西島 一博

(株)ベネッセコーポレーション ベネッセ文教総研 所長

詳しいプロフィールはこちら

ベネッセ文教総研では、2022年2月上旬~3月中旬に、令和7(2025)年度の高校新課程に対応した大学入試に必要な教科・科目について、大学を対象にしたアンケート調査を行った。

国公私立の783大学(大学院大学・通信制のみの大学は除く)を対象に、大学名を公表しないことを前提として、全体の69%、539大学からの回答があった。大学では入試実務が多忙な時期であったため、次の質問に絞ったアンケートとした。

国立大学協会から「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」が出された直後で、また大学としては入試実務に多忙な時期で検討も進んでおらず、全体に「未定」という回答が多かったが、一定の傾向が見て取れるところもあった。

以後、3回に分けて掲載する。初回となる今回は、利用教科・科目の公表時期と地理歴史・公民について報告する。

問1 貴学の令和7年度(2025年度)入試の利用教科・科目の公表時期の予定をお聞かせください。

令和3年7月30日に出された文部科学省から大学等に対する通知で、「新学習指導要領に対応した(中略)個別学力検査及び大学入学共通テストの教科・科目の設定等については、(中略)2年程度前を待たず、可能な限り早期に検討し、予告・公表する」こととされているが、原則が「2年程度前」までの公表とされているため、令和5年3月までに公表すればよいと考えている大学が国公私立を問わず一定数ある。

多くの高校で、2年次から文系・理系別クラス編制や地理歴史・公民や理科等における選択科目での授業が行われる。2年次の文理・科目の選択は、1年次の夏前後から考え始め、11~12月ごろには決めるのが一般的である。1~3月に予告・公表された場合、高校生は、意中の大学・学部の入試科目がわからない不安の中で意思決定をしなければならない、ということになりかねない。「未定」の大学はもちろん、令和4年10月以降に予告・公表を予定している大学には、ぜひ夏頃までの公表ができないか、ご検討いただきたいところである。

問2 共通テストの『地理総合、歴史総合、公共』は2単位の科目2つを選択することになりますが、その選択の可否について、現段階での貴学のご予定をお聞かせください。私立大学の場合は、共通テスト利用入試についてお聞かせください。

『地理総合、歴史総合、公共』は地理歴史・公民の中の必履修科目3つのうちから2つを選択解答する、という出題科目である。

こちらも「未定」が多いが、「全学で選択できない方向で検討」という大学が一定数あることに注目したい。現行課程の共通テストで「世界史A」「日本史A」「地理A」といった2単位の基礎的な科目を選択できない大学・学部があるが、同様の判断になることが多いのではないかと考えられる。

問3 個別試験の日本史、世界史に「歴史総合」を出題科目として含めますか。

新設科目「歴史総合」は日本史、世界史の両方の観点が融合された科目である。現在の高2生は学習していないため、上の問2の解説にあるように『歴史総合、日本史探究』のような出題をする共通テストでは、既卒生対応として、高2生が学習している「日本史A」「日本史B」も出題される。

個別試験でたとえば『歴史総合、世界史探究』という出題科目になると、既卒生で日本史を選択していない受験生にとっては、高校で学習していない内容が出題されることになってしまう。大学独自に既卒生対応問題を別に作るのはとても大変であるため、「全学で出題科目として含めない方向で検討」というのが主流になるのではないかと考えられる。

一方、「全学で出題科目として含める方向で検討」という大学もあり、既卒生にとっては受験しづらい入試になってしまうかもしれない。入試の変わり目ではいつものことだが、現在の高2生の大学入試では安全志向が強く働くことが予想される。

 

次回、「令和7(2025)年度 新課程入試科目に関する大学アンケート結果報告(2)」では、数学、情報に関する結果について報告する。