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【VIEW n-express REPORT】
これからの学校を担う!若手教師・教育創造MTGメンバー企画 オンライン勉強会 第1弾
「目指せ、アクティブティーチャー! ともに一歩を踏み出そう!」

2022/02/09 09:00

『VIEW next』高校版編集部が、2020年4月から、次代を担う全国の若手教師の対話の場として開催してきた「若手教師・教育創造MTG」。対話を通した学びの場を全国に広げる同MTGメンバー発の企画の第1弾として、21年12月にオンライン勉強会を実施した。テーマは、主体的に学び続ける教師として、自らの課題を直視し、乗り越えていくための「一歩の踏み出し方」。基調講演として若手教師の2人が自身の経験を伝えた上で、参加者同士による対話が行われ、各自が踏み出すべき一歩を考えた。

開催概要

日時 2021年12月27日(月)13時00分~15時00分
形式 オンライン(ライブ配信)
プログラム
①趣旨説明
②基調講演 一歩目を踏み出した2人の若手教師の経験
③グループトーク 基調講演を受けて、過去の経験や今後の一歩などについて、参加者同士で対話
④個人ワーク 一歩を踏み出すためのアクションプランの作成と共有

基調講演講師
埼玉県立朝霞高校 教諭 浅見和寿
<プロフィール>
公立高校に11年間勤務。国語科。元・東京成徳大学非常勤講師。「学事出版教育文化賞」優秀賞等受賞。著書に『ゼロから始めてここまでできる!公立高校でのICT教育実践 プロジェクターや動画を活用した授業』。ICT機器を活用した授業方法、教師の働き方などの研究に取り組む。本勉強会の企画者。

長崎県・私立純心中学校・純心女子高校 教諭 森 俊雄
<プロフィール>
現任校に14年間勤務。数学科。1学年主任。進路指導部に長く籍を置き、探究学習やキャリア教育などの分野で、自校における新しい学びの開拓に携わる。『VIEW21』高校版2019年10月号特集P.4〜7で、探究学習に取り組む生徒に対する森先生の支援のあり方を紹介。

1.趣旨説明

若手教師の新たな一歩を阻む障壁を、「体験」を共有して乗り越えたい!

まず、本勉強会の企画者である浅見和寿先生が、企画趣旨の説明を行った。浅見先生は、新しい取り組みを始めようとする若手教師の前に立ちはだかる障壁として、「①前例踏襲から抜け出すための負担増」「②誰も取り組んだことがないことを始める際の不安感」「③担当教科の授業ではないなど、あえて自分がやらなければいけない必然性のなさ」の3点を挙げ、自身の経験などを交えて、各障壁の具体的な状況を解説。そうした障壁を乗り越え、若手教師が「生徒や学校にとってよいこと」を実行するための一歩を踏み出すためには、実際に一歩を踏み出したことのある経験を持つ教師から、学校や教科の枠を超えて、成功・失敗体験を学ぶことが必要だと考えたと、今回の勉強会開催に至った思いを語った。

2.基調講演① 浅見先生のエピソード

一歩を踏み出すことで、一緒にチャレンジを楽しむ仲間ができた!

浅見先生は、自身が一歩を踏み出した経験として、埼玉県教育委員会が東京大学CoREF(※1)と連携して進める、知識構成型ジグソー法(※2)を取り入れた授業改善のエピソードを話した。
当時、浅見先生は、教職歴が3年ほどと浅く、「新しい授業法を研修で学びながら、それを自身の授業で実践してみないか」と管理職に声をかけられた時も、「先輩教師も知らないような新しい授業法に、自分がチャレンジしてうまくいくのか」「今までの授業法のままでも十分効果があるのではないか」と躊躇したという。だが、小・中・高の経験を踏まえ「迷った時は厳しい方を選択する」という自身を鼓舞する言葉に背中を押され、授業改善のための学びと実践の一歩を踏み出すことにした。
当初は、不安でいっぱいだったが、覚悟を決めて授業を続けるうちに、生徒から「浅見先生の授業は普通じゃない」「考えて対話する時間がいっぱい」といった声が上がり、それが校内の教師にも伝わったことで、浅見先生の取り組みに興味を示す同僚が現れ始めた。次第に、職員室で授業改善の話をする仲間が増え、数年後には、学校ぐるみで公開授業を行うほどの広がりとなった。その経験から、浅見先生は、「人は皆、楽しいことに参加したいのだ」「皆、何かをしたがっている」といった気づきを得るに至り、「一歩を踏み出す」ことの大切さを学んだと話した。

※1 https://coref.u-tokyo.ac.jp/about
※2 https://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515

3.基調講演② 森先生のエピソード

一歩を踏み出すことで見えてきた「教師としての自分軸」

森先生が語った、一歩を踏み出した経験は、21年度に始めた、学年主任を務める1学年団で年間を通して取り組んでいる、生徒同士の対話の場づくり、「ワールドカフェ」の実践だ。
森先生はこれまで、勤務校の先輩教師とともに、キャリア教育や探究学習の実践に取り組んできた。日々の指導の中で気になったことがあれば、その都度、先輩教師に質問し、フィードバックをもらうなど、学び続けていたという。だが、先輩とのやりとりの中で、自分自身の指導にブレがあること、そして、先輩が追究する本質から自分がずれてしまうことがあることを自覚するに至り、「自分には、そもそも教師としての『自分軸』があるのだろうか」と自問するようになったという。
「教師としての自分軸とは何か?」を自分に問いながら、森先生は、先輩教師からの学びに加えて、校内外の研修会に積極的に参加するようになった。その中で出合ったのが、リラックスした雰囲気の中で、答えが1つではないテーマについて対話を重ねていく「ワールドカフェ」という手法だった。そして、学年主任となった21年度、すべての生徒が「学校に来たいと思える学年にしたい」という願いを実現する具体的な方法として、3年間を通して「ワールドカフェを軸にしたキャリア教育」に取り組むことを決意。学年団の理解を得ながら、既に3回、学年での対話の場を開催しているが、森先生は、生徒たちが、安心して自分を語れる場で、少しずつ対話の姿勢を身につけ、自分自身の成長につなげようとしていると、その手応えを話す。「教師としての自分軸は、生徒が自ら成⾧したいと思える環境を整えることではないかと、今は思っている。ただそれも、今後自分が成⾧する中で変わっていくかもしれない」と、一歩を踏み出した成果を語った。

