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Benesse Report データで教育を読む

第31回
子どもの経験と 家庭環境・学習意欲との関連

2026/07/15 09:30

家庭環境や地域環境により、子どもの学校外での経験に差が生じているという課題に関心が高まっている。今回は子どもの学校外での経験と家庭環境及び学習意欲との関連をデータから読み解いていく。

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出典

「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」

東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で立ち上げた「子どもの生活と学び」研究プロジェクトによる調査。小学1年生〜高校3年生までの親子約2万組を対象に2015 年から毎年実施。子どもの成長のプロセスとそれに影響を与える要因を明らかにしている。本報告は2025 年までの調査結果による。

◎詳細は下記ウェブサイトをご覧ください。https://benesse.jp/berd/special/childedu/data/#oyako

データ解説

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員
岡部悟志(おかべ・さとし)

本調査のほか、大学生を対象としたパネル調査(縦断調査)にもかかわる。子どもから大人への移行段階にある青年期の発達・成長プロセスに関心を持ち、研究を進めている。

1 家族旅行や自然の中での遊びなど、「外の世界に触れる経験」が増加傾向

良好な親子関係が子どもの経験にも影響

図1は、子どもの1年間の経験のうち、「外の世界に触れる経験」の上位4項目を示したものだ。

図1 子どもの1年間の経験

いずれの項目もこの10年間で維持・増加傾向にあり、子どもが外の世界により多く触れるようになったことがうかがえる。なお、「家族で旅行をする」「地域の行事に参加する(夏祭りなど)」は、2022年調査で大幅に減っているが、それはコロナ禍によって外出の自粛や人が密集する活動の縮小・中止があったことの影響が大きいと推測できる。

注目したいのは、「家族で旅行をする」や「親から仕事の楽しさや大変さを聞く」といった家族との経験が、いずれの学校段階でも増加傾向にあることだ。本調査では親子間の会話の状況についても分析しているが、この10年間で父親・母親ともに、普段の会話が子どものとの間で増えていることが分かった(*1)。親子の良好な関係性が、子どもが家族とともに行う経験の増加につながっていると考えられる。加えて「親から仕事の楽しさや大変さを聞く」については、働く母親が増え、母親からも仕事の話を聞けるようになったこととも関連がありそうだ。

「地域の行事に参加する」は高校生で4割だが、堅調に推移している。その背景には2022年度から実施された現行の学習指導要領が挙げられる。総合的な探究の時間の導入によって学校と地域との連携が進み、高校生が地域で活動する機会が増えたことが影響していると考えられる。

*1 親子の会話に関する調査結果の記事は、本誌2025年度Vol.1の本コーナー(P.23-24)に掲載しています。

2 家庭の豊かさが経験の差につながり、経験の差が学習意欲にも影響

小学生は経験の差が学習意欲に強く関連

子どもの学校外の経験は家庭の豊かさとどのような関連があるのだろうか。図2は、家庭の社会経済的地位(以下、SES)別に経験の比率を集計した結果だ。

図2 子どもの1年間の経験 家庭の社会経済的地位(SES)(*2)別(2025年)
※ポイントの差〈P〉は「H層」−「L層」の数値。

*2  家庭の社会経済的地位(Socio-economic Status、以下、SES):世帯収入や保護者の学歴・職業などから作成された家庭の経済的 ・文化的豊かさを表す指標。本調査では、SESを低い方から順に約25%ずつ、L層(Lowest SES)、LM層(Lower middle SES)、UM層(Upper middle SES)、H層(Highest SES)の4つのグループに分けて集計した。

SESによる差が小さかったのは「地域の行事に参加する(夏祭りなど)」「親から仕事の楽しさや大変さを聞く」であり、差が大きかったのは「家族で旅行をする」「自然の中で思い切り遊ぶ」だった。特に「家族で旅行をする」は、H層とL層で約15〜21ポイントの開きがあった。「自然の中で思い切り遊ぶ」についても、居住地によっては遠出が必要になるためか、SESによる差が見られる。

次に、経験の数と学習意欲との関連を分析したところ、いずれの学校段階においても、経験の数が少ないほど学習意欲が低い傾向が見られる。特に小学4〜6年生では「経験なし」と「4つ経験」との間に19.6ポイントもの開きがあった(図3)。

図3 子どもの学習意欲 子どもの経験の数(*3)別(2025年)
※ポイントの差〈P〉は経験が「なし」−「4つ」の数値。

*3 4つの経験は、図1で示した4項目を指す。

要因としては、自分だけで行動できるようになる中高生に対して、保護者とともに行動することが多い小学生は行動範囲も限られるため、外の世界に触れる経験の差がより表れやすいのだと考えられる。

以上のことから、特に小学校段階では子どもの学校外の経験において、学校の役割や自治体の支援が重要だと考えられる。働き方改革により、学校行事を精選する動きがあるが、自校が育てたい子ども像と照らし合わせながら、家庭環境によって経験の差が出やすい宿泊行事など、残すべき行事を見極める必要がある。保護者や地域と連携し、多様なキャリアを持つ人材から「仕事の楽しさや大変さ」を聞く機会を設けることなども、子どもの経験を豊かにする上で有効だろう。自治体が公共施設などを活用し、体験型イベントを実施することも一案だ。子どもの経験の差を解消するため、教育委員会はもちろん、自治体全体での取り組みが期待される。

『VIEW next』教育委員会版 2026年度 Vol.2
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