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これからの学校を担う! 若手教師・教育創造MTG メンバー企画 オンライン勉強会 第3弾
「教師がイキイキ・ワクワク語る会」
〜わたしたちはどのように生き、どこへ向かいたいのか~

2023/04/25 14:30

『VIEW next』高校版編集部が、2020年4月から、次代を担う全国の若手教師のオンライン対話の場として開催してきた「若手教師・教育創造MTG」。同MTGメンバーによる対話を通じた学びの企画の第3弾として、23年3月に、「教師がイキイキ・ワクワク語る会〜わたしたちはどのように生き、どこへ向かいたいのか」をテーマとしたオンライン勉強会を実施した。企画者である埼玉県立朝霞高校の浅見和寿先生と、ゲスト発表者が自身の経験を振り返りながら、参加者とともに、それぞれが踏み出すべき一歩を考える場となった。

開催概要

日時:2023年3月28日(火)13時00分〜15時00分
形式:オンライン(ライブ形式)

体験談スピーカープロフィール(2023年3月時点)

埼玉県立朝霞高校 浅見和寿
◎教職歴12年。教務主任。国語科。大東文化大学非常勤講師。「学事出版教育文化賞」優秀賞等受賞。著書に、『漢文の知識ゼロでも、桃太郎のマンガで共通テストまでの力がしっかり身につく』(旺文社)、『ゼロから始めてここまでできる!公立高校でのICT教育実践 プロジェクターや動画を活用した授業』(翔泳社)など。ICT機器を活用した授業方法、教師の働き方などの研究に取り組む。本勉強会の企画者。

京都府・私立立命館宇治中学・高校 酒井淳平
教職歴24年。キャリア教育部長。研究主任。数学科。著書に、『高等学校 新学習指導要領 数学の授業づくり』(明治図書)、『探究的な学びデザイン 高等学校 総合的な探究の時間から教科横断まで』(明治図書)など。同校が文部科学省の研究開発学校とWWLの指定を受けた際に、探究のカリキュラム作りに中心となって取り組み、現在もキャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中。

プログラム紹介

趣旨説明

答えが人によって異なる「教師ゆえの問い」にみんなで向き合いたい

最初に、本勉強会の企画者である浅見和寿先生が企画趣旨を説明。今回、オンライン勉強会を企画するきっかけとなった、最近、浅見先生自身が校内外の様々な同僚・若手教師から質問・相談されたことを紹介した。例えば、「浅見先生は、何を目指して教師をやっているのか?」、「給与は変わらないのに、来た仕事は断らず、それどころか自ら仕事を取ってくるのはなぜ?」、「教師としての自分が周りにどう評価されているか、気にならないのか?」「育児休業を取得することは、本当にキャリア面で不利に働かないのか?」など……。それらのどの質問や相談にも自分なりの答えはあるものの、誰もが納得する正解はすぐには出せないものばかりだと、浅見先生は気がついた。そして、誰かにとっての答えが、必ずしも自分にとっての答えになるとは限らない疑問や不安こそ、同じ教師が集まり、打ち明け合い、話し合う価値があるのではないかと考え、今回のオンライン勉強会を企画したことを説明した。

体験談(話題提供)① 埼玉県立朝霞高校 浅見和寿

どのような未来になろうとも、変わらない人生の軸がある

まず、浅見先生の仕事への向き合い方が語られた。浅見先生はこれまで、周囲から依頼された仕事は原則引き受けるようにしてきた。仕事を依頼されるということは、周りが、「浅見先生なら、その仕事はできるはずだ」と思ってくれているからであり、その機会を生かすことで、自分の成長につながると、浅見先生は考えている。特に、それまでに経験したことがない仕事や、やってみたいと思った仕事は、率先して引き受けるようにしているという。
現在も、メディアへの出演や執筆、学校の枠を超えた学びのプロジェクト、そして企業との協働など、様々な仕事に挑戦しているが、今後のキャリアにおいても、多くの選択肢があると感じている。大学教員への転身や民間企業への転職、YouTuberなどのインフルエンサーになることも夢物語ではない。もちろん、高校教師を続け、学校や地域の発展に尽くす道もある。
一方、家族との生活のあり方によっても、仕事への向き合い方が予想外に変わる可能性があることも自覚している。実際、これまでも結婚、育児といったライフステージの変化に伴い、仕事観は変化してきたが、今後も親の介護などによって、働き方を変えざるを得ない状況を迎えるかもしれない。
未来には多彩な選択肢があること、そして、自分の力だけでは対応できない事態も起こりうることを理解しながら、「今後、教育という軸から離れることだけはない」と考える浅見先生。「教育」という仕事にかかわれる幸せと、家族とともにある幸せを大切にしながら生きていくためにも、自分の弱さを認めてくれる仲間を今後も増やしていきたいと語った。

