第1回では、AI活用に解がないからこそ対話とコミュニティづくりが一層重要になりつつある現実について触れました。第2回となる今回は、そうした対話を促す起爆剤となりやすい「ガイドライン」のあり方について考えてみたいと思います。

一律なガイドライン設定の限界

アメリカでは教育政策の多くが州ごとに決まるため、AIへの対応も州や学区によって大きく異なります。全米約50州のうち、AIに関する何らかのガイダンスを示している州は33州にとどまり、学区レベルでも明確な方針がないところが多いのが現状です。

また、AIは“moving target(動く的)”のように急速に進化するため、今日作ったルールが明日には現実に合わなくなることも珍しくありません。さらに、教科や授業の内容によって適切な活用方法が大きく異なることを踏まえると、単一のルールで一律に統制すること自体にも難しさがあるようにも感じます。そこでアメリカの教育現場ではルール作り一つとっても様々な手法がとられています。以下にその一つをご紹介したいと思います。

生徒と一緒に「線引き」を考える

これはハーバード教育大学院のCenter for Digital Thriving(子どものテクノロジー活用についての研究機関)が考案した “Align on the Line”というAI活用の境界線を対話を通じて考える活動です。この活動では、まず特定の課題や授業場面を想定し、「AIをどのように使うことが考えられるか」を生徒たちにできるだけ多く出してもらいます。たとえば、アイデア出しに使う、英文を添削してもらう、構成を相談する、エッセイそのものを書かせる、といった具合です。

その上で、それぞれの使い方を “Totally Fine(まったく問題なし)” “Mostly OK(概ねOK)” “Not Really Sure(判断が難しい)” “Feels Sketchy(やや問題あり)” “Crosses a Line(完全にNG)” という5段階の線上に置いていきます。大切なのは、教師が最初から正解を示すのではなく、生徒自身が「なぜこれはよくて、なぜこれは問題があるのか」を考え、ペアやクラス全体で話し合う点です。最終的には、その課題におけるAI活用の共通ルールをクラスで確認し、必要に応じて記録しておきます。

この実践の興味深い点は、AI活用を単純に「禁止」か「許可」という二項対立で捉えていないところです。むしろ、AI利用には多くのグレーゾーンがあることを前提に、その都度、学習目標との関係から、どこまでが学びを支える活用で、どこからが学びを奪ってしまう活用なのかを考えさせる設計になっています。さらに、AI活用に関する各自の考え方を見える化できる点もこのツールの特長の一つでしょう。つまり、ルールを守らせるための活動というよりも、生徒自身がAIとの適切な距離感を考えるためのAIリテラシー教育の一つだと言えます。

ガイドラインづくりからAIリテラシー教育へ

教育現場におけるAI活用の是非については、往々にして立場や文脈、経験によって意見が分かれます。しかし、子供たちのAIリテラシーの必要性について異論を唱える人は少ないのではないでしょうか。仮にAIリテラシーを、「AIを使って何ができるのか、そしてどこまで使うべきなのかを判断できる力」と定義するのであれば、上述のような活動には、単なるルールづくり以上の意味があるように思えます。

もちろん、「ルールを作ったところで、生徒が守らなければ意味がないのではないか」あるいは「どうやってルールの順守を確認するのか」といった懸念もあるかとは思います。しかし性悪説的な発想でAI活用を捉えるのではなく、生徒がAIとの付き合い方を自分たちで考え、判断する力を育てる機会として生徒を巻き込みながら対話の機会を創出する。そのような視点が、これからの学校におけるAIの活用を考えていく上では求められているのではないでしょうか。

<参考リンク>
https://digitalthriving.gse.harvard.edu/wp-content/uploads/2026/01/Center-for-Digital-Thriving-Align-on-the-Line.pdf