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新世代toi-time 第11回テーマ「『分かりやすい授業』を実現するために、私たちができること」
問い「分かりやすい授業」を実現するために、どのようなことに取り組むべきですか?

2026/04/20 08:30

K先生からの問い
「分かりやすい授業」を実現するために、どのようなことに取り組むべきですか?

コラム執筆者

福岡県立春日高校
徳永拓也(とくなが・たくや)

「授業が一番大事」。中堅になり、校務や家庭の責任が増える中、最近改めてこの言葉の重みを痛感しています。授業が上手くいかなければ生徒との信頼関係は築けません。今でも「今日は本当に上手くいった」と思える日は年に数回ですが、試行錯誤の末に生徒と「楽しい」と思える授業の時間は増えてきました。私の経験が、授業に悩む皆さんのヒントになれば幸いです。

まずは徹底的に「まねぶ」ことから

初任の頃の私の授業は、教科書をなぞって板書するだけの「絶望的」なものでした。「これなら教科書を読めば済むのでは?」と自問自答する日々。
特に苦手意識があった英文法指導については、私は有名な予備校講師の教材を買い漁っては、通勤中に台詞を覚えるほど繰り返し聞き込みました。
そうして「これはよい」と思った指導法を模倣し実践すると、生徒の食いつきは劇的に変わりました。その後、同僚の先生方の技も「いいとこ取り」しながら、自分なりの形を模索し続けました。

「生徒の視点」を鏡にする

私は定期考査ごとに、全生徒を対象とした記述式の授業アンケートを実施しています。その結果を読むたびに、教壇からの景色と、生徒から見えている景色は全く異なることを痛感します。
板書の文字や配色、話すスピード、内容の詰め込みすぎなど、耳が痛い意見もありますが、それらを一つずつ検討することで、授業は確実に生徒に寄り添ったものへと変わります。
また、良かった点も書いてもらうことで、自分の強みに自信が持てるようになります。分かりやすさを判断するのは、あくまで生徒。彼らの声こそが、授業を磨く最良のガイドです。

「その一手間」が信頼を築く

多忙になると授業準備がおろそかになりがちですが、やはり準備の密度は授業の質に直結します。私が大切にしているのは、「自分の中に疑問点を一つも残さない」ことです。
例えば英語の長文なら、文構造だけでなく、背景にある経済用語や地理的知識まで徹底的に調べます。さらに類義語や語源など、生徒が自分で調べると時間がかかる「プラスアルファ」の情報を整理して提供します。「その一手間がI LOVE YOU」の精神で、生徒の知的好奇心に先回りして準備することが、授業へのワクワク感を生むのです。

また、教える内容が変わらない項目はパワーポイント等で資料化し、資産として残すことも大切です。一度仕組みを作れば、その分、他の教材研究に時間を割けるようになります。

最後に:分かりやすさの先にあるもの

一方で、「分かりやすすぎる授業」が正しいのかという思いもあります。説明が完璧すぎると、生徒が「分かった気」になってしまい、自ら考える力を奪う恐れがあるからです。

理想は、分かりやすさで知的好奇心をくすぐりつつ、あえて「少しの余白(分からないこと)」を残し、生徒を自学や探究へといざなう授業です。まずは先人の知恵に学び、周囲の声を聞き、徹底的に準備すること。

そうして築いた土台があってこそ、生徒と共に笑顔になれる豊かな時間が生まれるのだと信じています。

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