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新世代toi-time 第3回テーマ「『課題に立ち向かえ』と言いづらい時代における忍耐力の育て方」
生徒に求める前に――大人に置き換えて課題を考える

2026/02/01 12:00

C先生からの問い
生徒の忍耐力の育成について悩んでいます。トラブルの根本を解決するよりも、逃避することを選ぶ生徒が多い印象です。私としては「課題に立ち向かえ!」と思いつつも、教師からはそういったことを強く言えない現状もあり、生徒への声かけで迷う時が多々あります。先生方はそのことについてどのように感じますか。

コラム執筆者

東京都・私立多摩大学附属聖ヶ丘中学高校
出岡由宇(いずおか・ゆう)

大変難しい問いをありがとうございます。私たちの学校が普段の指導で心がけ、共有している考え方を中心に回答させていただきます。
結論から申し上げると「強く言う必要は全くない」と思います。その理由と、その上での対応方法の例を示させていただきます。
本校は教師間で何かを議論する際、学習面のことではなく、今回いただいた問いのような、いわゆる「生活上のマインド」に関することはすべて、「大人に置き換えて考えるとどうか」という視点から立脚して考えるようにしています。今回の例で言えば、「トラブルの根本を解決するよりも、逃避することを選ぶことが多い印象」である生徒を、大人に置き換えてみた時にどんな印象を受けるか、ということから考え始めるイメージです。
さて、どうでしょう。意外と大人においても似た状況が想像できるのではないでしょうか。なんとなく先送りにしてみたり、面倒だから若手に振ってみたり、逆に管理職やベテランのせいにして責任逃れをしてみたり、分からないから〇〇さんに聞いてみたら?と、他の教師に相談するように促してみたり…。困難を目の前にして「よーし、向き合うぞ!」と「ギアをすぐに上げられる人」はそれほどに多くない気がします。仮に質問者様がそういう人だったとして、トラブルの根本を解決せずに逃避しようとする大人たちに対して何をどう伝え、その改善を求めますか。
教師という仕事は、民間企業の働き方と違い、自身の一挙手一投足が子どもたちに還元され得る大切な仕事です。しかし、気づけば大人になった立場の私たちが、子どもたち「だけ」に課題に向き合うことを要求している、なんていうことも起きがちです。
大人が自信を持って言えないことであれば、子どもたち「だけ」に強く言う必要はない。これが、私が冒頭に述べた結論の理由になります。

では、質問者様の悩みはどのような手順で解決するのがよいかについて、私の考えと本校での実践例を交えてお伝えさせていただきます。

生徒と教師が共に守る理念をデザインする

私は、生徒と教師が「なぜルールが必要なのか」を考える行為が極めて重要だと考えています。教師が生徒に守らせたいルールには、「こんな人間に成長してほしい」という願いが込められているはずです。そこを大切に、大切に伝えてほしいのです。そして、伝えた以上は教師がその思いを常に意識することが重要です。そうすると、立場こそ違えど時間を共にする教師と生徒の間に、互いに意識すべきルールの先が生まれるはずです。本校ではこれらをまとめ、箇条書きにしたものを職員室や教室に掲示して、本校で過ごす全員が大切にするよう努めています。
今回の質問でも「なぜ課題に立ち向かわせたいのか」の部分がとても大事だと思います。加えて、「それは大人でも簡単ではない」という前提に立つことも重要です。そして共に考えた先に生まれた本質部分を、教師と生徒が大切に共有し合うことができる環境を作ることが、子どもの前に立つ者としてふさわしい振る舞いだと信じています。

子どもに要求するのであれば、まず大人が率先して実践する。そしてその輪を可視化して広げていく。とても面倒で時間のかかる大変なプロセスですが、それを大切にすることが、多様性に富んだ今の時代の教育にとって、なんだか重要なことのように感じています。

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