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新世代toi-time 第10回テーマ「デジタルとアナログ――思考の解像度を上げる『使い分けのモノサシ』」
問い「デジタルとアナログをどう使い分けるとよいか」

2026/03/31 12:00

J先生からの問い
学校現場ではICTの活用に力を入れていますが、入試や特定の成果物については手書きの方が効果的だと思う場面もあります。そういった点について、どのように使い分けをするとよいでしょうか。

コラム執筆者

北海道・私立旭川明成高校
佐藤卓也(さとう・たくや)

1.ICT全盛期の今だからこそ、「あえての手書き」という戦略

素敵な「問い」をありがとうございます。ICTの波が一気に押し寄せる中で、恐らく多くの教師が一度は立ち止まって考えたことのあるテーマではないでしょうか。現在、私は37歳。情報科担当の教師としてデジタルにどっぷり浸かりつつも、アナログの価値を再認識している一教師として、私が日々感じている「使い分けのモノサシ」について整理してみたいと思います。

2.【思考を深める】あえて「低速」で脳を揺さぶり、イメージを具現化する

まず、私の「肌感覚」として明確にあるのが、「ゼロからアイデアを生み出す時や自分と深く向き合う時は、手書きが勝る」という実感です。

例えば、部活動の目標設定や学習計画を立てさせる場面では、キーボードに向かって文字を打ち込むよりも、紙とペンを使って手を動かしている時の方が、生徒の脳が活性化しているように見えます。

「どんなチームにしたいか」「自分はどうなりたいか」といった抽象的なイメージは、手書きの「遅さ」が思考のテンポとかみ合います。時間をかけて考えれば考えるほど具体的なものとなり、高い解像度、そしてフルカラーでイメージができるようになります。

ちなみに私自身、スケジュール管理はいまだに紙の手帳で行っています。デジタルは検索性には優れていますが、画面の枠に縛られます。紙の手帳をパッと開き、全体を俯瞰する。そうすることで、予定の「点」ではなく、全体の流れという「線」や「面」が見えてくる。深くじっくり考える基盤をつくるには、やはりアナログの力が必要です。

3.【実務を広げる】デジタルの「作法」を武器に、社会と同期する力を養う

一方で、ICTの恩恵も計り知れません。グラフや写真を用いて作成した資料の「見やすさ」、データの「客観性」において、ICTは最強の武器です。また、昨今は検定試験や模擬試験など、あらゆる試験でCBT(Computer Based Testing)化が進んでいます。その流れが今後さらに加速すると考えると、社会に出た時の「効率的な実務」を見据え、デジタルの作法を生徒に身につけさせることも、私たち教師の大切な使命です。

4.【相手に届ける】伝達の「効率」か、感情の「熱量」か。最適な手法を選択させる

以前、授業で生徒がプレゼンテーションを行った際、ICTを駆使して洗練されたスライド資料を作る生徒と、手書きの紙芝居で発表する生徒がいました。

 ・前者は「情報の伝達の効率」を優先し、受信者に伝えたい内容をスムーズに落とし込んだ。
 ・後者は「情報に温かさ」を乗せ、受信者の感情を揺さぶった。

結果としてはどちらも素晴らしい発表でした。「情報を正確に伝えたいならICT」「思いを熱く伝えたいなら手書き」といったように、生徒自身が今の自分に最適な情報処理・伝達方法を考え、武器を選択できる力を育てることが重要です。

5.まとめ

「情報」というものは、発信する人と受信する人がいて初めて伝わるものです。デジタルで整えられた情報は不要なノイズが削ぎ落とされている分、受信側にはスムーズに内容が伝わりやすくなります。一方で、アナログの情報には書き手の熱量がダイレクトに反映されやすく、受信者の深い理解を促します。

「情報を整理して伝えるデジタル」と「人の温かさを伝えるアナログ」。その両方を大切にできる感性豊かな生徒を育てるために、「ここはじっくり脳を揺さぶりたいから紙」「ここは効率重視でICT」などと、その使い分けの判断を思い切ってやってみてはいかがでしょうか。

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