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次代を担う全国の若手教師が集まり、語り合う「若手教師・教育創造MTG」第2期・2025年度・第3回、第4回オンラインミーティング・リポート
2026/05/08 09:00
全国から集った若手教師が自身の教育活動について報告したり、様々な教育課題について語り合ったりしているオンライン・コミュニティー「若手教師・教育創造MTG(ミーティング)」。第2期3年目となる2025年度は、メンバーの若手教師が、自分が持っている問題意識や興味・関心に基づいて取り組むテーマを設定し、グループや個人で活動してきた。25年度最後のオンラインミーティングでは、各メンバーが25年度の活動を通じて得られた成果や気づき、そしてそれらを今後の教育活動のどう生かしていくのかなどについて報告した。その内容をリポートする。
※プロフィールは、2026年3月時点のものです。
◎これまでの活動
第1回オンラインミーティング 2025年8月7日(木)16:00-18:00(Zoom開催)
第2回オンラインミーティング 2025年10月7日(火)17:00-19:00(Teams開催)
第3回オンラインミーティング 2025年12月15日(月)17:00-19:00(Teams開催)
第4回オンラインミーティング 2026年3月5日(木)17:15-19:15(Teams開催)
<2025年度の活動方針及び取り組むテーマを設定するまでの本MTGの活動については次の記事をご覧ください>
次代を担う全国の若手教師が集まり、語り合う「若手教師・教育創造MTG」第2期・2025年度・第1回、第2回オンラインミーティング・リポート | VIEW next ONLINE
取り組んだテーマ 「冒険する学校」
(メンバー:山口県立岩国総合高校・川端雄也先生)
〈取り組みの概要〉
東京大学大学院情報学環で特任助教を務める安斎勇樹氏の著書『冒険する組織のつくり方』(テオリア)、『新・問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などから着想を得た川端先生は、生徒や教職員が幸せであるための学校づくりについて考えた。オンラインミーティングでは、同書の中の「変化に適応できる」「学びの機会になる」「好奇心をそそる」「未来を見据える」「実験的である」という5つの条件を満たすことで、「やらされ感のある目標」ではなく、「ワクワク感のある目標」が設定できるという「ALIVEの法則」を紹介。さらに、川端先生は生徒が「ALIVEの法則」に基づいた目標を設定できるよう、教師が伴走役として活用できるシステムを生成AIを使って開発。オンラインミーティングにおいて「若手教師・教育創造MTG」メンバーの教師にそのシステムを利用した目標設定を体験してもらった。「教師も生徒も見方を変えることで、やらなければいけないことを自分がワクワクする機会に変えられたら、それはとても素敵なことだと思う」と、川端先生は「冒険する学校」づくりへの今後の意欲を語った。
取り組んだテーマ「探究学習モデルの開発」
(メンバー:北海道釧路江南<こうなん>高校・小山<こやま>知倫<とものり>先生)
〈取り組みの概要〉
芸術科(音楽)の担当教師としての実践を通して、創作分野に苦手意識を持つ生徒や教師が多いという課題意識を持った小山先生は、生徒が自己のイメージを膨らませながら表現意図を持って試行錯誤し、「音」を「音楽」へと構成する過程を体験できる授業モデルの開発に取り組んだ。創作は探究学習と親和性が高いと考える小山先生は、「概念型探究」や「逆向き設計」の考え方を音楽の創作分野の授業デザインに応用。ICTを活用して学習指導の改善を図ったり、生徒に「ジャズらしいメロディ」「サウンドロゴ」の制作などに取り組ませたりした。生徒は「人の心を動かすメロディとはどんなものか」「伝える・表現することとはどういうことか」「社会における音楽の役割とはどのようなものか」など、創作という営みに対する思考を深めた。2026年度は創作だけでなく、鑑賞にも探究的な学びを組み込むことで、生徒の興味・関心を引き出すことが可能かどうか、さらに研究を続けながら、音楽を始めとする芸術科でのアウトプット活動を、学校全体の探究学習の中に有機的に位置づけていきたいと小山先生は語った。
