学校教育情報誌『VIEW next』『VIEW next』TOPへ

  • ウェブオリジナル記事

新世代toi-time 第11回テーマ「『分かりやすい授業』を実現するために、私たちができること」
問い「分かりやすい授業」を実現するために、どのようなことに取り組むべきですか?

2026/05/08 09:00

K先生からの問い
「分かりやすい授業」を実現するために、どのようなことに取り組むべきですか?

コラム執筆者

市立札幌藻岩高校
對馬光揮(つしま・こうき)

コラム末で、筆者が日々の授業実践や学びの記録を発信するウェブサイトを紹介しています。

改めて考え直したい「問い」をありがとうございます。このコラムでは、教師が意識すべき「分かりやすい説明」とはどのようなものか、そして、「分かりやすさの多様性」ということについて述べていきたいと思います。

1.説明は極力短くする――人は最後まで話を聞いてくれない

はじめに強くお伝えしたいことが、「説明は極力短くする」ことの重要性です。(これから長々とこのコラムを書いていく手前、大変恐縮ですが……)

と言うのも、自分が聞く側に立った際、5分以上の説明が続くと「長いな」と私は思ってしまいます。5分というのは、原稿用紙で4枚程度の分量になります。目で文字を追う分には負担感も少ないですが、1500字以上の情報を耳で把握するとなると、何がポイントなのか整理しきれなくなります。さらに1つのセクションとして10分以上話を聞かなければいけないとなると、ほとんどの聞き手の顔は曇り、話し手の伝えたいことは1割も伝えられずに時間だけが過ぎていく、ということはよく起きている現象だと思います。

また、話が長い人は核心的な部分に厚みを持たせているのではなく、多いのは前置きや補足で、結果的に結論が埋もれてしまう傾向にあると思います。したがって、「人は最後まで話を聞いてくれない」という前提に立ったうえで、話は腹八分目、いや、「腹三分目」くらいに抑えて、「必要なことを、必要な言葉で、短く伝える」ように私は意識しています。

2.結論を端的に示す――PREP法という小ワザ

次に、分かりやすく説明するコツとして「構成」についてご説明します。

私は、PREP法(結論Point→理由Reason→具体例Example→結論Point)を意識して話すようにしています。これは志望理由書の添削や面接指導にも役立つものです。

特に重要なことは、「結論を端的に示す」ということです。冒頭で結論やゴールを示すことは、「この話はどこに向かっているのだろう」という聞き手の不安を取り除く効果もありますし、「それで、結局何が言いたかったの?」と聞き手を迷子にさせないためにも有用です。

「1.」で記した内容をPREP法を用いて書き直すと、「分かりやすい授業のためには、説明は極力短くするべきです。なぜなら、人は長い説明を最後まで集中して聞き続けることが難しいからです。例えば、5分を超える説明になると、聞き手は内容を整理しきれず、10分以上になると多くの場合、伝えたいことの大半が伝わらなくなります。また、話が長くなるほど前置きや補足が増え、結論が埋もれてしまう傾向にあります。だからこそ、説明する際には、必要なことを、必要な言葉で、短く伝えることが重要です。」といった形になります。

補足すると、「1.」では結論の後に理由ではなく「具体例」を先出することにしました。理由にあたる「人は長い説明を最後まで集中して聞き続けることが難しい」という部分は、頭に持ってくるにはやや断定的だと感じたのと、具体例から入る方が「そういうこと、あるよね」と読み手は共感しながら、コラムを読み進めていただけると考えたからです。

PREP法は絶対的な構成ではないのでアレンジする分には問題ないですが、結論・理由・具体例といった3つの要素を意識しながら話すことは、分かりやすい説明のコツとして使えると思います。

3.聞き手の疑問を想定する――目的と活動の明確化

また、「相手の関心や疑問に寄り添いながら話をする」ということも大切なポイントです。分かりやすい説明とは、単に情報を整理することではなく、聞き手が感じている「疑問」や「モヤモヤ」に応えることで成立します。「ここまでの説明で、○○と思った人はいないかな?」「そうしたら、何でこんな結果が出たのだろうって疑問に思わない?それはね……」というように、聞き手の疑問や共感を想定したり、聞き手の意見を踏まえたりすることも、分かりやすい説明のコツです。

