子どもには、医師になってほしいと思っています。成績は悪くありません。医師としての適性の有無は、どのようなところに表れますか。

(質問者:千葉県/高1男子・母)

AAIの進展で「適性」自体が変化する

医師の適性はどこを見ればよいのか、難しい質問です。患者と一対一で向き合うわけですので、一定のコミュニケーション力は必要です。加えて、最近は、AIを活用した診断技術が日進月歩の勢いで進んでいます。例えば、AIは、膨大な数の過去の症例を基に学習していくわけですから、個々の人間では、知識量に関しては太刀打ちできるはずがありません。そうなると、生身の人間である医師には、豊富な臨床経験よりも、患者さんを安心させるような温かさや、症状や治療法を分かりやすく説明できる力が重視されるようになるかもしれません。つまり、今皆さんが考えている医師としての「適性」が、将来は変わる可能性があるということです。

AIを活用した技術が多くの医療機関に普及していけば、必要とされる医師の数は減っていくでしょう。特に、大都市部を中心に、医師が過剰状態になることは確実視されています。ご質問者は、お子さんが医師になることを期待されているようですが、もし、「高い収入が得られるから」「安定していそうだから」という考えが理由であれば、医師にこだわる必要はないと思います。成績は悪くないということですから、例えば、難関大学の理系学部に入学し、研究者を目指す道も検討してみましょう。医師になることを前提に子どもの適性を見るよりも、もっと広い視野で将来の可能性を考えることをお勧めします。