- ウェブオリジナル記事
新世代toi-time 第13回テーマ「問いのつくり方」
問い「『問いのつくり方』についてアドバイスがほしい」
2026/05/25 09:00
L先生からの問い
生徒たちが自分で課題を設定する際の、「問いのつくり方」についてアドバイスをいただきたいです。
コラム執筆者

市立札幌藻岩高校
對馬光揮(つしま・こうき)
コラム末で、筆者が日々の授業実践や学びの記録を発信するウェブサイトを紹介しています。
L先生、前回に引き続き、示唆に富む「問い」をありがとうございます。前回のコラムでは、生徒が疑問にフタをしてしまう理由と、生徒のマインドセットを「問い」を生み出す方向へ変える取り組みについてお話ししました。
それでは、そうして生まれた「問い」を、どのように学びに実装していけばよいのか。このコラムでは、はじめに「問い」の基本的な性質をご紹介した後、「仮説の立て方」についてご説明したいと思います。
1.「問い」とは何か
そもそも、「問い」とは何なのでしょうか。これについては様々な整理がありますが、『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』(安斎勇樹・塩瀬隆之)では、「質問」「発問」「問い」の違いを「①問う側」「②問われる側」「③機能」の3点に分けて説明しています。
質問:①答えを知らない ②答えを知っている ③状況を引き出すためのトリガー
発問:①答えを知っている ②答えを知らない ③考えさせるためのトリガー
問い:①答えを知らない ②答えを知らない ③創造的対話を引き出すためのトリガー
問う側も問われる側も答えを知らない、創造的な対話を生み出すものが「問い」だとされています。そのように考えると、「問い」は思考を広げる力を持つ一方で、どこまでも拡散してしまう側面もあると言えます。
そこで、実際の授業において、こうした「問い」をどのように学びの前進へとつなげていけばよいのか、その具体的な手法として、「仮説の立て方」についてお示ししたいと思います。
2.「問い」から「仮説」へーー現象の背後にある構造に目を向ける
「問い」には広さと深さがあり、あまりに広く、あまりに深い「問い」は、生徒たちを迷子にさせてしまう可能性があります。そのため、「問い」によって思考の出発点を見つけた後、暫定的な答えとなる「仮説」を持つことが、生徒たちが自ら学びを進めやすくするための手立てとなるのです。
「仮説」とは、単なる思いつきではなく、「問い」の本質に迫り、具体的な行動へとつながるものです。例えば、「学校外での生徒の学習状況はどうなっているのか」という設問は、何を明らかにしたいのかは定まっていない聞き方です。
そこで「学校外での生徒の学習時間は減少しているのではないか」と「仮説」を立ててみます。しかし、何を明らかにしたいのかは定まりつつあるものの、それもまだ表面的であり、「なぜそうなっているのか」という原因には踏み込めていません。そこでさらに掘り下げ、「生徒は日々の宿題に追われているせいで、学校外で主体的に学習する時間を確保することができていないのではないか」としてみます。ここまで来れば、「よい仮説」と言えるのではないでしょうか。
つまり、「よい仮説」とは、現象の背後にある構造に目を向け、「なぜ」という問いに答えようとして生み出されるものであり、「だから何?」「それはなぜ?」と問い続ける思考が必要不可欠だと私は考えています。
したがって、生徒が「問い」から「仮説」を立てていく際、「そこから何が見えてきそうかな?」「それはなぜなのかな?」と教師が一言問い返すだけでも、生徒の思考は「問い」から「仮説」へと進み始めるので、声かけとして意識してみるとよいと思います。
3.「だから何?」で思考を広げる
「仮説を立てる力」は、日常的なトレーニングによって鍛えることができます。その代表的な手法が、先程お示しした「だから何?」と「それはなぜ?」を繰り返すことです。
まず1つめの「だから何?」についてですが、身の回りで起きている出来事に対して、「それはどんな意味を持つのか?」「どんな影響を与えるのか?」と問い続けてみます。例えば、「学校外での生徒の学習時間が減っている」という話を聞いた時、それを事実として単に受け止めるのではなく、「だから何なのか」と考えます。学力への影響だけではなく、学習習慣の変化、家庭環境との関係、授業のあり方への示唆など、さまざまな方向に思考が広がっていきます。
このように、一つの現象から複数の帰結を想像することによって思考は広がり、それとともに「仮説」の引き出しも増えていきます。正解を急ぐのではなく、「可能性を考え続ける姿勢」が重要です。
4.「それはなぜ?」で思考を深める
次に、2つめの「それはなぜ?」を繰り返すことによって原因を深掘りする手法についてご紹介します。「なぜ学校外での学習時間は減っているのか」という問いに対して、「やる気がないから」といった表面的な説明で終わらせずに、「なぜやる気が出ないのか」「なぜ家庭学習が定着しないのか」と問いを重ねていきます。そうすると、「宿題に追われて自分で学ぶ余裕がないのではないか」「学び方が分からないため主体的に取り組めていないのではないか」といった「仮説」に辿り着くかもしれません。さらに、「宿題中心の学習設計が、生徒の自律的な学びを妨げているのではないか」と掘り下げれば、構造的な問題が見えてきます。
ここまで到達すると、初めて具体的な手立てが浮かび上がります。例えば、「学校外で主体的に学習する時間を確保するために、宿題に依存しすぎない授業設計に転換する」「ICTを活用して授業内での理解を高め、家庭では自分の問いに向き合う時間をつくる」といったアクションが考えられます。
このように「なぜ」を繰り返すなかで「問い」が「仮説」になれば、単なる原因分析にとどまらず、「具体的な改善策」の創出にもつながりますし、「振り返り」においても非常に効果的です。
5.「問い」からの「仮説」が学びを変える
先程の具体例は教師側の「仮説の立て方」でしたが、生徒が「仮説」を立てる際にも、同様のプロセスを辿ることが有効です。「問い」だけでは思考が止まってしまう可能性があるため、「仮説」によって思考を進めることができるよう、生徒たちに声をかけてみるとよいと思います。
ただし、「だから何?」「それはなぜ?」という声かけをすると、関係性が構築できていなければ受け手が「自分の考えを否定された」と思う可能性もあります。したがって、この言葉は慎重に用いなければなりません。教師は生徒と正面から向き合い、まずは生徒の意見を肯定的に受け止めることから始めてください。テクニックは関係性を土台としたうえで用いる、ということを頭の片隅に置いていただけると幸いです。
「だから何?」で思考を広げ、「それはなぜ?」で思考を深める。この2つを日常的に繰り返すことによって、「問い」と「仮説」を立てる力は着実に鍛えられていきます。「問い」を持つことが学びの出発点であるとすれば、「仮説」を立てることは学びを前に進める力になります。この往復こそが、生徒の学びをより深く、主体的なものへと変えていくはずです。
オススメの本:『仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法』(内田和成)
對馬が授業実践や学びの記録を発信しているウェブサイト:マナブベイ

