新しい評価でつながった学びの入口と出口

2017・2018年に改訂された学習指導要領の趣旨などを踏まえて、学習評価の考え方が改めて整理されました。「観点別評価の導入」、「4観点から3観点へ」などと言われているものです。最大のポイントは、子どもたちに育みたい資質・能力を、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱に整理して、すべての教科等での学習をその3つの柱で評価するようにしたことです。学習指導要領も、指導の目標と内容が整理され、学習評価との対応関係が分かりやすくなっています。

そのように整理されたことで、とりわけ2つの点で大きな変化が生まれました。1つめは、学習指導要領という学びの「入口」が、学習評価という学びの「出口」とつながったことです。これまでは、学習指導要領で示されていた指導の目標や内容と、その指導の結果として、どのような力がどのくらい身についたかを測る評価の観点が一致していない部分が見られました。2つめは、評価の観点が、すべての教科等で統一されたことです。これまでの学習評価は、4観点を中心に、5観点だったり、3観点だったりと、教科によってばらばらでした。それが3観点に統一され、学習指導要領上の記載、教科等ごとのバラツキが小さくなりました。

その2つの変化によって、これからの学び(指導)で育成したい資質・能力や、学び(指導)に対する価値観を、皆がより分かりやすく、はっきりとイメージできるようになりました。教師にとっては、学習評価を具体的な指導改善につなげやすくなります。例えば、教科担任制を採る中学校や高校では、校内で授業研究を進めようとしても、これまでは「自分は〇〇科の専門ではないから」と、積極的に意見を交換しにくい実態がありました。今回、評価の観点を全教科で3つに統一したことで、担当教科によらず、子どもを共通の視点で見取り、意見を交換し合えるチャンスが増えたことになります。実際、教科の違いを超えて活発に意見を交わしながら日々の授業改善に取り組む中学校が増えています。また、評価の観点が分かりやすく示されたことで、「普段の授業を通して、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力を高める大切さを改めて確認できた」「評価の前提となる学習指導要領の趣旨を再確認することで、改訂の意義がよく分かった」といった声も聞かれるなど、2、3年前の様子と比較して、学校での取り組みが着実に前進している様子がうかがえます。

教育活動全体の質を高める、学習評価の4つの機能

新しい学習評価で日々の授業の改善が進むとお話ししましたが、それは、学習評価が持つ「4つの機能」と深くかかわっています。

<学習評価の4つの機能>
1.指導と評価の一体化
2.説明責任の遂行
3.自己評価能力の育成
4.カリキュラムの評価

子ども一人ひとりにどんな力が身についたかを適切に評価できてこそ、次の指導を考えることができますし(1.指導と評価の一体化)、日頃の教育活動の結果を、保護者や地域などに伝えることで(2.説明責任の遂行)、学校の意義や公共性が示されるとともに、学校への信頼感が生まれ、地域に開かれた教育活動が可能となります。日々の授業においては、単元や授業で目指すことを子どもにあらかじめ伝え、その単元や授業での学びが何の力をつけるために行っているのかを自覚させて、その結果がどうだったのかを自己評価できるようにすることが大切です(3.自己評価能力の育成)。さらに、毎時の授業だけでなく、教育課程の編成にも気を配り、工夫を凝らしていくことが、さらなる授業の質の向上につながります(4.カリキュラムの評価)が、その検討・判断材料となるのが学習評価です。

そのように、学習評価は、子どもと教師を中心に、学校全体、保護者・地域と、学校教育にかかわる多くの人々にとって、様々な場面で活用されるものなのです。だからこそ、すべての関係者にとって、妥当性と客観性を備えた評価が必要であり、そうした評価を実現することで、日々の授業を始めとする教育活動全体の質を高めていくことが可能となります。それは、学習指導要領の趣旨を実現することにほかなりません。そして、妥当性や客観性の高い評価を行うために設定するのが、評価規準です。その点については、次回お話しします。

授業と評価が変われば、子どもも必ず変わる

学習評価だけを切り取って取り組もうとすると、新たな負担が増え、働き方改革の動きに逆行すると思われるかもしれません。しかし、働き方改革は、単に業務時間を削減することではありません。限られた時間の中で、することの優先順位とかける時間の比率を考えて工夫することです。優先順位が高いものは一定の時間をかけるべきであり、子どもの資質・能力を高めるために行う学習評価は、優先順位を高めるべきもののはずです。むしろ、資質・能力の話と学習評価の話を表裏一体のものとして一緒に動かせば、負担感の軽減につながるのではないでしょうか。授業自体も、評価を見据えながら一体的に創意工夫を凝らすことで、授業改善自体が評価の改善につながります。そうした「つながる」感覚を持てれば、教師の負担感も減ることでしょう。

教師にとって、授業と評価が変わることの最大の魅力は、何といっても目の前の子どもが変わることです。これまでの指導を変えてみることで、やる気がなく突っ伏してばかりいた子どもが、身を乗り出したり、目を見開いたりしたらどうでしょう。子どもの発言の質が高まってきたらどうでしょう。それは、子どもにとっても、教師自身にとっても、前向きなwin-winの状態ではないでしょうか。指導と評価が変わり、子どもが変わり、さらに授業がよくなっていく――

もし、日々の授業や子どもの様子に閉塞感を感じている教師がいれば、そういった教師ほど、学習評価を踏まえた授業改善はよいチャンスだと思います。今回の学習評価や学習指導要領の世界観を取り入れた指導を試みることで、新たな景色が見られると信じています。そうした変化を受け入れる土壌が、現在の学校現場にはできつつあると感じています。

田村学(たむら・まなぶ)

國學院大學 人間開発学部 初等教育学科 教授

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