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  • 【誌面連動】『VIEW next』教育委員会版 2022年度 Vol.2

<教委がつなぐ地域と学校>
地域の指導者が担う「部活動コミュニティクラブ」で、教員の負担軽減と生徒の技術向上を実現
~富山県下新川郡 朝日町教育委員会

2022/09/08 09:30

朝日町教育委員会は、持続可能な部活動の実現と、教員の負担軽減を目的として、2021年4月、「朝日町型部活動コミュニティクラブ」を設立。同町立朝日中学校の7つの運動部と吹奏楽部で、平日の1〜2日と、休日の1日の活動を同クラブに移行しました(本誌P.34に掲載)。
本記事では、その取り組み内容を詳しくご紹介します。

▼本誌記事はこちらをご覧ください(↓)

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朝日町概要

人口:約1 万1,000 人/面積:226.30㎢/公立学校数:小学校2校、中学校1校/
児童生徒数:小学校364 人、中学校220 人/教員数:小学校37人、中学校23 人/
部活動コミュニティクラブ実行委員会事務局:2人

お話を伺った方

朝日町教育委員会 
事務局長代理 スポーツ係長
若林仁美(わかばやし・ひとみ)

1 部活動顧問教員と地域クラブ指導者が、毎月の会合やオンライン会議ツールで連携

朝日立朝日中学校では、以前から退職教員や競技協会員などがボランティアで部活動の指導をサポートしてきたが、高齢化が進んでいた。また、部活動顧問教員の多忙化といった課題も顕在化していたため、朝日町教育委員会(以下、町教委)では、スポーツ庁の「地域運動部活動推進事業」を活用した、地域連携型のコミュニティクラブの設置を構想。2020年7月、「地域と連携した部活動の在り方検討委員会」を立ち上げて、関係機関との調整や、指導者の確保などを進めた。同年度末には保護者への説明会を行った上で、2021年4月に「朝日町型部活動コミュニティクラブ」(以下、地域クラブ)を設立した。
地域クラブの運営方針は、体育協会や各競技団体の代表者などから成る総勢26人の実行委員会(図1)が決める。その事務局は町教委のスポーツ係の2人が担当し、実行委員会を年2〜3回開催。加えて、中学校の部活動顧問教員・地域クラブ指導者・町教委が、月1回程度の連携会議や、オンライン会議ツールなどを利用して連携を図る。両者が顔を合わせる場を定期的に設けることで、生徒の安全を確保し、体系立てて指導することが可能となっている。

▼図1 実行委員会の構成メンバー

※朝日町教育委員会の提供資料を基に編集部で作成。

2022年度は、年度当初に実行委員会で運営方針や年間スケジュール(図2)について話し合い、夏季休業前などに、部活動顧問教員と地域クラブ指導者が再度、指導方針を確認する全体調整会議を設けた。さらに、半年に1回、生徒・保護者・教員・地域クラブ指導者にアンケート調査を行い、定量的な現状把握にも努めている。

▼図2 地域クラブの年間スケジュール(2022年度)

※朝日町教育委員会の提供資料を基に編集部で作成。

2 地域クラブ指導者には、「活動運営方針」で指導方針を提示

地域クラブ指導者は、体育協会や各競技団体と連携して確保している(図3)。人選に際しては、競技実績に加え、教育的な視点で指導にあたれることを重視。
「生徒の健全育成及び体力向上、競技力の向上を目指すとともに、スポーツ・文化活動を通して、生徒の人間性を育むことをねらいとする。勝利至上主義的な指導に陥らないよう注意する」
など、指導者に遵守してほしい事項は「活動運営方針」に明記し、町教委から地域クラブ指導者に伝えている。さらに2022年度は、夏季休業中に指導者研修を実施する予定だ。
また、部活動顧問教員が希望した場合には、兼職兼業の許可を受けた上で、地域クラブでも指導できるようにした。2022年度は、ソフトテニス部と吹奏楽部の顧問教員が兼職兼業制度を利用し、地域クラブの日も指導している。

▼図3 地域クラブの指導者(17人)

