- 学校教育関係者全体向け
【連載】楽しい学び合い 第7回
教科横断って何でしなきゃいけないの? どうやってやるの?~part2~
合同会社楽しい学校コンサルタントSecond
ベネッセ教育イノベーションセンター客員研究員 前田健志
2022/08/05 09:30
皆さん、こんにちは!
こんなに暑いと、ビアガーデンで皆で楽しく、「かんぱ~い!」したいですね♬(毎度、アルコールネタですみません(笑))
ところで……、
乾杯の挨拶って誰が適任ですか?
中締めは誰が適任ですか? 締め方ってどうするんですか? どんな種類があるんですか?
「宴もたけなわではございますが……」ってよく言いますが、「宴もたけなわ」って何ですか?
皆さん、初めて社会人になった時の飲み会で、上記のような「問い」を持ちませんでしたか?
僕自身、初めての飲み会の時は、何も知らず、めちゃくちゃキョロキョロして、ひたすら周りの人のまねをしてしのいだことを鮮明に覚えています(笑)。
実際に、アメリカから来たALTの先生たちは、日本の飲み会のルールの多さに戸惑うらしいです。
アメリカの飲み会(パーティー)にはほとんどルールが無いらしいので。
何でこの話をしたかというと、前回の連載で少し紹介した、○○県の公立高校の「誰もが楽しめる飲み会を創ろう」という6教科横断プログラムは、こうやって生まれたからです。
「飲み会」を題材に、上記のような「問い」をぶつけて、授業を創っていかれました♬
前回皆さんと、「そもそも教科ってどのように生まれてきたのか?」を考え、その時代・その国の人が生活していく中で、“興味・関心のある事”や“(社会)課題”がまずあり、それに対する「問い」や「視点・思考(見方・考え方)」が次々生まれ、それらが体系化されて「教科」が誕生したことを、”無人島“を題材に確認しました♪
何が題材だとしても、いろんな教科の「問い」や「見方・考え方」をぶつけることで、自然に教科が「つながる」!!
それでは、前回の宿題(笑)を改めて皆さんにお聞きしましょう……。
皆さんだったら「飲み会」を題材に、どんな楽しい学びを設計しますか?
どんな「問い」をぶつけますか?
実際に読者の方から、私だったらこういう「問い」をぶつけて授業を展開するという回答をいただいたので、ご紹介しますね♪(ありがとうございます! うれしすぎて泣きました(笑))
「会の最初から最後までお酒を楽しく飲み続けられるようにするには、どうすればいいか?」が私の課題です(笑)。なので、“アルコールの分解と吸収”について理科的な視点で考え、そしてどのような食べものをチョイスしていくと“悪酔い”しにくくなるのかを家庭科的な視点で考えて、実際に調理し、実践し(高校生には無理ですが(笑))、提案していく授業を創りたいです」
素晴らしい教科横断のご提案、ありがとうございます!
むちゃくちゃお酒がお好きなのが伝わってきますね(笑)。
他の皆さんのアイデアも聞きたいのですが、今は聞けないので、先ほど登場した○○県の公立高校の「誰もが楽しめる飲み会を創ろう」という6教科横断プログラムを少しご紹介したいと思います。
①英語:外国人(ALT)も職場にいる中で、全員がパーティーを楽しむには?
⇒日本の飲み会と海外のパーティーの違いとは?(異文化理解)
②国語:「宴もたけなわって何? どういう意味? なぜ、こんな言葉が生まれたの?」
⇒「史記」の記述から「宴もたけなわ」の意味を考えよう(漢文)
③社会:なぜ、宴(パーティー)にお酒が必要なのか?
⇒人類と酒の歴史(世界史・日本史)
④保健:お酒は脳にどのような影響を与えるのか? 酔うとはどういうことなのか?
理科 お酒に強い人、弱い人ってどうやって分かるのか?
⇒人体の構造(生物・保健)
⇒アルコール分解(化学)
⑤数学:誰もが楽しめる価格設定って?
⇒事前アンケート(データ)から、理想の価格設定を算出する(統計)
僕自身、実際に授業を参観させていただいたんですけど、むちゃくちゃ面白かったです♡
先生たちも、皆、生き生きしており、参観していた校長先生も我慢できずに、途中から授業に混ざってこられました(笑)。
大人は楽しく学べていたのですが、肝心の子どもたちはどうだったんでしょう?
この教科横断の授業で、子どもたちは何を学んだのでしょう?
そもそも、この学校では、なぜ、教科横断プログラムを実施することになったのでしょう?
実際の子どもたちの授業のリフレクションが、これらの「問い」の答えを示してくれています。
「何のために勉強しているのか今まで分からなかったけど、今日で分かった気がする。だから学校には、いろんな教科があるのかな?」
「自分の学びへの意識が変わった。いろんな問いをぶつけるだけで、こんなに楽しく学べるなんて。自分の意識次第で、楽しくない授業も楽しい学びに変えられると思いました」
「いろんな角度から物事を見ると、こんなに面白いのかと思いました。明日からのいろんな授業が楽しみになった」
紙幅の関係上、少ししか紹介できませんでしたが、多くの子どもたちが「学び方を学んだ」と言えるような記述でした。
「学び方を学んだ」生徒たちは、どんな授業でも自分で問いをぶつけたり、いろんなつながりを見いだしたりして、楽しく学べるようになります。
ということは……。
そうなんです。
教科横断プログラムって、1回実践するだけでも効果があるんです。
大変な準備をして、何回もする必要がない。
子どもたちが、「いろんなものがつながっている」「『問い』をぶつければ学びになる」ことを実感できていれば、日常的に受ける授業は教科ごとでも、子どもたちが頭の中で各教科で学んだことに問いをぶつけながら、つないでいきますから♪
「でも、1回するだけでも大変だよ~」
そんな声も聞こえてきそうです……。
安心してください! 他にもいい方法がありますよ!
別に大々的な教科横断プログラムを創らなくても、「いろんなものがつながっている」「問いをぶつければ学びになる」ことを子どもたちが実感できればよいのですから、方法はいくらでもあります♪
実際に行われている例を挙げると……。
①「教科書を『本当か?』って疑ってみよう」
⇒教科書の記述で、自分が「本当か?」って思う部分をチョイスし、検証してみる。これを全教科で実践(批判的思考力<吟味する力>を全教科で養う<資質・能力の教科横断>)
➁「今出てきた疑問を○○科の■■先生に聞いてみよう!」
⇒自分の教科で出てきた分からないこと(他教科の見方・考え方にかかわる問い)を、他教科の先生(専門の先生)に聞いてみる(パス出し教科横断)
読者の皆さんも、➁は実践されたことがある方も多いのではないでしょうか?
「教科の学びはつながっている」「『問い』がつないでくれる」
これさえ意識していれば、簡単に実践可能です♬
今日、紹介できなかったいろんな教科横断の実践事例は、下記のHPの中にも掲載されていますので、ぜひご覧ください~。
また、これからも読者の皆さんと“つながって”いきたいので、「問い(リクエスト)」をお待ちしております~💛
↓リクエスト(問い合わせ)先↓