動画を使った勉強は、今ではすっかり身近なものになりました。YouTubeや授業動画を開けば、数学の問題の解き方、英語の発音、歴史の流れなどを、いつでもわかりやすく学ぶことができます。分からなかった部分を繰り返し見たり、自分のペースで一時停止したりできることも、動画ならではの利点です。
では、動画で勉強するのは「アリ」なのでしょうか、それとも「ナシ」なのでしょうか。
結論から言えば、動画学習は「アリ」です。ただし、ただ再生して見続けるだけでは、せっかくの時間が十分な学びにつながらないことがあります。大切なのは、動画を見るか見ないかではなく、どのように見るかです。
「分かったつもり」が起きやすい動画学習
動画はわかりやすい反面、「分かったつもり」になりやすいという落とし穴があります。先生が問題をスムーズに解く様子を見ていると、自分も同じように解ける気がしてきます。説明に納得し、「なるほど」と思うこともあるでしょう。
しかし、動画を閉じて自分で問題を解こうとした途端、手が止まってしまうことがあります。歴史の流れを聞いて理解したつもりでも、何も見ずに説明しようとすると言葉が出てこないこともあります。説明を見て「分かる」ことと、自分で解いたり説明したり「できる」ことは、同じではありません。
動画では、説明がテンポよく進みます。内容が整理され、答えまで示されるため、視聴者は考える前に理解したような感覚を持ちやすくなります。けれども、頭をほとんど動かさずに見終えた内容は、時間がたつと抜け落ちてしまいがちです。「最後まで見た」という達成感と、「自分で使えるようになった」という学習成果を、混同しないことが必要です。
途中で止めて自分の言葉で説明する
動画を使った学習をより効果的にする方法について、Lawson and Mayer(2021)は、オンライン教材を途中で止め、学習者が学んだ内容を自分の言葉で書いて説明することの効果を調べました。その結果、教材をただ見続けるよりも、途中で止めて内容を説明する方が、時間がたった後も学んだ内容を覚えておくうえで役立つ可能性が示されました。
また、Chi and Wylie(2014)が提唱した「ICAPフレームワーク」でも、見たり聞いたりするだけの受け身の学習より、自分の言葉で説明したり、すでに知っていることと結び付けたりする学習の方が、深い理解につながると考えられています。大切なのは、受け取った情報をそのまま通過させず、自分の頭で一度組み立て直すことです。
動画で勉強するときは、内容のまとまりごとに一度止め、画面を見ずに次の三つを考えてみましょう。
・今の内容は何だったか
・なぜそうなるのか
・自分なら、ほかの人にどう説明するか
声に出して説明しても、ノートに短く書いてもかまいません。大切なのは、きれいな文章を作ることではなく、自分がどこまで理解できているかを確かめることです。うまく説明できないところがあれば、そこがまだ十分に理解できていない部分です。もう一度その場面を見直し、改めて自分の言葉で説明してみましょう。動画を止める時間は、一見すると遠回りに見えます。しかし、その立ち止まる時間こそが、記憶に残る学びをつくります。
AIで学ぶときにも必要なひと手間
この方法は、生成AIを使って勉強するときにも応用できます。AIは、質問すればすぐに説明や答えを返してくれます。その便利さは大きな魅力ですが、答えを読んで「分かった」と感じただけで終われば、動画を見続けるのと同じように、受け身の学習になりかねません。
AIから説明を受けた後には、画面を閉じるか答えを隠して、「今の説明を自分の言葉で言い直せるか」「具体例を一つ挙げられるか」「実際に問題を解けるか」を確かめてみましょう。うまく説明できなければ、AIに別の言い方や具体例を求めたうえで、もう一度自分で説明します。AIに答えを出してもらうだけでなく、自分の理解を確かめる相手として使うのです。
動画もAIも、使うだけで自動的に学力を高めてくれる道具ではありません。一方で、必要なところで止まり、自分の頭で思い出し、言葉にし、実際に使ってみるなら、学びを支える心強い道具になります。
結論として、動画学習は「アリ」です。ただし、記憶に残し、自分で使える知識にするためには、「止めて説明する」というひと手間が欠かせません。最後まで見ることを目標にするのではなく、途中で立ち止まりながら、自分の理解を確かめる。その見方が、動画を「分かったつもり」で終わらせず、本当の学びへと変えてくれます。
キーワード 動画学習では、見続けるだけでなく、途中で止めて自分の言葉で説明することが、学んだ内容を記憶に残すうえで大切です。
参考文献:
Lawson, A. P., & Mayer, R. E.(2021). Benefits of writing an explanation during pauses in multimedia lessons. Educational Psychology Review, 33(4), 1859–1885.
Chi, M. T. H., & Wylie, R.(2014). The ICAP framework: Linking cognitive engagement to active learning outcomes. Educational Psychologist, 49(4), 219–243.



