勉強時間を増やす前に、確かめたいこと

「今日はちゃんと勉強したはずなのに、思ったよりできていない」。

そんな経験はないでしょうか。

机に向かった時間は長く、予定していた範囲にも取り組んだ。それでも問題を解いてみると、理解できていないところが次々に見つかる。このようなとき、原因は単に勉強時間が足りなかったことではなく、自分の学習の状態を正しく捉え、次の行動を調整できていなかったことにあるかもしれません。

ここで重要になるのが「モニタリング」です。モニタリングとは、自分の学習の進み具合や理解度などを確認することです。自己調整学習を支える重要なプロセスとされており(Zimmerman & Schunk, 2014)、モニタリングを支援することが学習成果の向上につながることも示されています(Dignath et al., 2023)。

例えば、「どこまで理解できたか」「どこがまだ曖昧か」「どのくらい集中できたか」と、自分の学習の状態を確かめることもモニタリングです。

ただし、頭の中だけで考えると、「まあまあできた」「なんとなく分かった」といった感覚に流されがちです。勉強した時間やページ数だけで満足し、肝心の理解度を見落としてしまうこともあります。

「何を」と「どう」を書くと、学びが見えてくる

そこで効果的なのが、モニタリングした内容を記録することです。学習日誌や記録シートを使い、「何を学んだか」という学習内容と、「どう学んだか」という学習行動の両方を書き残します。文字にすることで、自分が何を理解し、どのように学んだのかを確認しやすくなります。

記録する項目は多くなくてかまいません。今日理解できたポイント、まだ説明できないところ、使った勉強法、集中の度合い、時間の使い方などを短く書くだけでも、次に何をすべきかが見えやすくなります。例えば、「数学を40分勉強した」だけで終えず、「例題は解けたが、公式を使う理由は説明できない」「講義動画を見たあとに問題を2問解いた」と残せば、時間だけでは分からない学習の質が見えてきます。

モニタリングを支援するツールの効果をまとめたメタ分析では、学力に対して中程度の効果(d=0.42)が確認されており、さらに、「学習行動」だけをモニタリングするよりも、「学習内容」と「学習行動」の両方をモニタリングする方が、効果が高いという結果も示されました(Dignath et al., 2023)。「何が分かったか」だけでなく、「どのように学んだか」まで確かめることが大切です。

一言の記録を、次の勉強につなげる

もちろん、学習記録を丁寧に作ること自体が目的ではありません。毎回長い文章を書こうとすると、記録が負担になり、続かなくなります。

まずは学習を終えた直後に、「今日は何を、どのようにやったか」「どこが難しかったか」を一言ずつ書くだけでもよいでしょう。大切なのは、きれいにまとめることではなく、自分の状態を確かめる習慣をつくることです。

慣れてきたら、最後に「次はどうするか」を加えてみましょう。

「分からなかった用語を調べる」「同じ形式の問題を3問解く」「動画を見直す前に、まず自分で説明してみる」など、次の一歩を具体的にします。すると、記録は単なる振り返りではなく、次の学習を決めるための材料になります。

学習の成果は、勉強した量だけで決まるわけではありません。自分の理解や行動に注意を向け、必要に応じてやり方を変えることが、学習の質を高めます。「頑張ったはずなのに」と感じたときこそ、時間を増やす前に、まず今の学びを見える形にしてみてはどうでしょうか。

キーワード 「何をやったか」だけでなく「どうやったか」を記録し、自分の学習を見える化することで、学習の質を高める。

参考文献:

Zimmerman, B. J.・Schunk, D. H.(編)(2014)塚野州一・伊藤崇達(監訳)『自己調整学習ハンドブック』北大路書房.

Dignath, C., van Ewijk, R., Perels, F., & Fabriz, S.(2023)Let Learners Monitor the Learning Content and Their Learning Behavior! A Meta-analysis on the Effectiveness of Tools to Foster Monitoring. Educational Psychology Review, 35, 62.

森下みゆき

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員

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