をされたわけではないのに主体的に授業改善に取り組んできた様子を振り返りながら、「教師も生徒も、『こうなりたい』という思いを持つことで、主体的に学び始めるのだと改めて思った」と語り、互いの「こうなりたい」という思いをかなえるために人と人がつながることで、「みんながHAPPYな社会」を実現することができるのではないかと、自身の授業のあり方と目指す社会の姿を語った。
東京都立田柄高校の島田愛実先生は、自身の授業改善の具体的な成果や気づきを振り返った。自由進度学習を取り入れた授業を実践する中で、教師自身がすべてを教えるのではなく、生徒同士をつなぐことで、それぞれの生徒が主体的に学びを深めるような授業のあり方の重要性を確信した。授業では、生徒同士が「誰かに教えてほしい」「誰かに教えることができます」と授業の理解度を表すカードを使ったが、「教えられることがあるという生徒の方が想定以上に多かったのは、うれしい発見だった」と話した。
山形県立山形北高校の柴田勝将先生は、ジグソー法と自由進度学習を組み合わせながら、教師が教えない授業に取り組んできた。模擬試験では過去3か年で最も好成績を収めるほど、生徒たちの学力が向上したが、それ以上に、「ほかの人に説明する力がついた」「授業中眠くなることが全くなかった」「新しい授業の進め方に最初は不安を感じたが、自分でペースや内容を考えながら学習を進めていける自信がついた」など、新しい授業スタイル対して肯定的な声が生徒から上がったことを柴田先生は喜んだ。
福岡県立筑紫丘高校の徳永拓也先生は、「生徒に時間を返す」という考えの下、自身の英語の授業の中でのリーディングやリスニングの活動を、教師が準備した教材を生徒が選択して取り組むという自由進度学習型へと改善を進めてきた。「長期休業中の課題を生徒自身に選ばせたり、授業中の小テストを減らしたりして、様々な時間を生徒に返してきたが、2025年度大学入試共通テストでは、期待以上のよい結果が得られた」と取り組みの成果を語った。
山形県立鶴岡中央高校の五十嵐雄大先生は、24年度に現任校に異動してきたことを機に、生徒の主体性を引き出そうと、講義型の授業から生徒が協働的に学ぶ授業へと大きく転換した。主体的に学習に取り組む生徒、人付き合いが苦手なのにもかかわらず一生懸命発表に取り組む生徒など、様々な生徒の変化を成果として語った。その上で、「授業準備の負担を軽減しながら、生徒が考えたくなる課題の設定に今後も取り組みたい」と展望を語った。
北海道羽幌高校の小山知倫先生は、担当の音楽の授業で学んだ音楽的な見方・考え方を生かして、身近なラブソングを自由に設定して歌唱する活動を行った。既存の楽曲を基に考えていくことによって、身近な歌への理解が深まることをねらった。また、「水」の情景を表した楽曲を切り口として、和楽器「箏」で水のイメージを表現することをゴールに学習を進めた。生徒の学び合いが促されるグループづくりや課題の設定に配慮したことで、技術や意欲に差がある生徒たちの協働がスムーズになったと、小山先生は振り返った。
取り組んだテーマ
「教師による教育実践の発信と共有について」
(メンバー:市立札幌藻岩高校・對馬<つしま>光揮先生)
市立札幌藻岩高校の對馬光揮先生は、保護者、地域、学校のよりよい関係づくりのためには、生徒が成長していく姿を保護者や地域の方に知ってもらうことが肝要であると考え、日々の授業の様子を発信することに力を入れたいと、自身の教育実践をアーカイブしたサイト「マナブベイ」を公開した。
また、對馬先生は、自校内の中堅・ベテラン教師に声をかけ、「これからの高校教師に求められるもの」というテーマで教育専門誌「SUHARA」を自主制作した。同校は近隣の高校との再編に伴い、29年3月に閉校する予定だ。これを受けて、「本校で行われた教育を後世に残したい」という思いから、對馬先生は同冊子を制作し、学校のウェブサイトで公開した。そのように、自身の教育活動を様々な形で地域に発信してきた1年間を振り返り、「『若手教師・教育創造MTG』のメンバーを始めとする多くの方々からフィードバックをいただき、次の一歩を踏み出す勇気が出た」と、活動の成果を語った。
取り組んだテーマ
「学校横断型の教員研修」
(メンバー:北海道・私立旭川明成高校・佐藤卓也先生、東京都・私立多摩大学附属聖ヶ丘中学高校・出岡<いずおか>由宇<ゆう>先生、広島県・私立如水館<じょすいかん>中学高校・田栗和馬先生)