4.グループトーク

他者を巻き込みながら歩き続けるために、何をすべきか

基調講演の後、参加者は、オンライン会議システム上で4人程度のグループに分かれて、講師の話を聞いて感じたことや自身が抱えている課題などについて語り合った。多くの参加者が語ったのが、一歩を踏み出すこと以上に、踏み出した歩みにほかの教師を巻き込み、歩みを続けていくことの難しさだった。ある参加者は、「学校の状況を見ると、自分も何かアクションを起こさなければいけないと、強く思う。だが、これまでは、自分1人でやればよいという考えで、他者を巻き込むという発想がなかった」と打ち明けた。
どのグループでも、「先輩教師や同僚を巻き込めていない」と、一歩を踏み出した後の自身の課題を認める声が上がり、その原因は、高校教師の教科の専門性の高さにあるのではないかという指摘に、参加者は共感を示した。教科の専門性が高い高校教師同士が、今以上に横の広がりを持つためには、どのような取り組みが考えられるのか、各グループで様々な意見が出された。「教師が協働してできあがったものの素晴らしさを、協働した者だけで共有するのではなく、もっと多くの同僚に紹介することで、横に広げることの意義を伝えられるのではないか」「校内の研修チームが、横のつながりをつくることを意識した研修を企画した方がよい」「一気につながろう、巻き込もうとするのではなく、日々の中で、ほんの一言、二言でも、教科を超えて対話することを意識し続けることが大切」といった、自身の課題と結びつけた解決策のヒントが参加者から上がった。

5.個人ワーク

現状を理想に近づけるためのスモールステップを考える

グループでの対話を踏まえて、参加者が踏み出したい一歩についての具体的な内容を、各自のPC上でワークシートに入力した。ワークシートは、①現状(今の課題) ②理想(本当はこうなりたい) ③理想の状態になることで期待できる効果 ④現状と理想の間にある内的・外的障壁(乗り越えるべき壁)の4つの項目で、現状確認と目標を整理し、「踏み出すべき最初の一歩」、そして「次の一歩」と、スモールステップのアクションプランを定めていくというものだ。多くの教師が、「教科連携」「ICT活用」といった、教科の枠を超えたテーマで、それぞれが踏み出したいスモールステップを考えていった。

※ワークシートはこちらからダウンロードできます

6.おわりに

同志は必ずいる! 仲間を巻き込みながら、それぞれの一歩を。

オンライン勉強会の様子(一部参加者で写真撮影)

最後に、企画者の浅見先生が、「新しい一歩を踏み出した時、自分1人だけで歩いていると感じる孤独期が、一番つらいと思う。仲間がいれば、そのつらさは緩和され、それどころか、つらさよりも楽しさが大きくなる。本日のオンライン勉強会に参加した1人でも多くの先生方が、これをきっかけにして、仲間と一緒にそれぞれの一歩を踏み出してくださったら、今回の企画を立案した者として、この上ない喜びだ」と語り、オンライン勉強会は終了した。
終了後、参加者からは、「自分と同じような悩みを抱えている先生がいて安心したし、向上心のある先生方と接することができて、自分も自身を少し高められたように感じる」「初任の私から見れば、すごいことを実践している先生方が、実はたくさんの葛藤の中でそのことを成し遂げていることが分かり、自分も頑張りたいという気持ちになった」「若手の仲間と一緒にチームを作って、学校を盛り上げていこうと思う。そのためにも、まずは自分が魅力的な授業を研究し、生徒や同僚に波及させていきたい」といった、それぞれの一歩を予感させる感想が寄せられた。

「若手教師・教育創造MTG」のメンバー発の企画の魅力は、現場の若手教師の課題感や展望、成長欲求に根ざした企画であることだ。次回、第2弾となるオンライン勉強会でも、「グループワーク」をテーマに、現場のリアルな課題を踏まえた未来志向の対話が繰り広げられることだろう。

若手教師・教育創造MTG企画 オンライン勉強会 第2弾のお知らせ
「実践を聞き、語り、深め合う! マイベストグループワーク」

企画者:山口県立山口高校 教諭 石田純一(若手教師・教育創造MTGメンバー)
日時:2022年3月26日(土)13時00分~15時00分
形式:オンライン(ライブ配信)※お申し込みいただいた方に、詳しい参加方法をご案内します。
参加申し込み方法:
https://enquete.benesse.ne.jp/forms/o/we65f5fef6/form.php
参加申し込み締め切り:2022年3月21日(月)
参加費:無料

ゲスト講師
・静岡県立小山高校 美那川雄一
・大分県立大分舞鶴高校 佐藤秀信

主なプログラム
①基調講演 「マイグループワーク紹介」
②グループリフレクション 「こんなグループワークをやってみた&やってみたい」

▼過去の若手教師・教育創造MTGの活動の様子はこちら
https://berd.benesse.jp/magazine/express/kou/07/

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