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特集

事例3
教科学習と探究学習との行き来により、 資質・能力の習得と、それらの総合的な活用を図る
愛知県・私立瀬戸SOLAN(ソラン)学園初等中等部

2026/06/15 08:00

「自立し、自律した学習者」の育成を掲げて2021年4月に開校した愛知県・私立瀬戸SOLAN学園(*1)。資質・能力の習得と、それらを総合的に活用する探究学習とを行き来しながら学びを深めていく「5つの学習様式」を開発し、子どもが自分の興味・関心を追究する「個人探究」を軸とした独自のカリキュラムを設計している。

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学校 概要

愛知県瀬戸市の公立小中一貫校の開校に伴って閉校した中学校の跡地を利用し、2021年4月に小学校を開校。2025年4月に中等部を併設して小中一貫校となる。教育課程特例校の指定を受け、探究学習を軸にしたカリキュラム編成や、日本人教員と外国籍教員による2人担任制など、独自の教育を展開。

開校 2021(令和3)年
児童生徒数 約440人(*2)
教員数 65人(うち外国籍教員22人)
学級数 19学級

*1 同校では初等部は1~5年生、中等部は6~9年生としている。
*2 2026年度は1~8年生が在籍。

 

お話を伺った方々

長尾幸彦(ながお・ゆきひこ)

理事長兼校長
教育情報化コーディネータ1級として、全国の教育委員会のコンサルタントを担当した経験を基に同校を設立。

三宅貴久子(みやけ・きくこ)

副校長
公立小・中学校教員、関西大学初等部教員等を経て、開校の準備段階から着任。

横尾圭二(よこお・けいじ)

理事長室長
私立中学校や高校の教員を経て、2022年度に着任

樋口万里子(ひぐち・まりこ)

2年生担任
新卒採用で着任し、現在4年目。

「5つの学習様式」を基に授業をデザイン

愛知県瀬戸市は、名古屋市の中心部から電車で約40分の場所に位置する。私立瀬戸SOLAN学園は、「グローバルシチズンシップの育成」を建学の精神に掲げ、目指す子ども像に「自立し、自律した学習者」を据えて2021年4月、その地に開校した。創立者の長尾幸彦理事長は開校への思いをこう語る。

「先行きが不透明な現代においては、他者から知識を与えられ、覚えるのではなく、主体的に学び、生涯にわたって成長し続けられる力を子どもたちに育みたいと考えました。その目標の達成に向けて、既存の枠組みにとらわれず、カリキュラムや指導体制、施設などはすべて子ども目線でつくりました」

同校は文部科学省の教育課程特例校の指定を受け、子どもが自分の興味・関心を起点とした課題に取り組む「個人探究」を軸にカリキュラムを設計している。学校づくりの中心を担う三宅貴久子(きくこ)副校長は次のように説明する。

「『自立し、自律した学習者』を育成するためには、自分で課題を見つけ、解決方法を導き出し、自ら調整しながら取り組む『個人探究』が必須だと考えました。現行の制度下で個人探究を最大限充実させるためにはどうすればよいか、皆で議論を重ねてカリキュラムを設計しました」

具体的には、学習指導要領で育成が求められている資質・能力を「教科固有のもの」と「汎用的なもの」に分けた上で、「習得」「活用」「探究」の学びの段階に整理し、さらに学習対象や学習目標などの視点から「5つの学習様式」に分類した(図1)。

①スキル・リテラシー 漢字や計算、考える技など、すべての学習基盤となる知識・技能を習得する。
②教科基盤学習+活用 覚えた知識・技能を教科の文脈に沿って活用し、概念的知識や手続き的知識を習得する。
③教科探究(教科型プロジェクト) 教科の見方・考え方を働かせながら、概念的知識や手続き的知識を活用する発展的な課題に取り組む。
④チーム探究(教科横断型プロジェクト) 各教科で習得した資質・能力を総合的に発揮して社会課題などに取り組む。
⑤個人探究 自分の興味・関心を起点とした課題に取り組む。