教師の資質・能力の向上を図るために、教師同士も学び合うことができる学校づくりを目指して、オンラインで互いの学校を結ぶ合同教員研修を、24年12月と25年2月に実施した。
北海道・私立旭川明成高校の佐藤卓也先生は、「生徒の主体性を育むためにできること」というテーマで実施した合同教員研修を振り返り、「研修に参加した自校の同僚から、『やる気と元気がもらえた』『自分の常識が覆った』『同じ悩みを持っている他校の先生と語り合えたことがよかった』など、肯定的な感想をもらった」と報告。生徒の主体性については、授業だけでなく、部活動やホームルーム活動、さらには校外活動など、多様な活動の中での育成を模索したいと、今後の展望を語った。
東京都・私立多摩大学附属聖ヶ丘中学高校の出岡由宇先生は、合同教員研修を振り返り、「他校の先生と語り合ったことで、これからの高校教育のあり方について改めて考えることができた。研修の成果は教育の本質に迫るものだったが、研修に参加した同僚たちの様子は、教育論を語り合うというよりもおしゃべりを楽しむといった気軽な感じだった。変化の大きな時代だからこそ、学校の中に『ざっくばらんにおしゃべりをしよう』といった文化がますます求められると思う」と、教師同士で語り合うことの大切さを指摘した。
広島県・私立如水館中学高校の田栗和馬先生は、教師と生徒が学び続ける者として対等の関係性を持ちながら、「分からない」「教えて」「分かった(そうなんだ、すごい)」とともに学び続ける「共育スパイラル」への気づきが合同教員研修の実施へとつながったことを振り返った。そして、「教師は学校生活の中にある小さな問題の解決を、生徒とともに考え、取り組むことで、『チャレンジ→経験→新たなアクション』のサイクルを生徒と一緒に楽しんでいきたい」と、今後について意欲的に語った。
取り組んだテーマ
「自学の質を高めるには」
(メンバー:栃木県立足利清風高校・田島<たじま>祥行<よしゆき>先生、福井県立勝山高校・片矢雄大先生)
生徒の「自分で学ぶ」という行為の質を高めるために、2人の教師が自由進度学習などの実践を共有してきた。大学入試に向けた3年生の入試演習での実践と2年生の授業での実践、学年や学習の目的が異なる取り組みの成果や課題を共有しながら、授業改善を進めてきた。
栃木県立足利清風高校の田島祥行先生は、1、2時間目に連続2コマで行う数学の授業を、2週間4コマを1セットとして生徒に教科書の該当ページを示し、前半2コマを自由進度学習で、後半2コマを教科書の例題解説で進めた。教師が「教える」時間はなくし、生徒が自分の理解が正しいかどうかを「確認できる」時間を設けた。授業の様子を録画し、生徒が必要な時に見直せるようにしたこともあり、主体的に学習に取り組む生徒が増え、田島先生が担当するクラスの定期考査の平均点は着実に伸びていった。
福井県立勝山高校の片矢雄大先生は、3年生の入試演習の授業で、どの課題を、どのように取り組むかを生徒自身に考えさせた。また、授業日の朝までに予習の位置づけの課題を提出させて生徒の取り組み状況を確認し、授業の前半は、つまずいた生徒が多かった問題のポイントを解説。後半の時間の使い方は生徒に委ねた。片矢先生は、自身と田島先生の実践を総括しながら、「生徒の自学の質の向上は、生徒と生徒、あるいは生徒と教師がともに問題に向き合う中で実現するのではないか。つまり、協働が自学の質を高めるのではないかと考えるようになった」と語った。
12人のメンバーは、自身の活動に没入するだけでなく、ほかのチームやメンバーの活動にも強い関心を持ち、何かを学び取ろうとする意欲を持ち続けて活動に取り組んできた。4つのチームで実践された12人の取り組みは、生徒のために、よりよい授業、よりよい学校を目指したいという共通の思いで確かにつながっていた。
所属校が異なる「若手教師・教育創造MTG」のメンバーが協働し、それぞれの課題の解決に挑戦することができたのは、自分の本音や悩みをほかのメンバーに吐露できたからだと教師たちは語る。相手の話をちゃんと聞いていることを態度で示したり、学校現場で試行錯誤する実体験を踏まえて他者の思いに共感したり、アドバイスを送ったりすることで、教師一人ひとりの持っている力を引き出す「安心・安全な空間」はオンライン上でもつくることができることをメンバーは証明した。「若手教師・教育創造MTG」の学校を超えたコミュニティーとしてのあり方については、『VIEW next』高校版2025年4月号に掲載している。