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新世代toi-time 第6回テーマ「授業規律の確立」
問い「関係性が築けていない生徒に対して、どのように授業規律を指導したらよいか」

2026/03/02 12:00

F先生からの問い
教科担当者として、特に年度初めは関係性が築けていない生徒に対して、どのように授業規律を指導していけばよいですか。

コラム執筆者

市立札幌藻岩高校
對馬光揮(つしま・こうき)

1.求めることは絞り、生徒の声に耳を傾ける

改めて、大切にしなければならない「問い」をありがとうございます。
「教師と生徒の信頼関係」が授業規律の確立に向けた最たるものだと思いますが、G先生の問いにあるように、まだ生徒との関係性を構築できていない段階での指導や支援は難しいものですよね。
授業規律の確立に向けて、私が大切にしていることは「求めることは絞る」「生徒の声に耳を傾けること」の2点です。そこで、私が1年生を担当した時と、それまで関わりのなかった3年生を担当した時の授業実践を例示しながら、いただいた「問い」に対して私なりの考えを述べたいと思います。

2.求めることは絞る――譲れないラインを明確にする

授業開きの際、私は「絶対に譲れないこと」を2点に絞って生徒に伝えるようにします。それは「他者をリスペクトすること」と「締切を守ること」です。それ以外は「この空間は先生のものではなく、生徒みんなのものだから、気持ちのよい空間をみんなでつくってね。」と伝え、基本的には生徒に委ねるようにしています(余談ですが、日頃から私は、教師の発言回数が、生徒たちの発言回数を上回らないように意識しています)。
「この人と関わる時、このラインは踏み越えてはいけないんだな」ということを押さえながら人と接することは、社会で生きていく上でも大切なことです。ただし、そのラインがたくさんあったり、ブレてしまったりすることは問題なので、「求めることは絞る」「相手がそのラインを踏み越えた場合には毅然と対応する」ということを私は意識しています。その上で、こちらが譲れないこと以外は基本的に生徒に委ねるというのが私のスタンスです。基本的にあれこれ言わないからこそ、いざという時には、生徒はこちらの声に耳を傾けてくれるはずだと信じています(そうならないこともありますが)。

3.生徒の声に耳を傾ける――先に聴くからこそ、こちらの声が届く

教師の声に耳を傾けてもらうためには、まずは「教師が生徒の声に耳を傾ける」必要があると私は考えています。そのため、年度の最初の授業では、教師が生徒一人ひとりと向き合うことができるような単元を実施するようにしています。
私は国語を担当しているのですが、直近でいえば1年生の授業を担当した際、最初の1か月は「何のために『学び』はあると思いますか?」という問いを基に授業を行いました。この問いには絶対的な答えはありません。だからこそ、クラス全体に向けて意見を聞いた時に、生徒が発言したすべての回答に「いいね!」と全肯定しました(ただ肯定するだけではなく、「その考えだったら、こういう方向性も考えられないか?」というように、必ず問いを投げかけるようにしていました)。最終的にはこのテーマで小論文を書いてもらい、全ての生徒の小論文にコメントを入力して返却しました。誰にでも当てはまるようなコメントではなく、「あなたが書いたことに対して、あなただけへのコメント」を書くように意識しました。
また、昨年度はこれまで関わりのなかった3年生に授業をすることになったので、年度の最初の授業では「各段落を短文・単文に置き換えた後、それらを接続して文章全体を要約する」という単元を実施しました。それも生徒との関わりが非常に多くなる学習活動の1つです。各段落を短文・単文に置き換えることができた生徒には直接、「この段落はいいね。この段落はちょっと惜しいかも」と、一人ひとりに声をかけてやり取りを重ねました(学習の進捗状況に差が生まれるので、個別の対応が可能になります)。その単元は前半で教師との密なやり取りを重ねることができるため、最終的には全ての生徒が完成度の高い要約を作ることができます。要約が完成した際は再度私のところに来てもらい、「完璧!」と一人ひとりを絶賛して席に戻ってもらいました。
小論文のコメント返却にせよ、要約の添削にせよ、それらは正直かなりの労力を要する仕事です。それでも、最初の時期は生徒一人ひとりとコミュニケーションを取ることができる単元を実施し、受容的で肯定的な雰囲気を作りながら、「この先生は話を聞いてくれそうだな」「私に向けて言葉を投げかけてくれる」と思ってもらえるような授業を目指しています。この地道な積み重ねが、授業規律の確立に結びつくはずだと私は思っています。

