齋藤 輝之

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志願者前年比119%の増加と合格者の絞り込み

図1 2026年度第1回出願指導Web研究会 私立大学入試一般選抜の入試概況

2026年度の私立大学入試におけるトピックは、一般選抜の総志願者数が前年比119%(約331.5万人)と大幅に増加したことでした(図1)。しかし、ここで注意すべきは「合格者数」の動向です。私立大学全体での合格者数は前年比104%とやや増加しているものの、特に受験生の集中する難関・中堅大学群では状況が異なります。

具体的には、早慶上理・MARCH・関関同立の合格者数が前年比95%、日東駒専・大東亜帝国・産近甲龍・摂神追桃では前年比92%(図2)と、明確に合格者が絞り込まれました。

図2 2026年度第1回出願指導Web研究会 私立大学入試一般選抜の入試概況

この背景には、国による「入学定員厳格化」の影響があります。文部科学省は私立大学に対し、全学年を合わせた「収容定員」に基づく厳格な定員管理を求められるようになりました。収容定員8,000人以上の大規模大学では、超過率が1.10倍以上になると私学助成金が全額不交付となるため、各大学は「歩留まり(実際の入学者数)」を精密に予測し、合格者数を慎重に管理せざるを得ません。そうした中、年内入試の人気拡大に伴って早期の入学者数が増加(定着率が向上)した結果、一般入試における合格者数はさらに抑え込まれることとなりました。こうした年内入試人気は今後も続くトレンドであり、(図3)に示される通り定員充足率が110%に迫る大規模大学も多いため、2027年度入試においても同様の傾向が続くと予測されます。

 

図3 日本私立学校振興・共済事業団「大学ポートレート(私学版)」の公表データをもとに、弊社にて定員充足率を算出(2026年度9月時点)

一方で、なぜ志願者数は増加したのでしょうか。 理由は、大学側による「受験しやすい環境づくり」にあります。併願時の大幅な検定料割引制度や、国公立大学前期日程の合格発表後まで入学手続き締め切りを延期する措置などが広がったことで、「念のためもう1校出願しておこう」という受験生1人あたりの併願件数が増加しました。これが志願者を前年比119%と増加させた「併願インフレ」の実態です。

過度な併願インフレから生徒を守る出願指導

こうした入試環境において、高校現場ではどのように出願指導に向き合うべきでしょうか。 割引制度や手続き延期といった「手軽さ」に反応した過度な複数出願は、受験生を疲弊させて第一志望校でのパフォーマンスを低下させるリスクがあります。「数を受ければ安心」という心理は理解できますが、個別の対策が必要な受験先を安易に増やしすぎると、かえって成果に結びつきにくくなります。

生徒が無理のないスケジュールで納得のいく進路を実現するために、高校現場で実践できる3つの支援策を提案します。

①「共通テスト利用方式」の戦略的活用
効果的な手法の1つが、「共通テスト利用方式」の戦略的活用です。第一志望校対策に集中できるよう、安全圏の併願校は共通テスト利用方式で事前に合格を確保しておき、一般入試では本命数校に全精力を傾けられる環境を整えます。

②「出題傾向の組み合わせ」を考慮した併願設計
私立大学同士の「出題傾向の親和性」を考慮した併願戦略が重要になります。受験科目や配点、出題形式、外部検定試験の利用有無などの傾向が近い大学を組み合わせることで、過去問演習による相乗効果が期待できます。

③ 組織の知恵を結集する「出願検討会」の実施
多角化・複雑化する入試要項を生徒自身だけで読みこなし、最適な併願戦略を組み立てるのには限界があります。そこで注目されるのが、学校全体で生徒の可能性を検討する「出願検討会」です(担任が事前に相談したい生徒をクラスから5名程度ピックアップしておくとスムーズです)。

出願検討会は、受験機会の限られる国公立大学志望者が多い地方部で定着してきた進路支援策です。模擬試験の結果だけでなく、担任や教科担当による生徒観、卒業生の合格データなどを持ち寄ることで、多角的な視点から生徒の可能性を広げます。

近年では入試の複線化に伴い、私立大学受験が中心となる都市部でもその有効性が認識されるようになりました。出願検討会は、生徒の強みを活かした併願先や学習支援策を協議する場となり、担任の進路面談での指導力を高める効果があります。さらに、教員の知恵を結集するプロセスは、若手教員にとっての実践的な研修の機会にもなっています。

入試の複線化は、生徒にとって選択や挑戦の幅が広がるという大きなメリットでもあります。多様な選択肢の中で、生徒が自信を持って「最適な一歩」を踏み出せるよう、学校全体による伴走支援が今まさに求められています。

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