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創立以来の教育理念である、生徒一人ひとりの成長を支えることを実現するため、 外部と連携した「放課後特別講座」を導入
兵庫県・私立育英高校
2026/07/19 08:00

少子化や教師不足、働き方改革など、様々な課題が学校を取り巻く中、学校経営者はどのような考えの下、経営にあたっているのかを尋ねる本コーナー。今回は、兵庫県・私立育英高校の清瀬欣之(きよせ・よしゆき)校長と教務部の岡村光洋(おかむら・みつひろ)教諭に話を聞いた。2024年度に学校目標「育英ビジョン2024」を策定し、時代に合った新しい教育を展開しながら、創立以来の教育理念の実現に向けて、外部と連携した放課後の学習支援「放課後特別講座」を導入し、生徒の基礎学力の向上と学習習慣の定着を支援している。

育英高校 校長
清瀬欣之(きよせ・よしゆき)

育英高校 教務部 講座主任
岡村光洋(おかむら・みつひろ)
学校概要
庄野一英(しょうの・かずひで)が創設した私塾「数英漢学会」が同校の起源。『孟子』の中の「天下の英才を得てこれを教育する」という考えを基に「神戸育英義会」と改名し、商業学校として有為な人材を育成してきた。その後、普通科の設置、男女共学化と、時代のニーズを捉えながら柔軟に変化を遂げてきた。硬式野球部、バスケットボール部(男子)など、全国大会に出場経験を持つ部活動も多い。
開校:1899(明治32)年
生徒数:1学年約210人
教師数:約90人
2025年度進路実績:国公立大は、神戸大、広島大、鹿屋体育大、兵庫県立大などに5人が合格。私立大は、京都産業大、同志社大、立命館大、龍谷大、関西大、関西学院大などに延べ171人が合格。短大・専門学校進学31人。就職12人。
創立125周年を機に、新しい学校目標を策定
清瀬 本校は1899年の創立以来、自分の長所や適性を発見・自覚し、それらを発展させ、自らに生かす「各有能(おのおののうあり)」という創立者の理念と、「責任を持つ」「希望を持つ」「誇りを持つ」という初代理事長の三訓の下、生徒一人ひとりの個性を尊重しながら、主体的に生きる力を育むための教育に取り組んできました。そうした本校の教育理念は、創立から今日まで変わらず受け継がれていますが、カリキュラムのあり方などは時代の変化とともに変化し、発展しています。創立125周年を迎えた2024年に学校目標「育英ビジョン2024」を策定し、「探究活動」「国際協働教育」「ICT教育」を軸とするカリキュラム・ポリシーの下、新しい教育活動をスタートさせました。そしてその3つの軸である教育活動の推進を加速させるため、文理融合・グローバルという視点で探究学習を支援する兵庫県の「ひょうごリーダーハイスクール」、文部科学省の「DXハイスクール」の指定を受けました。海外姉妹校の生徒とのオンライン交流や、IT企業と連携した仮想空間「メタバース」を舞台にした探究学習など、時代のニーズに応える様々な活動に生徒たちが取り組んでいます。
部活動などの予定を踏まえながら週6コマの講座を選択
清瀬 創立者の「各有能」という理念は、すべての生徒が優れたものを持っているのだから、教師はそれを伸ばすこと、そして生徒に何かつまずきがあったとしても、教師は生徒の可能性を信じて支え続けることを求めたものです。そうした教育理念を教科学習に反映しようと、2025年度よりスタートしたのが放課後の学習支援「放課後特別講座」です。それは、関西個別指導学院(株式会社東京個別指導学院の関西ブランド)の講師が本校の教師と連携して、進研模試・スタディーサポートといったベネッセのアセスメントや、教育プラットフォーム「Classi」を活用して、定着度や学習の進捗に応じた1対1の個別指導または少人数制集団指導と、学習の進捗管理を行う、放課後の学習支援です。部活動が活発な本校の生徒たちが、学習と部活動を両立しながら基礎学力と学習習慣を身につけていくことを目的としています。
岡村 放課後特別講座は火曜日から金曜日までの放課後、8限目から11限目までに相当する16時40分から20時30分までの時間帯に、希望者を対象に行われ、部活動が終わった後も受講できるようにしています。1年次は数学と英語の2教科、2年次はそれらに国語を加えた3教科の対面講座を実施しています。生徒は部活動などの予定を踏まえて週6コマを自由に選択します。定期考査2週間前からは対象教科に理科、地理歴史・公民科も加え、夏季休業中には夏季課題への取り組みをサポートする講座も実施しています。
放課後特別講座の特徴は、本校の教師と本講座の運営を担う関西個別指導学院の担当社員・講師が連携して、生徒の理解度に応じた支援を行っている点にあります。本校の教師は教育課程内の授業の進度やポイントなどを担当社員・講師に共有し、担当社員・講師は本講座を受講する生徒の学習状況や学びの姿勢などを本校の教師に共有します。定期考査で得点できるようになること、つまり、日々の授業の内容をしっかり定着させることを目標に本講座を実施しています。講師は神戸大学などの大学生が務めており、自分との年齢の近さから、講師に学習や進路の疑問や悩みを相談する生徒も少なくありません。
