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新世代toi-time 第14回テーマ「生成AIとどう向き合うべきか」
問い「生成AIは『考える過程』を奪うのか」
2026/07/09 09:30
コラム執筆者

市立札幌藻岩高校
對馬光揮(つしま・こうき)
コラム末で、筆者が日々の授業実践や学びの記録を発信するウェブサイトを紹介しています。
7月3日に公開された「ベネッセ解説」(VIEW next編集部 河野 仙一さん執筆)を読みました。
各種データや現場の声などを踏まえた課題の整理、それを経て紡ぎ出された「生成AIとどう向き合うべきか」という問い。ちょうど私自身、考えを巡らせているところでした。
そこで、これまで考えてきた「生成AIとの向き合い方」について、数回に分け、河野さんの記事を踏まえながら、現場の、そして国語科の教員として、私なりの考えをお示ししたいと思います。
本稿が新たな気づきを生み、読者の皆さまが「生成AIとの向き合い方」について考えるきっかけの一つになれば幸いです。今回のコラムでは、次の河野さんの文章を受けて、「生成AIは『考える過程』を奪うのか」ということについて私見を述べたいと思います
①河野「生成AIは、いつでもそれらしい答えを提示してくれる。学習の利便性は確かに高まる。だが、自ら調べ、悩み、試行錯誤する過程は短縮されていく。その『効率化』は、子どもたちの学びに何をもたらすのだろうか。(中略)一見すると遠回りにも思えるその過程は、答えにたどり着くためだけにあるのではない。考える力そのものを育む時間でもあるはずだ。」
あるテレビ番組で、MCの方が歌人の俵万智さんに、「AIが短歌を詠むこと」について質問していました。それに対して俵万智さんは、次のように回答されていました。
「なぜ人が歌を詠むかというと、日常の中で心が揺れて、感情の種みたいなものが見つかって、それを言葉にまとめながら『が』がいいかな?『を』がいいかな?って考えながら完成させていく。その過程がよいのであって、そこをAIにやらせてしまうのはもったいない」
俵万智さんは、『生きる言葉』(新潮社)で「本質的な違いを認識したうえで、面白い相棒としてつき合っていけたら、というのが私のスタンスだ」と述べており、AI自体を否定してはいません。
実際、俵万智さんは、AIが詠んだある短歌に対して「思わず拍手しそうになった」「やるじゃないか、AI」と綴っており、「もし短歌AIとつき合うなら『壁打ち相手』としてそばに置くのがいいなと感じた」と述べています。
そのうえで、私は、俵万智さんの「もったいない」という言葉が、生成AIとの向き合い方において、大切な視点の一つになり得るのではないかと感じています。
答えと思われるものをいち早く見つけたい場合には、生成AIは非常に便利です。しかし、答えを見つけるその道のりで、新たな発見があったり、自分の価値観が揺さぶられたりすることがあります。私はそれが学びの醍醐味だと思っているので、その道のりを歩むことなく、AIを使って「瞬間移動」してしまうことは、それこそ「もったいない」と感じてしまいます。
作品は副産物と思うまで詠むとは心掘り当てること (俵万智)
レポートなどの成果物が副産物と思えるくらいまで、学習の過程に「学びの実感」が芽生えることが、学習の本質だと私は思っています。生成AIの利活用にかかわらず、です。
私は毎回の単元で、学習指導要領の言葉を用いながら4つ程度の目標(伸ばしたい力)を提示し、「成果物を作るまでの方法やペースは皆に任せるけど、この目標を達成できるように学んでいこう」と生徒に伝え、単元終了時には、その一つひとつの目標に対してどのような実感があったのかを振り返る時間を取るようにしています。
生成AIが出した言葉や文章を無批判に採用すれば、それなりの成果物を出すことはできたとしても、目標として設定した力を伸ばすことはできません。一方で、生成AIが出した言葉であってもそれを吟味したうえで生徒が採用しているのであれば、そこには十分に「学びの実感」が伴っているはずです。
そのように考えると、「なぜその言葉や考えを選んだのか」という問いに答えられるような学び方をしていることが重要であり、それを奪うような生成AIの使い方は避けるべきで、反対にそれを促進するような生成AIの使い方は効果的だと考えられます。
目標を生徒と共有し、「なぜ」に対して生徒が自分の言葉で説明できるように学ぶ。このことを抑えながら生成AIを活用することができれば、「効率化」は決してマイナスなものではなく、河野さんのいう「考える力そのものを育む時間」を生み出すことにつながるはずです。
生成AIが答えと思われるものを出してくれる時代だからこそ、「いかに早く終えるのか」ではなく、「どのように自分で歩むのか」を問い続ける。その時間こそが、生成AIを「相棒」としながら、「もったいない」ものにしない豊かな学びにつながるのだと、私は考えています。
次回は、「生成AIを活用して文章を書くこと」について考えを述べます。
對馬が授業実践や学びの記録を発信しているウェブサイト:マナブベイ

