学校教育情報誌『VIEW next』『VIEW next』TOPへ

  • 学校教育関係者全体向け

学習指導要領改訂で深めてほしい視点:Teach Less, Learn More
関西国際大学 客員教授
神戸山手グローバル中学校高等学校 校長
平井 正朗

2025/08/25 12:30

『VIEW next』教育委員会版2023年Vol.2の特集「中学校英語 」、『VIEW next』高校版2021年8月号の「指導変革の軌跡」にご登場いただきました平井正朗先生に、学習指導要領の次期改訂において深めてほしい視点について、寄稿いただきました。

学習指導要領は、常に時代の変化を映し出しながら進化してきた。しかし、その背景には、教育の本質に立ち返るという有識者たちの真摯な議論があったことは、想像に難くない。今回の改訂にあたって、とりわけ重視してほしいのがTeach Less, Learn More(少なく教えて、多く学ぶ)という視点である。これは、単に指導内容を削減するという意味ではない。むしろ、学びの質を高め、生徒が主体的に学びへ向かう姿勢を育むための重要な考え方であり、教育観の転換点に他ならない。

グローバル化の進展はとどまることを知らず、英語教育の重要性はますます高まっている。日本の英語力は依然として国際水準には届いておらず、実用的な運用能力を育成する仕組みが求められている。生徒が英語を「学ぶ」のではなく、「使う」ことを日常に組み込み、言葉や文化を越えて他者とつながる力を養う環境を整備すること。それが真に国際社会で通用する人材を育てる礎になるのである。一方で、外国にルーツを持つ生徒の中退率が高いという現実も看過できない。日本語指導を必要とする児童生徒が急増しており、母語による指導や入試制度における合理的配慮の精査が急務である。誰一人取り残さない公平な学びの機会を保障するためには、支援体制の整備こそが喫緊の課題。その上で、時代が要請する教育のあり方として、探究教育の充実があげられる。「主体的・対話的で深い学び」という理念は、教育現場では繰り返し語られてきた。しかし、現実には教科書の分量が増加し、工夫を凝らしても、発展的な学びにまで手が回らないというジレンマがある。Teach Lessは、知識量の削減ではなく、本当に必要な問いに時間をかける「余白」を創り出すことなのである。とはいえ、学校間・教員間での温度差があるのも現実だ。そこで活用したいのが生成AI。使い方次第で毒にも薬にもなる。その意味で、教師は単なる知識伝達者ではなく、子どもたちが成長を実感できるような「ファシリテーター」としての力量が必須。人間だからこそできる、方向性の提示や、問いを深める対話。それが、AI時代における教師の真価である。

教員の負担は増大の一途をたどっている。授業時間の増加に加え、不登校の子どもたちへの対応、保護者との連携、教材研究……。一助となるのがカリキュラム・マネジメントである。その成否が地域の「知の拠点」として持続可能な教育実践を生み出す源となり、多様な学びの選択肢を可能にするはずだ。ひいては、高大接続のあり方を見直す契機にもなり得るだろう。自己調整による学び方とタイム・マネジメントが生徒個々の内発的動機づけをどう育てるかも焦点。知・徳・体のバランスのとれた未来を担う子供たちを育成する議論はこれからが本番である。

Benesse High School Online|ベネッセハイスクールオンライン

ベネッセ教育総合研究所

Copyright ©Benesse Corporation. All rights reserved.