受講した生徒からは、「授業で分からなかったところをすぐに解決できるのがよい」「分からない問題をそのままにせず、解決しようとする習慣が身につき、毎日の講座が楽しみになった」「テスト対策のプリントやオンラインでの計画サポートが日々の学習の助けになっている」といった声が上がり、高い評価を得ています。下校時にその日に必要な学びが終わることで、生徒は自宅では家族とのコミュニケーションや身体を休めることに時間を使え、次の日も元気に登校できるという好循環が生まれています。
受講生は学力面で顕著な成果が。中学生やその保護者も強い関心を示す
清瀬 放課後特別講座の導入は、講座担当チームを設置して検討を進めました。その中で、部活動を大切にする本校の長年の伝統と、探究学習や国際交流にも主体的に取り組める環境を整備した近年の本校の現状を踏まえた時に、部活動や課外活動を終えた生徒が、帰宅する前に学校内で学習に取り組める環境と、アセスメントを基に生徒一人ひとりに合ったよりきめ細かな学習指導が必要だという結論に至ったのです。放課後特別講座の実施に向けて、外部との調整を進めたのも講座担当チームのメンバーの教師です。
放課後特別講座の導入前は、同じ時間帯に本校の教師が補習講座を行っていました。放課後特別講座を外部講師が担当するようになったことで、本校の教師たちは補習講座を行っていた時間を、教材研究や模擬試験などのアセスメントの結果の分析時間に充てられるようになり、授業改善にまい進できる環境が整いました。最近は、それまでにはなかった、学年を横断したハイレベル講座の実施など、定期考査や模擬試験の対策をねらいとする放課後特別講座と差別化を図った新しい学びの場を提案する教師も現れています。放課後特別講座の実施は教師の余白の創出と指導・支援のモチベーションの向上につながっています。
岡村 放課後特別講座の成果は生徒の学力面に顕著に表れています。25年度の高校1年生を対象に、受講生の1学期中間考査から期末考査にかけての学力推移を校内偏差値で分析したところ、受講生は数学と英語のいずれにおいても着実な向上が見られ、非受講生と顕著な差異があることも確認できました。外部の模擬試験(25年度1月進研模試)においても成績が向上しました(図)。さらに、GTZ(※)を見ても、近年減少傾向にあったA層、B層が増加傾向に転じるとともに、C層、D層が上位層に移行するなど、いずれの学力層も全体的に上昇傾向にあります。本校の教師と外部講師の強固な連携によって、そうした成果が得られているのだと思います。
※ベネッセのアセスメントにおける共通の学力評価指標、「学習到達ゾーン」のこと。「S1」~「D3」の15段階で評価される。
清瀬 中学生向けのオープンハイスクールで放課後特別講座の授業体験を実施したところ、大変多くの中学生が体験を希望し、募集枠はすぐにいっぱいになりました。学校の学びと連続性を持ったプラスアルファの学びが校内で整備されていることに、中学生も保護者も強い魅力を感じているようです。26年度の入学式の日には、保護者の方から「放課後特別講座の申し込みはいつからですか」と早速質問がありましたし、新入生の中には、放課後特別講座があることが本校への入学の決め手になったと言う生徒もいました。
生徒の小さな成功体験が、学校の理念の実現につながっていく
清瀬 「育英ビジョン2024」の下、「探究活動」「国際協働教育」「ICT教育」に力を入れるようになって改めて私たちが実感したことは、生徒のコンピテンシーは教師が教え続ける教育の中だけでは向上しないということです。もっと考えたい、話し合いたい、つくりたい、そして解決したいといった意欲があることで、生徒はコンピテンシーを発揮し、さらに伸張させていきます。そうした意欲を喚起するために学校に求められるのは、生徒が小さな成功体験を積み重ねられるような支援だと私は考えています。放課後特別講座で味わう成功体験や成長実感は、たとえそれが小さいものだったとしても、探究活動や国際協働、ICTを活用した創造的な活動などへの意欲に必ず結びつきますし、「各有能」の理念の実現にもつながるものだと思っています。
本校は「育英ビジョン2024」の策定以降、学校を創造的に発展させています。その過程で、私は校長として、目の前の学校課題を強く認識していることと、その課題にすぐに取り組み始める覚悟、そしてその課題は必ず乗り越えることができるという希望を校内に示すことを心がけてきました。少子化が進む中、学校経営者が明確な意志を持ち、それを校内外に示さなければ、学校はすぐに消えてしまう時代だと思っています。「育英ビジョン2024」から始まった学校改革の成果と次の課題をしっかり検証し、より学校の実態に合った施策を練り上げていきたいと考えていますし、日本の教育を創造する同志として多くの学校経営者と対話をし、ともに発展していきたいと心から願っています。