図1 5つの学習様式

教科学習と探究学習との行き来が、学びの原動力

5つの学習様式において重要なのは、①〜③の教科学習と④・⑤の教科を超えた探究学習とを行き来しながら学ぶことにあると、三宅副校長は語る。

「本校では1年生から④チーム探究や⑤個人探究を行います。学びもスポーツと同じで、知識・技能を覚える練習だけでは子どもは伸びません。覚えた知識・技能を発揮する試合をしてこそ真に身についた力が分かり、自分には何が不足しているかが実感できるため、教科学習にも主体的に取り組むようになります。教員も個人探究での子どもの姿を見取り、教科学習や個別支援に生かしています」

2年生担任の樋口万里子先生は、個人探究が教科学習に取り組む意味を見いだす機会になっていると語る。

「ある1年生が『探究の時間に本をここまでしか読めなかった。1年生の間にもっと読めるようになりたいから、漢字の勉強を頑張る』と言いました。自分の好きなテーマを深める学びがあることで、知識・技能の習得は『やらされる学習』ではない、目的を持った学びになっています」

探究学習の基盤となる教科学習も丁寧に指導している。①スキル・リテラシーは4年生までに集中的に身につけさせ、5年生からは③教科探究の比率を増やしている。

「教科学習では、教科書の内容をページの順番通りにすべて教えるというよりも、教科書を教材の1つと考えて単元計画を立てています」(樋口先生)

一方で知識・技能の定着が不十分な子どもには個別に支援している。1〜3年生では個々の課題に応じたプリントを配布し、保護者と連携して家庭学習の充実を図っている。4〜5年生では家庭学習に加えて、隙間時間や放課後に10分程度のプリント学習に取り組ませ、6年生以上では放課後補習を週2回行い基礎学力を担保している。

1コマの授業時間は学習内容に応じて弾力的に設定。集中力が求められる①スキル・リテラシーを習得するための授業は15~30分間とする一方で、④・⑤の探究学習はじっくり取り組めるように90分間としている。1コマの授業時間が複数あるため、時間割は固定せずに週単位で作成し、子どもと保護者に毎週配布している(図2)。

図2 時間割(例)
「My Time」は子ども自身が活動内容を考え、それに取り組む時間、「My Reflection」は1日 の学校生活を振り返る時間だ。黄色の地色は探究学習の時間。

興味・関心を追究できる環境が主体性や創造性の発揮につながる

個人探究は9年間を4段階に分けて進めている。1・2年生(導入期)は自分の興味・関心を見つけることを重視し、3〜5年生(展開期)でその興味・関心を深く追究する。6〜8年生(充実期)では探究テーマを社会とつなげ、社会貢献を視野に入れた活動を展開。9年生(統括期)ではそれまでの活動を振り返って論文にまとめることで、自身のあり方や生き方を見つめ直す。

個人探究は週1回で、子どもが活動に没頭できるように2コマ続きの90分間を確保している(写真1・2)。

「自分の興味・関心をとことん追究できる環境だからこそ、子どもは主体的になり、創造性を発揮します。探究の過程で学年を超えた高度な内容に興味を持ち、異なる領域に踏み込む中で自分に足りないものに気づき、既習事項に戻って学びを深める。その往還によって知識・技能が統合されて概念化し、思考力なども総合的に発揮されます。それが自己を成長させ続ける力になると考えています」(三宅副校長)

写真1 調べものをする子どもや先生に相談する子ども、友だちと話し合う子どもなど、各自の方法で探究学習を進める。その一人ひとりに教員は寄り添う。

写真2 下級生が自分の学習の参考にできるように、探究学習を支える環境がデザインされた「ラーニングコモンズ」の壁や窓には、高学年の子どもがまとめた個人探究のポスターを掲示。それを見た下級生は自分の個人探究の参考にしている。

