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  • 【誌面連動】『VIEW next』高校版 2022年度 2月号

【誌面連動】マイ・ストーリーを語れる生徒を育む進路指導 詳細紹介
千葉県・私立日出(ひので)学園中学校・高校
「メンター制度」で生徒の思いを言語化させ、
将来像や好きなことを大学の学びにつなげるストーリーづくりを支援する

2023/02/28 09:00

「マイ・ストーリー」とは、生徒一人ひとりの「自分のこれまでの学びや活動、その成果や結果に至るまでのプロセス、これからの展望」を指す。

本記事では、『VIEW next』高校版2023年2月号で紹介した千葉県・私立日出学園中学校・高校の、「マイ・ストーリー」を描き、それを語れる力を生徒に育む取り組みを、さらに詳しく紹介する。

 

2023年2月号の記事はこちらから

 

本記事のコンテンツ

1.中学生の時から、職場体験や大学見学で将来に目を向けさせる

2.就きたい職業にはどんなスキルが必要かを問いかける

3.アウトプットを繰り返し、内面に向き合わせる

4.支援ノウハウを共有し、メンターを拡充

学校概要

◎設立  1950 (昭和25)年

◎形態 全日制/普通科/共学

◎生徒数 1学年約160人

◎2022年度入試合格実績(現役のみ) 国公立大は、埼玉大、千葉大、東京外国語大、東京海洋大、東京学芸大、愛媛大、長崎大、石川県立大に13人が合格。私立大は、青山学院大、慶應義塾大、上智大、中央大、東京理科大、明治大、立教大、早稲田大などに延べ530人が合格。

竹村和晃(たけむら・かずあき)

進路指導部部長
教職歴18年。同校に赴任して18年目。数学科。

能見太一郎(のうみ・たいちろう)

高校3学年主任
教職歴19年。同校に赴任して18年目。地理歴史・公民科(世界史)。

坂井郁子(さかい・いくこ)

高校2学年主任
教職歴18年。同校に赴任して15年目。広報担当。国語科。

皆川真由子(みながわ・まゆこ)

高校1学年副担任
教職歴5年。同校に赴任して5年目。生徒会顧問。数学科。

1.中学生の時から、職場体験や大学見学で将来に目を向けさせる

生徒の約8割が私立大学に進学する千葉県・私立日出学園中学校・高校では、ここ数年、総合型・学校推薦型選抜(以下、推薦型選抜)を受験する生徒が増えてきた。中高一貫校の強みを生かし、近年は「マイ・ストーリー」づくりに向けた進路意識の涵養を、中学生の時から行っている。

代表的な取り組みは、中学2年次に取り組む職場体験だ。生徒は、自分が体験したい職場を探し、自ら事業者に電話をして職業体験を申し込む。教師は、事前に電話のかけ方や話し方などを指導し、生徒が体験を申し込んだ後、事業者に連絡してフォローしている。そして、中学3年次には、大学がどのような雰囲気か、何が学べる場所かを、まずは知ることを目的として、興味のある大学のオープンキャンパスに参加するよう促す。

高校になると、志望大学の明確化に向け、様々な取り組みを行う。高校1年次は職業講演会を実施。さらに、オープンキャンパスでの模擬講義や、大学が開催するオンラインの模擬講義を受けて、その感想を提出する課題も出す。その上で、3学期には、大学・学部・学科の比較研究を行って志望校の候補を挙げ、高校2年次には、大学のアドミッション・ポリシーを確認させて、志望校を絞り込んでいく。

そのようにして進路学習を積み重ねた上で、高校2年次の9月、推薦型選抜の仕組みや、そこで求められる力の解説、卒業生の推薦型選抜の体験談などから構成される説明会を実施。希望者を対象に、教師が1対1で生徒の「マイ・ストーリー」づくりを支援する「メンター制度」を10月に始める(詳しくは、『VIEW next』高校版2023年2月号参照←リンクを貼る)。進路指導部部長の竹村和晃先生は、メンター制度によって推薦型選抜の支援体制がシステム化できたと語る。