さらに、説明だけではなく「分かりやすい授業」ということを考えると、学習者が「学習の目的」を理解し、「いま、自分は何をしなければいけないのか」ということを明確に把握していることもポイントです。授業者としては、「○○のために今回の授業があるんだよね」「そうしたら、最初の10分間は○○という活動に取り組もうか」といった声かけを意識してみるとよいと思います。「何のために、何をするのかということは、案外、他者には伝わっていない」と思って指示を出した方がよいでしょう。

4.自分の「分かりやすさ」を疑う――分かりやすさの多様性

最後に、「そもそも、誰にとっての『分かりやすさ』なのか」ということを考えていきたいと思います。前半でお示ししたようなコツ(テクニック)に比べて、より本質的な内容になりますので、ぜひ最後までお付き合いください。

慶應義塾大学が主催する「小泉信三賞全国高校生小論文コンテスト」というものがあるのですが、「わかりやすさ」という課題で2025年度に受賞した問山遼太郎さん(京都市立紫野高等学校2年)の小論文を読み、私は胸を打たれました。

筆者はディスレクシアの当事者として、読み書きに困難があり、努力しても成果に結びつかず、周囲から誤解される経験をしてきました。しかし、ICT機器や音声教材などの支援を受けることで、内容理解が進み、自分の力を発揮できるようになります。この経験から、学びにくさは本人の能力ではなく環境に起因する場合があると指摘し、合理的配慮は特別扱いではなく、誰もが公平に学ぶために必要なものであると述べています。

私は特に、筆者が現代の教育に対して投げかけた「それは誰にとって、どんな条件で『わかりやすい』のか――この前提は意外と問われていない」という言葉が印象に残っています。

そこから、私が初任者研修の時に耳にした「利き感覚」という言葉を思い出しました。「視感覚タイプ」は目で、「聴感覚タイプ」は耳と文字で、「体感覚タイプ」は触って情報を確かめる傾向にある、というお話です。したがって、ある作業を覚えてもらう時には、「視感覚タイプ」には見て覚えてもらい、「聴感覚タイプ」には説明書を渡して文字で覚えてもらい、「体感覚タイプ」には実際にやらせて覚えてもらう方がよい、と講師の方は仰っていました。

私がその話から学んだことは、「自分が見て覚えるのが得意だからといって、他の人がそうとは限らない」ということです。自分の「普通」を疑い、それぞれの個性に合ったやり方を生徒とともに模索することの大切さを、その研修で教えていただきました。

授業をデザインする際、「分かりやすさの多様性」という視点に立ち、「自分にとってはこれが分かりやすいと思うけど、他の人にとってはどうなんだろう?」と一度立ち止まって考えてみると、新たな発見があるかもしれません。

5.「分かりやすさ」ではなく「考えやすさ」

最後に、最近私の心が揺さぶられた言葉をご紹介して終わりたいと思います。

本校には、分かりやすい授業をしていることで有名な数学科の先生がいるのですが、このコラムを書くにあたって「分かりやすさ」ということについて話を伺ってみました。すると、その先生は「分かりやすく説明できることは教師として大切な能力だけど、なんでもかんでも分かりやすくしてしまうと生徒たちの思考は鈍ってしまうから、時には『分からない』という体験も必要だよね。そう考えると、『分かりやすさ』というより、その生徒にとっての『考えやすさ』というものを意識して声をかけることが大切なんじゃないのかな。」と仰っていました。

説明は分かりやすく、構成を意識して端的に話す。一方で、「分からない」という経験も大切にする。そして、「分かりやすさの多様性」という視点に立ったうえで、どのような声かけや学習環境がその生徒にとって「考えやすい」ものになるのかを意識する。そうしたことを踏まえて授業をしていきたい、と私は思っています。

 

オススメの本:『「話す・聞く・書く」伝え方のシン・常識 半分にして話そう』(山川龍雄、日経BP)

對馬が授業実践や学びの記録を発信しているウェブサイト:マナブベイ

Benesse High School Online|ベネッセハイスクールオンライン

ベネッセ教育総合研究所

Copyright ©Benesse Corporation. All rights reserved.