取り組んだテーマ「これからの授業のあり方」
(メンバー:山形県立鶴岡中央高校・五十嵐<いがらし>雄大先生、山形県立山形北高校・柴田勝将先生、東京都立田柄高校・齋藤<さいとう>愛実<まなみ>先生)
〈取り組みの概要〉
少子化による大学入試の競争の緩和やコロナ禍を契機とするオンライン学習の普及など、高校生を取り巻く環境が大きく変化する中、学校の存在意義を問い直し、新たな価値を創出する必要があると考えた3人のメンバーが、社会で生きて働く力を育むことを目指す授業や、教師の成長にも寄与する観点別学習状況の評価の実践などに取り組んだ。
五十嵐先生は、生徒一人ひとりが単元の内容についての問いを自分で立て、教師の伴走的な支援を受けながらその問いの答えに迫る地学の授業を2年生に対して行った。授業後に取ったアンケートでは、生徒の多くが、教師から問いを与えられる授業よりも自分で問いを立てる授業が合っていると答えた。一方で、講義型の授業を望む声もあり、「問いを立てるのが難しい」「自分の問いとほかの人の問いが違い過ぎないか不安」「周りと違うことを掘り下げていると、ほかの人に意見を聞きづらい」など、問いを立てる学習に苦慮する生徒もいた。ただ、そうした授業を受けた生徒たちは模擬試験などで例年と変わらない成果を上げていることから、自走する学びへの手応えを感じていると五十嵐先生は語った。
齋藤先生は生徒が自分の変容を実感できる数学の授業を追求してきた。24年度から「生徒とともにつくる授業」をモットーに、「学び方」「評価基準」を生徒自身が選ぶ授業を行ってきた。25年度は深い学びを確かなものにすることを目標に、単元のまとまりの中で生徒が発見した多様な考え方や表現を齋藤先生がまとめたり、齋藤先生が提示した1つの問いについて、生徒がそれぞれの捉え方を示したりする授業を行った。その結果、何度も解き直して答えにたどり着こうと頑張る生徒、自分が取り組むべき課題を自分で設定できる生徒、大学受験レベルの学力を獲得する生徒などが現れた。「生徒に任せる授業を通じて、生徒に学びの楽しさを味わってもらうことができた」と手応えを感じた齋藤先生は、26年度は授業改善のやりがいと楽しさを同僚に伝えていきたいと展望を語った。
柴田先生は自身が担当する化学の授業で、生徒がグループになって協働的に学習を進める「教師が教えない授業」を始めて3年目を迎えた。25年度に力を入れたことの1つが「生徒自身が自分の成長を感じられる仕組み作り」だ。従来のグループ学習に加えて、生徒同士が評価し合い、新たな自分に気づくことができる手法を取り入れた。授業で使用するプリントには、内容理解や家庭での学習時間など、学習内容に関する個人評価と、ほかの生徒への説明の仕方や話し合いの進め方、積極性など、学習内容に収まらない個人評価の両方を見取れる工夫が施され、さらに生徒間で成長を認め合う活動も取り入れた。そうした取り組みに対して生徒から「自分の長所に気づくことができた」といった肯定的な声が多く上がったことを踏まえ、柴田先生は生徒が自分の成長を感じられる授業を続けていきたいと語った。
それぞれの実践を振り返った3人のメンバーは「学びを生徒に預けても、これまでの授業で生徒に身につけさせてきたことが損なわれることはなく、主体的に学びに向かう姿勢を育むことは可能であると確信した」と、25年度の活動を総括した。
取り組んだテーマ「教師のやりがいを若手教師の言葉で発信」
(メンバー:北海道・市立札幌藻岩高校・對馬<つしま>光揮先生、北海道・私立旭川明成高校・佐藤卓也先生、栃木県立足利清風高校・田島<たじま>祥行<よしゆき>先生、東京都・私立多摩大学附属聖ヶ丘中学高校・出岡<いずおか>由宇<ゆう>先生、広島県・私立如水館<じょすいかん>中学高校・田栗和馬先生、福岡県立筑紫丘高校・徳永拓也先生)
〈取り組みの概要〉