4.規律から外れた行動にどう向き合うか――即断しないという姿勢

「求めることは絞り、提示している譲れないラインを踏み越えた場合には毅然と対応する」「生徒の声に耳を傾ける」という2点が押えられていれば基本的にはうまくいく気がするのですが、各クラスに1~2人は規律の外で活動してしまう生徒もいます。F先生もご経験があるかもしれませんが、例えば授業中に寝てしまう生徒はいますよね。私は、寝ている生徒をよしとしません。なぜなら、それは私が譲れないことの「他者をリスペクトすること」に反しているからです。人が話している時に寝るということは、その人の存在を無視していることに他ならないので、私は授業中に寝られることを許容しません。
ただし、「授業中に寝ている=他者をリスペクトしていない」と安直に結論を出すことはできません。というのも、「その日はたまたまその生徒のコンディションがよくなかった」など何かしらの理由があって寝ている可能性もあるからです。先ほどは「寝ている生徒をよしとしない」と言いましたが、正しくは「他者へのリスペクトを欠いて(その授業を無価値なものだと判断して)寝ている生徒をよしとしない」というのが私の考えです。したがって、授業中にコクリコクリとうたた寝をしている生徒がいても、しばらくは様子を見ますし、授業後に「最近疲れていない? 大丈夫?」と声をかける程度で済ませています。ただし、それが2回、3回、4回と日をまたいで続くようであれば、私は見過ごしません。

5.うまくいかない時こそ、声を聴く――個別対応の意味

そしてここからが私の最も伝えたいことになりますが、譲れないラインを生徒が踏み越えた場合(教師側としては「うまくいかない時」と言えますが)、その時にも大切なことは、やはり、「生徒の声に耳を傾ける」ことだと私は思います。何回も授業中に寝ている生徒がいた場合には、個別に呼んで事情を聴きます。特に理由がなく何度も寝ていたのであれば、先ほど述べたような理由を添えて「それは私の譲れないラインだから、気をつけて」と伝えます。
一方で、何かしらの理由があって寝てしまう生徒もいます。非常に真面目な生徒にも関わらず、ある時期から急に授業中に寝てしまうことがありました。真面目だということは誰しもが分かっているような生徒だったので、私も「コンディションが悪いのかな?」と思う程度で、特に注意することもなく、しばらくはそっとしていました。しかし、あまりにもそういったことが続くので、個別に呼んで事情を聴いてみました。
その生徒は「本当にすみません。私の意識が足りませんでした」と申し訳なさそうに言ってうつむいていました。何を聞いても「本当にすみません。今後は気をつけます」と言うだけなので、これはおかしいなと思い、本音を話してもらえるまで時間をかけて粘り強く待つことにしました。すると、ようやく教えてくれたことなのですが、ある教科で毎日宿題が出ており、その生徒は真面目がゆえに完璧に終わるまで手を抜こうとせず、夜中の3時まで机に向かって勉強している、ということが分かりました。「私の頑張りが足りないだけなので……」と言っていましたが、「一緒に教科担当の先生に相談しよう」と伝え、担任に断りを入れたうえで私から保護者の方にも電話で事情を説明し、教科担当のご尽力もあって対応することができました。
その後、その生徒はパンク寸前のところから回復し、生活リズムを取り戻して授業中に寝ることもなくなりました。もし、授業中に寝ているという出来事だけを見て一方的に注意していたら、事態は悪化していたかもしれません。一方で私の反省点は、コンディションが悪いだけだと思い込んでしばらくそっとしておいてしまい、その生徒への声かけが遅れてしまったことです。いずれにせよ、この経験から改めて「生徒の声に耳を傾ける」ということの重要性を実感しました。

6.規律は管理からではなく、関係性の結果として立ち上がる

生徒に授業規律を求める以上、自分自身もそれを大切にする人間でありたいと私は思っています。それは完璧さを求めるということではなく、ある程度の余裕と軽やかさを持ちながら、「誠実な態度で人と(生徒にも、保護者にも、同僚にも、自分自身にも)接する」ということです。
求めることは絞り、譲れないことはしっかりと伝え、そのラインを踏み越えた場合には毅然と対応し、生徒の声に耳を傾けながら、1人の人間として誠実に接する。そのようにして信頼関係を構築しながら、生徒とともに授業規律を確立していきたいと私は思っています。

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