探究のテーマは多種多様で、例えば8年生には、自校を社会に広くPRしたいと校章入りのグッズ製作を計画する生徒や、地域活性化を目指して商店街での親子参加型のイベントを企業と連携して企画する生徒などがいる。

探究のテーマが決まらなかったり、途中で失敗したりして、探究が深まらないまま発表を迎える子どもがいても、教員は決して否定せず、子どもの相談にとことん乗り、寄り添い続ける。そうした支援を通じて、子どもはテーマを熟考する重要性を学んでいく。ある8年生は、「昨年度設定したテーマは本当にやりたかったことからずれてしまい、最後まで納得のいく探究ができなかった。今年度は考え抜いてテーマを決めたい」と、失敗を糧に前を向いている。

同校では探究学習を資質・能力を総合的に発揮する場と捉え、「課題解決力」「自己調整力」「コミュニケーション力」「レジリエンス」の育成を目標としている。そのため、毎時間の振り返りでは、「何をしたか」「何を頑張れたのか」「何が難しかったのか」「次の時間はどのようなことを頑張るのか」を端末に入力し、写真などの学習の記録も添付する。教員は入力内容と授業での子どもの様子を照らし合わせて見取り、次の支援に生かしている。

また、同校が採用する4学期制(*3)も、子どもの学びを捉える上で大きな役割を果たしている。横尾圭二理事長室長は次のように説明する。

「教員は3か月ごとに自身の指導を振り返り、軌道修正をすることができます。子どもにとっても、3か月ごとに1~2週間の休みがあることで、適度にリフレッシュして各学期を元気に過ごせます。長期休業中に生活リズムを崩す子どももほとんどいません」

*3 4~6月が1学期、7~9月が2学期、10~12月が3学期、1~3月が4学期。学期間の休業は6月中旬に10日間、8月上中旬に2週間、9月下旬に1週間、年末年始に2週間、3月下旬に2週間設けている。

週2回の校内研修で指導力を磨き、指導の具体を共有

同校の指導の理念や具体を教員間で共有する場が週2回の校内研修だ。放課後に1時間、全教員が集まり、火曜日は「授業力向上」、木曜日は「探究」「ICT」「英語」をテーマに話し合う。

「各教員が自分が実践していることを共有し、具体的な指導方法や子どもを見取る視点を学んでいます。また、探究学習には教科書や指導書が存在しないため、子どもの具体的な姿を基に議論することで、支援の内容を学べるようにしています」(三宅副校長)

教職歴4年目の樋口先生は、「自分が行った授業や活動の意図、見取った子どもの様子などを言語化できる機会が週に2回あり、それに対して他の先生からアドバイスをもらえるのはとても勉強になります」と語る。

探究学習の支援では保護者の存在も欠かせない。同校は入試の合格規準の1つとして、「保護者が建学の理念や指導理念に共感し、パートナーとして学校をともにつくっていこうとすること」と明記している。そのため、有志の保護者が「保護者サポーター」として個人探究の授業に参加し、子どもの相談に乗ったり、自身の専門知識を生かしてアドバイスしたりしている。自分の金融知識を生かして参加している保護者サポーターは、「探究学習で思考力が高まれば、子どもはいろいろな場面で自立・自律して活動するようになるのだと実感しました」と語る。

教員や保護者の支援を受け、子どもは自分の興味・関心をとことん追究し、成果を誇らしく語る(図3)。そうした姿がすべての子どもで見られるように、同校は今後も挑戦し続ける。

「最初は自分の興味・関心が出発点でも、探究を深める中で意識が自然と外に向き、社会とつながります。今後も個人探究を一層充実させて、社会で大きく活躍する子どもを育てていきたいと思います」(横尾理事長室長)

図3「個人探究」子どもの取り組み例

『VIEW next』教育委員会版 2026年度 Vol.1
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