理系の方が就職に有利というようなことも聞きます。今時の文系、理系にはどのような力が求められているのか、保護者として知っておくべきことについて教えてください。
(質問者:茨城県/高1女子・母)
A文理に関係なく数学力が重視される
例えば、かつては金融機関イコール文系の学生の就職というイメージが強かったものですが、現在は異なります。最新の金融商品は金融工学を駆使したり、ファンドの運用で複雑な数式を扱ったりするなど、理系の知識が重視されています。その傾向は特に外資系金融機関に顕著です。実は、金融機関に限らず、外国の企業が日本人に求める力の1つが数学力です。英語力はあって当然と考えられています。また、米国で大学に進学を希望する場合に受験する基礎学力テスト(SAT、日本の大学入学共通テストに近い形式)の必須科目は、数学と英語(読解・記述と言語)です。数学を受験せずに大学に入れる国は、世界的に見ても非常に少ないと思います。早稲田大学の政治経済学部では、2021年度の入試から大学入学共通テストの数学を必須科目としました。経済学では数学の知識が必要であり、政治学でも統計学といった数学的な学問をよく使うなど、入学後の学びに必要な教科だからというのが理由でした。もはや、「文系だから」「理系だから」と分けることなく、社会においてある程度の数学力が重視されるようになっているのです。
世界の動きについてもう少しお話しすると、日本のように大学入試を文理に分けて行っている国は珍しいと言えます。諸外国では、専門的な知識は大学を出てから修士課程で学ぶものとされ、大学入学時には、文理の別よりも基礎的な知識が問われており、その1つが数学なのです。おそらく保護者の方々が思っている以上に世界では数学力が重視されており、日本においても外資系企業を中心に同じ傾向が見られることは、ぜひ頭に入れておいていただきたいと思います。
そうしたことから、もし、文系か理系かで悩んでいると子どもから相談されたら、どちらにしても数学は頑張っておきなさいとアドバイスすることをお勧めします。