東京都港区の私立広尾学園中学校・高等学校(以下、広尾学園)を卒業後、海外大学に進学したお二人にインタビューをした。2回目の今回は、現在はペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)の生体医療工学部に通う小島丈生(こじま・じょう)さん(21歳)。生物への関心を起点に、医療とテクノロジーで社会貢献したいという自らの軸を見出し、米国トップ大学へと進学した。自分のしたいことに真っすぐ向き合い、目指す社会に近付くために学ぶ大学生活について聞いた。

(聞き手:ベネッセ教育総合研究所 石坂 貴明)
 

「医療×テクノロジー」で誰かの役に立ちたい

 
――― まず広尾学園に入るまでの幼少期の学びについて教えてください。

僕は生まれてから13歳になるまで アメリカ・カリフォルニア州で過ごしました。平日はアメリカの現地校に、土曜日は日本語補習校に通っていました。家では両親と日本語で話していたので、自然と日米両方の教育や価値観に触れて育ったと思います。

ただ、現地校の進度は日本に比べて遅いと感じていたので、日本の教材(進研ゼミなど)を取り寄せて、自宅学習もしていました。学校の勉強以外では、小学生の頃から生き物が好きで、図鑑ばかり見ていた のを覚えています。祖父母が送ってくれた深海生物の DVDに夢中になったのが、生き物 に興味を持ったきっかけだったと思います。
 

ペンシルベニア大学在学中の小島丈生さん

 
――― 米国から帰国後、広尾学園に編入した経緯を教えてください。

13歳の時、アメリカから 父の仕事の都合で突然帰国することになりました。当時は日本のことをあまり知らず、東京で暮らすのも初めての経験でした 。

広尾学園に入ったのは 、編入生を受け入れていて、かつインターナショナルコースに入れば英語で学べるというのが決め手でした。日本での生活に初めのうちは 戸惑いもありましたが、次第に慣れていきました。
 

――― 学びのスタイルはどのように変化しましたか。

中学生の頃は、どちらかと言うとのんびりしていましたが、高校生になってから社会課題への関心が芽生えました。自分が「やりがいを感じられるのは、何かの役に立てたときだ」と気づいたんです。

特に、祖母が視覚障害を持っていたこともあり、「医療×テクノロジーで社会に貢献する」ことに興味を持ちました。高校1年生の冬から卒業まで、電動義足を開発しているスタートアップ企業でインターンを続け、実際にプログラミングなどの情報工学系の業務にも携わりました。
 

――― いつから海外大学進学を意識し始めたのでしょうか。

高校2年の頃です。大学入学共通テストの受験対策など「みんなで同じことを一斉にやる」ことにどうしても馴染めず、日本の大学受験にはのめり込めませんでした。一方でアメリカの大学は、やりたいことに応じて選べる学部の選択肢が多く、課外活動等での実績も含めて自分のことを高く評価してもらえる機会があることが魅力的だと思いました。

実際、僕が今専攻している「生体医療工学(Biomedical Engineering)」の領域は、日本の大学ではあまり例がなく、アメリカだからこそ学べる内容だと思いました。
 

――― 海外大学受験に向けた準備について教えてください。

まず必要なのは、GPAやAP(Advanced Placement)などの成績を上げることです。そしてTOEFLやSATなどの標準テストも受検しました。 それに加えて、課外活動での実績、さまざまなコンテストなどでの受賞歴、インターン企業からの推薦状、エッセー(最大650字×数本)など、多面的に自分をアピールする書類が必要です。

僕は22校に出願して、10校に合格しました。ジョンズ・ホプキンス大学やジョージア工科大学、カリフォルニア大学の複数校に合格しましたが、最終的にペンシルベニア大学を選びました。
 

――― 大学合格の決め手は何だったと思いますか。

「自分が何をやりたいのか」を明確にし、それをしっかりと言語化できたことだと思います。アメリカの大学ではエッセーが非常に重視されます。

例えばペンシルベニア大学では、「身の回りの誰かにありがとうの手紙を書いてください」というテーマが出ました。僕は父との思い出や感謝の気持ちをもとに、真剣に書きました。
 

――― ペンシルベニア大学での生活 について教えてください。

月曜から金曜は課題と授業で忙しく、金曜の夜に友達と遊び、週末は月曜提出の課題をこなす生活です。24時間開いている 図書館などもありますので、学ぶ環境は整っています。2年間は寮生活が必須なので、コミュニティにも自然に馴染めました。
 

――― ペンシルベニア大学の魅力について教えてください。

例えば、夏季休暇中にインターンをしたくても 経済的に難しい場合には大学が金銭的支援をしてくれる制度があったりして、とにかく学生に対して手厚いサポートがあるところも魅力です。
 

――― 将来の展望について教えてください。

今もやりたいことは変わっていませんが、高校生の頃より視野は広がりました。「医療×テクノロジーで社会に貢献する」ことを実現できる環境が、目の前にあると実感していますし、毎日が充実しています 。ペンシルバ ニア大学には、学部と修士を一貫で取得できる制度もあるので、修士にも挑戦するつもりです。
 

――― 海外進学を考えている高校生にメッセージをお願いします。

特にアメリカの大学は多様な学生がいます ので、さまざまなことに関心持って 、社交的に過ごせる人にとっては良い環境だと思います。多くの情報が自然と入ってくるようになりますし、人との関係から学べることも多いからです。自分の気づいて いない興味関心や可能性を発見できる機会も多いと思いますので、ぜひチャレンジしてほしいです。
 

 
【編集後記】

小島さんのお話から感じたのは、「自分の “好き” を丁寧にたどること」の大切さです。生き物が好きな少年は、図鑑とビデオを経て、電動義足の開発に携わり、今は医療工学を学んでいます。そこには自分のしたい方法で社会に貢献したいという軸が生まれ、育っています。

小島さんの学びの軌跡を振り返ってみると、「進路」というものは選ぶというよりは「育てるもの」と考えることもできるのではないかと感じました。