勤務校の若手教師、さらには教職を志す大学生から寄せられた「問い」に対して、6人のメンバーがそれぞれの経験などを基に、自身の考えをウェブサイト『VIEW next ONLINE』内のコーナー「新世代toi-time」で発信する活動を25年度から開始。これまでに「『競争』の是非」「民間企業から教職へ」「『SNSトラブル』の対応」などのテーマで執筆し、発信した。オンラインミーティングでは、テーマの1つである「『課題に立ち向かえ』と言いづらい時代における忍耐力の育て方」を執筆した時の思いなどを各メンバーが振り返りながら、「新世代toi-time」での発信活動を通じた自身の気づきなどを語った。
出岡先生は「課題に立ち向かうことを生徒に願いながら、当の教師が立ち向かっていないといったことはあってはならない。勤務校では教員研修を通して、生徒に求めることは自分たち教師にも求められていることであるということを同僚たちにも伝えてきたが、そうした思いを『新世代toi-time』を通じて全国の先生方にも感じてもらいたいと思いながら執筆した」と語った。
徳永先生は「自分にも教師としてうまくいかない時期はあった。立ち向かいたくても立ち向かえないことは我々大人にもある。人生の苦しさも知っている教師だからこそ、生徒が自らの心に火を灯して、主体的に課題に向き合っていくような支援をしていきたいし、教師の自分が課題に向き合う姿も生徒にさらけだしていきたいと思いながら執筆した」と振り返った。
田栗先生は「課題に向き合っていないように見える生徒でも、その時の行動は、その生徒にとっては最善の選択かもしれないし、そもそも私たち教師には、生徒のすべてを理解しているわけではないということをわきまえる必要があると思いながら執筆した。1年後に同じテーマで自分の考えを書いたら、もしかすると今とは違う考えを書くかもしれないが、それも教師としての自分の成長なのだと思う」と、「新世代toi-time」の執筆を通して自身の変化に気づく喜びに言及した。
佐藤先生は「同じテーマで書いた、ほかのメンバーのコラムを読むことが、自分にとっては非常に勉強になった。教科学習に苦手意識を持っている生徒にはその課題にできるだけ立ち向かっていってほしいし、教師として支援していきたいが、人間関係などで苦労している生徒はそうした課題に無理に立ち向かう必要がない場合もある。面談などでの生徒との向き合い方といった、これまで自分が大切にしてきた軸となる部分を、『新世代toi-time』の執筆を通して言語化し、改めて確認できたように思う」と自身の気づきを語った。
田島先生は「自身が教師として学んできたことや経験してきたことを振り返る機会になった。そして、執筆を通して、教師として今の自分が最も大切にしたいことは生徒に自分の人生をデザインする力を育てることだと気がついた。最近は同僚と教育についてじっくりと語り合う時間を確保することが難しいが、『新世代toi-time』の執筆にあたってのヒントをもらうために私から同僚に話しかけることが増えている。同僚と話す中で、自分が魅力的な同僚に恵まれていたことに気づけたことも大きな収獲だった」と語った。
對馬先生は「大人は子どもに課題に立ち向かうことを求めがちだが、そもそも課題に立ち向かうという欲求は誰から生まれたものなのか、生徒の目線に立った時に何が最適な選択なのかを考えて支援できる教師でありたいと思いながら執筆した」と語り、「若手の同僚だけでなく、ベテランの同僚からも『「新世代toi-time」を楽しく読んでいる』とコメントをもらうことも多い」と周囲の反応を披露した。ほかのメンバーも、教職を目指す大学生や校内の同僚などから感想をもらったエピソードを紹介し、「新世代toi-time」が教育にかかわる様々な人たちをつなぐ役割を果たしていることを実感する時間となった。
学校の違いを超えてそれぞれの教育課題について語り合い、ともに向き合っていく「若手教師・教育創造MTG」。本コミュニティーのメンバーの姿は、“教師一人ひとりが持つ力は、ほかの教師と協働することでさらに大きくなり、より豊かに生徒に還元できる”ということを物語っているのではないだろうか。今後も「若手教師・教育創造MTG」の活動に注目するとともに、その内容をリポートしていく。