「それまで、推薦型選抜の志望者への支援は、生徒が個人的に相談した教師がそのまま担当していました。そのため、特定の教師に担当が集中するという課題がありました。メンター制度によって、校内の推薦型選抜の支援体制が整ったことで、教師の負担を分散することができました」(竹村先生)

2.就きたい職業にはどんなスキルが必要かを問いかける

 

メンター制度において、教師はそれぞれ工夫して、支援を行っている。高校3学年主任の能見太一郎先生は、「マイ・ストーリー」づくりの支援のポイントを次のように挙げる。

 

・熱意を伝えるために何が足りないのかを自覚させる

 

活動履歴と将来の希望、そして志望校のアドミッション・ポリシーを、箇条書きでもよいのでまずは書かせて、志望理由書を作成させている。そして、大学に自分の熱意が伝わる内容が書かれているか、自分の言葉で語れているかを客観的に捉えさせる。

 

「これからの展望につながる自分の体験を、自分の言葉で表現することが志望理由書の肝ですが、生徒はうまく言語化できません。いったん志望理由書を書かせて、今のままでは相手に熱意が伝わらないことを自覚させてから、なぜ、それが好きなのか、なぜ、その思いを持っているのか、生徒の中にあるものを引き出しながら、どうすれば伝わるのかを一緒に考えています。熱意を伝える材料として、知識や経験が必要であれば、それを積むための行動をするようにアドバイスしています」(能見先生)

 

・2年次のうちに動き出し、足りない点を補わせる

 

メンター制度を2年次10月から行うことで、足りないものを自覚させた後の活動も余裕を持ってできる。具体例として、韓国のアイドルが好きで、韓国文化を学べる学部を志望する生徒へのやり取りについて、能見先生は次のように語った。

 

「面接で自分が興味のあるアイドルについて訴えても、志望理由としての説得力はありません。そこで、なぜ韓国のアイドルなのか、日本のアイドルとは何が違うのか、その違いのどういった点に興味を抱いたのかと問いかけると、そもそも日本と韓国では文化が違うと言うので、その着眼点を大事にし、研究したいテーマについての自分のこれまでの調査や、大学に入って取り組みたいことについての展望を説明することができれば、志望理由の説得力が増すのではないかとアドバイスしました。すると、その生徒は、韓国の友人とやり取りをして、韓国の文化について学び、自分なりの日韓文化論をまとめ、それを面接でも説明して合格しました。きっかけが、憧れや好きなことといった単純なものであっても、その中にやりたいことやこだわった理由があるはずです。それを言語化できるように支援しています。2年生から動き出しているからこそ、時間をかけた丁寧なやり取りで、生徒の行動を促すことができます」

 

・職業と大学での学びを結びつける

 

将来就きたい職業があっても、そのために大学で何を学べばよいのかが十分理解できていない生徒もいる。そこで、将来像から逆算して、どんなスキルが必要なのか、そのために大学で何を学べばよいのかを考えさせるようにしている。

例えば、キャビンアテンダントの場合、海外の文化に詳しくなりたいのか、外国語を流暢に話せるようになりたいのか、看護師の場合、働く場所は病院か福祉施設か、誰の役に立ちたいと思っているのかなどと問いかけることで、希望を明確にし、それに合った学びができる大学・学部選びを支援する。

 

また、積極的に自分のことを開示できない生徒を担当する際には、担任に生徒の様子を聞き、その情報を支援の材料としている。

3.アウトプットを繰り返し、内面に向き合わせる

 

高校2学年担任の坂井郁子先生は、次のような方法で「マイ・ストーリー」づくりを支援している。

 

・新聞記事の要約と、その記事に対する意見を書く

 

志望の学部系統に関連する新聞記事を毎日読み、関心を持った記事の要約と、その記事に対する自分の意見を書いて、週1回のペースで提出させている。目的は、志望学部に関する知識を蓄えるとともに、社会情勢を知ることにある。新聞を購読していない家庭には、購読に協力してもらうようにしている。