※朝日町教育委員会の提供資料を基に編集部で作成。

地域クラブ指導者への謝金は、運動部の場合、平日のみで月額4,000円、平日・休日で月額6,000円を各競技協会に振り込む形だ(図4)。スポーツ係の若林仁美係長は、予算面について次のように述べる。
「現在の活動費用は、保険代も含めて、すべて教育委員会が負担しています。今後、地域クラブを継続して運営していくための予算の確保は、重要な検討課題です」

▼図4 地域クラブの活動費用

※朝日町教育委員会の提供資料を基に編集部で作成。

3 地域クラブの活動は、中学校に隣接する公共施設を利用

地域クラブの活動は、中学校の施設ではなく、中学校に隣接する文化体育センターや武道館、テニスコートといった町営の公共施設で行う(図5)。学校施設を使わないことで、教員が放課後や休日に学校施設の鍵や道具の管理をしなくて済むようにした。部活動で利用する際の施設使用料は無料としており、生徒は移動時間や費用の心配なく、地域クラブに参加できている。
ボールなどの備品に関しては、部活動ごとに運用を任せており、公共施設にある備品を使用する部活動もあれば、生徒が持ち込む部活動もある。活動拠点が中学校と公共施設の2か所になるため、備品を買い足した部活動など、各部活動の状況に合わせた対応をしている。

▼図5 地域クラブの主な活動場所

 

※朝日町教育委員会の提供資料を基に編集部で作成。

4 部活動のうち、平日の2割、休日の5割を地域クラブへ移行

現在、地域クラブで活動を行っている運動部は、卓球・バスケットボール・バレーボール・陸上競技・柔道・剣道・ソフトテニス部の7つだ。部活動の顧問教員が競技経験者のバドミントン部と、部員不足で現在休部中の野球部を除いた部が、週5~6日の部活動うち、2〜3日を地域クラブに移行した形となっている。
「野球部は2023年度に部員が増えて活動を再開する予定ですし、バドミントン部も今の顧問教員が異動した場合を考慮して、地域クラブ指導者を確保するように動いています」(若林係長)
文化部も、現在は吹奏楽部のみだが、今後は、残りの美術部と情報部の移行を検討中だ。

地域クラブの活動は、「平日2日以内、休日1日」とし、活動時間は「平日2時間程度、休日3時間程度」とした。2021年度は、部活動のうち地域クラブで活動した割合は、平日22.5%、休日50.6%となった(図6)。
「現段階で、地域クラブに全日移行することは考えていません。学校部活動の教育的価値も踏まえると、部活動と地域クラブでの活動時間のバランスは、おおむね取れていると感じています。まずは、すべての部が地域クラブでも実施できる体制を築いていきます」(若林係長)

▼図6 地域クラブでの活動日数(2021年5月〜22年1月)

※朝日町教育委員会の提供資料を基に編集部で作成。

5 体力や技術の向上を感じている生徒たち

2022年2月に実施した「第2回アンケート調査」の結果(図7)では、生徒・地域クラブ指導者の約8割、保護者の9割以上、教員は全員が、「地域クラブへの移行」について肯定的だった。

▼図7 第2回アンケート調査結果「移行への肯定度」

※朝日町教育委員会の提供資料を基に編集部で作成。

また、約9割の生徒が、地域クラブになったことで体力・技術が向上していると感じていた(図8)。
技術的な向上は実績にも表れており、2021年度の吹奏楽部は、北陸吹奏楽コンクールに初出場を果たし、日本クラシック音楽コンクール中学の部(個人)では最高賞を受賞した。

▼図8 第2回アンケート調査結果「体力・技術面」

※朝日町教育委員会の提供資料を基に編集部で作成。

「運動部も文化部も専門的な指導が充実したことで、生徒がより意欲的に活動できるようになっています。また、教員の約8割が、時間外勤務が減ったと実感している点も大きな成果です。何よりも大事なのは、町全体で子どもの成長を支えているということです。これからは、その体制を一層強化するために、地域の多様な機関や住民と協働しながら尽力していきたいと考えています」(若林係長)

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