小・中学校と野球を続けてきた息子は、チームではエースで4番でした。スポーツ推薦は受けず、甲子園を目指せる公立高校に進学して、もちろん、野球部に入りました。しかし、各中学校のエースや4番が集まる高校だったため、思うように活躍できず、球拾いしかさせてもらえていないそうです。そんな息子に、どのようなアドバイスをすればよいでしょうか。

(質問者:神奈川/高1男子・母)

A地味な練習は、短期的には意味がある。長期にわたる時は、指導側に問題がある場合も。

私は、スポーツの練習には、たとえ球拾いでも、無駄なことは1つもないと考えています。自分の能力が認められず、したい練習ができない時には、絶対にうまくなるんだ!と、ハングリー精神が養われることも大きな成長の1つです。当の本人は悔しい思いをしながら部活動に参加していると思いますが、今は一歩引いた視点で野球に向き合う時期だと考えてほしいです。自分より上手なメンバーはこういうフォームの特徴がある、こういう努力をしているなどと、周囲の様子を注意深く観察することで、自分に足りなかった部分を見つけることができます。そうした習慣を日々の練習に取り入れることなどによって、上達することを願っています。
しかし、球拾いしかさせてもらえない状況がずっと続くのであれば、指導者側に問題があります。私が指導してきた駅伝のチームには、全国トップレベルの選手もいれば、大きな大会の走者になったことがない選手もいて、実力差は大きいです。選手に、一律で同じ練習メニューを課すことは絶対にありません。選手のレベルに応じた目標タイムと練習メニューを設定しています。つまり、指導者は、選手一人ひとりを成長させる意識を持ち、それぞれの状況に応じて少し上の目標を設定し、それに挑戦させることで、達成感を味わわせるような練習環境をつくるべきだと考えます。その点は、競技で結果を出すことが最終目標となるプロスポーツとは異なります。教育活動としてのスポーツの目的は、競技を楽しみながら、子ども一人ひとりの人間性を成長させることです。例えば、入部したての子どもに、まずは部活動全体の様子を知ってもらうために、1、2週間程度、声出しや球拾いだけを連続して行わせることはあり得るでしょう。しかし、そうした状況が半年間も続くのであれば、何かがおかしいと考えるべきですし、それを放置すると、子どもがその競技を、スポーツを嫌いになってしまう恐れがあります。その場合は、保護者や周囲の関係者が詳細を確認し、指導者との相談の場を持つなど、改善に向けた働きかけをする必要があると思います。