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オンラインセミナー「新たな進路・キャリアデザインを考える~"なぜ学ぶのか?"のその先へ~」
苫野一徳先生が語る!学びの本質と探究の重要性
2025/08/19 16:03

2025年7月29日に開催しましたオンラインセミナー「新たな進路・キャリアデザインを考える~”なぜ学ぶのか?”のその先へ~」では、哲学者・教育学者の苫野一徳先生に、学びの動機づけをテーマにご講演いただきました。特に、「なぜ学ぶのか?」や「探究の意義」、「学びの本質」についての考え方は、現代の教育にとって非常に重要な示唆を含んでいます。本記事では、先生のお話の内容を一部ご紹介します。セミナーのアーカイブ視聴も可能ですので、ぜひ苫野先生の声もご確認ください。

苫野 一徳
哲学者・教育学者。熊本大学教育学部准教授。
学びの本質とその動機づけの根源
まず、苫野先生は「なぜ学ぶのか?」という問いに対して、「豊かさを得るため」と「自由に生きるため」という2つの視点を示しました。学びは、単なる知識の習得やテストの点数を上げるためだけのものではなく、自分の人生を豊かにし、自分らしく生きるための手段です。この考え方は、現代の教育においても重要な示唆を与えています。
また、苫野先生は、学びは「エロス(喜び)」であると表現しました。エロスは欲望や愛情、快楽を意味しますが、ここでは「学ぶこと自体の喜び」や「新しいことを知る快感」を指しています。知らなかったことを知ることで得られる喜びや自己成長の実感こそが、本来の学びの原動力です。
しかし、苫野先生は、現代の教育は偏差値向上や評価に偏りすぎて、学びのエロスが失われていると指摘します。知識を詰め込むだけの「死んだ知識」ではなく、自分の関心や問いから生まれる「生きた知識」を得ることが本当の学びだと強調します。学びは、内側から湧き出る好奇心や探究心を育むものでなければなりません。
探究心を育むための環境と仕組み
次に、苫野先生は子どもたちの探究心を引き出すためには、どのような環境や仕組みが必要かについて詳しく語りました。「探究心は自然に育つもの」としつつも、その土壌を整えることが教師や教育者の役割だと述べています。
最も重要なのは「魅力的なコンテンツ」の提供です。子どもたちが興味を持ち、自発的に取り組みたくなるテーマや課題を設定することが、動機づけの第一歩です。子どもたちの声や関心を尊重し、その声を反映させることが、学びへの意欲を高めるポイントです。
また、共同作業やコラボレーションも探究心を高める上で欠かせません。人は誰かと一緒に何かをすることで、実行していることへの関わりが深まり、意欲的に取り組むようになります。苫野先生は、「困った時に誰かの力を借りられる環境」や、「自分も誰かの役に立てると感じられる協働性」が、やる気を引き出すポイントだと述べています。
さらに、自己決定や選択の自由も重要です。子どもたちが自分でテーマや方法を選び、自分のペースで進められる環境を整えることが、探究心を持続させる秘訣です。教師がすべてを決めてしまうのではなく、子どもたちの意見や関心を尊重し、自分の学びをコントロールできるようにすることが大切です。
「投網漁法から一本釣り漁法へ」
探究の過程では、「投網漁法から一本釣り漁法へ」という表現をしました。最初に多くのテーマや興味に対して「網」を投げることで、自分の関心に引っかかるものを見つけ出し、その中に集中して深く入り込む方法です。例えば、好きな音楽や映画、歴史について幅広く触れることで、次第に興味の焦点が定まり、「これだ」と思えるテーマを絞り込めるようになります。
この方法の最大のメリットは、自分の興味や関心を自然に焦点化できる点です。深く入り込むと、まるで「一本釣り漁法」のように、特定のテーマについて理解を深めていくことができます。そうした過程を経て、「自分は何に興味があるのか」「何を深く知りたいのか」が明確になり、見える世界が一変します。
また、テーマに十分な時間をかけて取り組むことも大切です。短期間で多くのテーマに触れるだけでは、深い理解や気づきは得られません。長期的にじっくりとテーマに没頭することで、真の探究心が育まれます。教師や教育者は、そのための時間や環境を整える役割も担います。
さらに、実際の職人や研究者と触れ合う「本物の出会い」も重要です。そうした出会いは、「自分もできる」「こうなりたい」という具体的なイメージを持たせ、子どもたちの「相互触発」を促します。最後に、遊びの中に学びの要素がすべて詰まっていると苫野先生は述べています。夢中になって遊ぶことそれ自体が、学びの土台となるのです。
そのように、「投げ網漁法」と「一本釣り漁法」をバランスよく取り入れ、時間をかけて深く追究することが、探究心を育てる鍵です。教師や教育者は、子どもたちが自分の興味に没頭できる環境を整え、長期的に関わることが大切だと教えています。