 

・志望校の書式で、志望理由書を作成

 

志望校の出願書類を入手して、実際の書式・文字数に合わせて志望理由書を書き、3年次の1学期末をめどに、いったん仕上げさせるようにしている。そして、受験する年度の募集要項が公表されたら出願書類を入手して、前年度の書式・文字数から変更がなければ、仕上げた志望理由書通りに記入し、変更点があれば、それに合わせて修正し、提出する志望理由書を完成させる。志望校に熱意が伝わるよう、出願の受け付け開始と同時に出願することができるようにしている。

 

・志望理由書の内容を基に、面接・小論文対策を実施

 

提出する志望理由書が完成したら、その内容を基に模擬面接と小論文の練習を行う。

面接で話す内容と志望理由書に書いた内容とに食い違いが生じないようにするとともに、志望理由書に書き切れなかった思いやエピソードを伝えられるようにする。

 

坂井先生は、「マイ・ストーリー」づくりの秘訣として、アウトプットを重ねる重要性を語る。

「書いたり、話したりする過程で生徒は、自分が何に関心があるのか、何をしたいのかを考えます。さらに、教師が生徒との対話の中で、生徒の考えの矛盾をついたり、志望とは異なる視点を示したりして、生徒の考えを揺さぶると、『早く進学先を決めたい』といった動機が、『これを学びたい』といった内発的な動機に変わっていきます。そうして、自身の内面やそれまでの経験を掘り起こし、将来像と経験を結びつけて、志望理由を1つのストーリーにしていきます」

 

なお、コロナ禍の前は、生徒同士でそれぞれが書いた新聞記事の要を回し読みさせて、よい点や課題を出し合ったり、記事のテーマで討論をしたりしていた。知識を学び、考えを深めていく場として大きな効果があるため、その取り組みの再開を検討している。

4.支援ノウハウを共有し、メンターを拡充

 

各大学の推薦型選抜の募集枠拡大の中で、同校の推薦型選抜の受験者はさらにが増えると予想している。そこで、若手教師にメンターになることを呼びかけている。高校1学年副担任の皆川真由子先生は、2021年度に初めてメンターになった際、周りに相談しながら支援を進めた。

「2021年度に初めて3年間受け持った卒業生を送り出しましたが、進路選択の過程で生徒に寄り添えることに大きなやりがいを感じました。中でもメンター制度は、1対1で生徒とじっくり向き合うことができるので、メンターになることを申し出ました。初めての経験でしたから、進捗とともに、どんな声かけをすればよいか、どこまで情報を提供すればよいかなどについて、進路指導部や担任の先生に相談しながら支援を進めました。その経験は、自分自身の指導力アップにもつながったと思っています」

 

そうした経験を踏まえ、同校は2022年度から、教師が支援の進捗状況をクラウド上の共有シートに入力する試みを始めた。例えば、「自己分析を始めた」、「研究テーマの明確化に取り組んでいる」、「志望理由書の作成に着手した」といった、生徒一人ひとりの行動を可視化し、そこで示される生徒の状況を基に、進路指導部が担当教師に情報提供をしたり、支援の進め方をアドバイスしたりしている。また、進路指導部の呼びかけで、メンターと有志の教師が集まり、支援ノウハウを共有する場を設けた。

 

学園の強みを生かし、必要に応じて外部との連携も積極的に行っている。例えば、ある幼児教育の学部の推薦型選抜では、「おさんぽマップ」を作成し、それについてプレゼンテーションする課題が出されたが、その課題で留意すべきことが教師には分からず、附属幼稚園に相談した。

「大学は、生徒の様々な資質・能力を評価しようと、選抜方法が多様化しています。校内で生徒支援のノウハウを共有し、学校外の支援も得ながら、生徒の希望進路を実現する体制を充実させていきたいと考えています」(竹村先生)

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