勉強では、自分ひとりで解ける問題を繰り返すことも大切です。基礎が固まり、正確さや速さが身に付き、「自分にもできる」という自信にもつながります。
しかし、簡単な問題だけでは、新しい考え方を身に付ける機会はなかなか生まれません。だからといって、難しい問題に挑戦すればするほどよい、というわけでもありません。力を伸ばす鍵は、今の自分より少しだけ難しい問題を選ぶことにあります。
簡単すぎても難しすぎても伸びにくい
簡単な問題ばかりなら、勉強は順調に進んでいるように感じます。ただ、すでにできることを繰り返すだけでは、新しい解き方を身に付ける機会は少なくなります。反対に、難しすぎる問題ばかりでは、どこから手を付ければよいか分からず、考える前に諦めたくなってしまいます。
ここで参考になるのが、発達心理学者のヴィゴツキーが示した「発達の最近接領域」という考え方です。これは、自分ひとりではまだ難しくても、先生や友だちから少し助けてもらったり、ヒントを受け取ったりすれば取り組める範囲を指します。
つまり、力を伸ばすには、簡単すぎる問題でも、まったく手が出ない問題でもなく、「少し考えれば解けそう」「ヒントが一つあればできそう」と思える問題に取り組むことが大切です。知っていることを組み合わせ、試してみる余地がある問題が、新しい力を育てます。
ヒントを借りて最後は自力で解く
まずは基本問題で土台をつくり、その次に、今の自分より少しだけ難しい問題へ進みましょう。問題を読んだときに、使えそうな知識や解き方が思い浮かぶかどうかが一つの目安です。まったく見当がつかないなら、難しすぎる可能性があります。
少し難しい問題に出会ったら、すぐに答えを見るのではなく、次の順番で取り組んでみましょう。
1まずは自分で考える
2分からないところをはっきりさせる
3必要な分だけヒントや解説を見る
4最後に、何も見ずにもう一度解く
大切なのは、分からない部分だけ助けを借り、最後は自分の力で解ける状態にすることです。解説を読んで納得しただけでは、まだ自力で解けるとは限りません。答えや解説を閉じた後、最初からもう一度解いてみましょう。翌日や数日後に解き直せば、本当に身に付いたかも確かめられます。
AIには答えではなく必要な助けを求める
この考え方は、生成AIを使った勉強にも応用できます。AIに答えを出してもらうだけでは、自分で考える時間まで手放してしまいます。答えそのものではなく、考え続けるために必要な分だけ助けてもらいましょう。
例えば、次のように頼むことができます。
・「答えではなく、ヒントを一つだけください」
・「私の考え方が合っているかだけ確認してください」
・「どこまで正しく、どこから違っているか教えてください」
・「同じ考え方を使う、少し易しい問題を一つ出してください」
こうすれば、AIを「答えを出す道具」ではなく、自分で考えるための助けとして使えます。ヒントをもらった後は、必ず自分で続きを考え、最後に何も見ずに解き直しましょう。ただし、AIの説明が正しいとは限りません。教科書や授業の内容と照らし合わせ、必要に応じて先生にも確認することが大切です。
「ひとりで解ける問題」から始め、「助けがあれば解ける問題」に進み、最後はそれを「ひとりで解ける問題」に変えていく。この繰り返しが、自分のできる範囲を少しずつ広げます。できなかった問題は、次に伸ばせる場所を教えてくれる目印です。少し難しいと感じる問題こそ、今の自分を一歩先へ進めてくれるのです。
キーワード 力を伸ばすには、少し助けがあれば解ける「ちょっと難しい問題」に挑戦することが大切です。
参考文献:
Vygotsky, L. S.(1978). Mind in society: The development of higher psychological processes(M. Cole, V. John-Steiner, S. Scribner, & E. Souberman, Eds.). Harvard University Press.