体験談(話題提供)② 立命館宇治中学・高校 酒井淳平

「役割」を模索する中で、教師として成長を続ける

自身の生き方・あり方を考えたり、進路選択に臨んだりする生徒を支援するキャリア教育部に所属する酒井先生は、「これまで、自分のキャリアには様々な転機があったが、今も悩んでいる」と明かす。20代は、部活動の指導に全力を注いだ。先輩の教師にも恵まれ、クラス経営に苦労しながらも、担任のやりがいを味わい、「このまま生涯担任として生徒に向き合っていこう」と考えるようになった。
だが、その後、転勤と同時に立命館宇治中・高で新しく立ち上がったキャリア教育部の部長に就任。他の教師とも向き合いながら、分掌としての方針をまとめていく役割を担うようになる。以前の職場と違う学校の文化に時に戸惑いながらも、それまでとは違う視点で学校を見られるようになっていることを自覚したという。30代になると、他校の教師との交流が増え、教師としての世界が一気に広がった。そうした中で、酒井先生は、ライフロール(=人生の様々なステージで担う社会的な役割)の変化を実感し、教師として求められる役割も、決して1つに固定されるものではないと気づいたという。
40代となった今は、スタンフォード大学のクランボルツ教授らが提案したキャリア理論である「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」に共感する。つまり、キャリアの大半は、予想できない偶発的な出来事の積み重ねによって広がっていく。だがそれは、人生が不可抗力的な偶然に支配されていることを意味するものではない。好奇心や柔軟性、冒険心といった行動特性を持ち、さらに人との出会いを大切にすることで、偶然をチャンスに変えることができる。WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)拠点校としての探究学習のカリキュラム開発など、新たな環境変化に直面しながら、「今の自分の役割」を考え続けている酒井先生は、これからもよき師、よき仲間、よき友との出会いを大切にしながら、「先の見えない方を選ぶ人生」を歩み、成長していきたいと語った。

グループトーク

教師としての不安や悩み、喜びを共有

浅見先生と酒井先生からの話題提供の後、参加者は4人程度のグループに分かれて、2人の教師の話を聞いて感じたことや、自分が抱えている悩みや課題などについて語り合った。
「浅見先生が未知の仕事にはワクワクすると語っていたが、それは自分も同じ。積み重ねてきた経験を次につなげていくためにも、もっと人とつながり、視野を広げていきたい」
「酒井先生が教師になって3年目に壁にぶつかったと話していた。教師1年目の今は、この先、自分は何ができるのかも、どんな壁にぶつかるのかも分かっていない。ただ、3年目の壁を乗り越えたらどんな景色が見えるのかが楽しみになってきた」
「実は自分は、教師という仕事が向いていないのではないかと思うことがある。生徒たちに向き合うのは楽しいし、やりがいもあるけれど、向いていないのではないか……。そんな漠然とした不安を、初めて会った先生方に、利害関係がないからこそ話すことができた」
「学校の中では、『なぜ、もっと思うようにうまくいかないのか』と、マイナス思考の内省になってしまっていたが、学校外の人とつながり、自分の知らない世界を知ることで、仕事で悩んでいるのは自分だけではないことが分かり、できていることにも目を向けようと思えた。外の世界とつながることで、思った以上に救われた」

おわりに

語り合う仲間とともに成長を続ける

グループトークの後に、酒井先生と浅見先生から参加者にメッセージが送られた。酒井先生は、「オンラインか対面かを問わず、教師が日々感じている悩みや不安、そして喜びを語り合える場は、教師としての成長を促すために必要。先生方には、自校だけにとどまらず、語り合える仲間を見つけてほしい」と語った。浅見先生は、「語り合う仲間は、同じ学校の身近な同僚でなくても、他校の先生でもよい。同じ学校の先生だから話しにくいのであれば、思い切って外に出て行くことも必要だ」と、酒井先生に共感した上で、「大切なのは、どこにいる人かではなく、真剣に走っている人かどうか。真剣に走っている人は、身についているものが多い。真剣に走っている人から学び、自分のキャリアを考えていきたい」と、自身の思いを語った。
オンライン勉強会に参加した教師からは、次のような感想が寄せられた。
「外部に仲間がいることは、本当に心強いと感じた」
「初めて会った人だからこそ、腹を割って話せる」
「こういう対話の場があると若手はきっとうれしいと思う」
「先生方の本音を聞くことで、共感や新たな気づきを得ることができた」
「人との出会いから、自分の仕事の幅が広がったり、ほかの教師との相互理解が進んだりすることを改めて感じた」
オンラインで初めて会う教師たちが、それぞれの悩みや不安を受け止め、喜びを共感し合った今回の勉強会。浅見先生と酒井先生の2人が真剣に走り、そして真剣に悩んできた姿をさらけ出したからこそ、参加者の中に、互いの人生に学び合おうという気持ちが生まれたのだろう。

オンライン勉強会第1弾、第2弾リポート記事のご紹介

オンライン勉強会第1弾「目指せ、アクティブティーチャー! ともに一歩を踏み出そう!」の記事はこちら

オンライン勉強会第2弾「実践を聞き、語り、深め合う! マイ・ベスト・グループワーク」の記事はこちら

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