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新世代toi-time 第3回テーマ「『課題に立ち向かえ』と言いづらい時代における忍耐力の育て方」
問い「『課題に立ち向かえ!』と言いづらい時代。生徒へどう声かけしたらよいか」
2026/02/01 12:00
C先生からの問い
生徒の忍耐力の育成について悩んでいます。トラブルの根本を解決するよりも、逃避することを選ぶ生徒が多い印象です。私としては「課題に立ち向かえ!」と思いつつも、教師からはそういったことを強く言えない現状もあり、生徒への声かけで迷う時が多々あります。先生方はそのことについてどのように感じますか。
コラム執筆者

福岡県立筑紫丘高校
徳永拓也(とくなが・たくや)
この問いをいただいた時、胸の奥がずしりと重くなるような感覚がありました。「忍耐力をどう育てるか」――私自身、この数年ずっと悩み続けているテーマだからです。考えては行き詰まり、言葉にしようとしてはまた立ち止まり……。そんな時間を繰り返しました。それでも、少しでも誰かの役に立つなら、と思い、今の私がたどり着いた考えをここに記したいと思います。
「強制」ではなく「心に火をともす」指導へ
私が教師になった15年程前、学校には今よりずっと「厳しさ」があたり前にありました。生徒に対しても、教師間のやり取りでも、強い語調で指導する場面が多くありました。普段の私は声を荒らげるタイプではありませんが、それでも自分を奮い立たせ、威圧的な態度を取ってしまうことがありました。尊敬する先輩が冗談めかして「生徒の成績を上げるために最も手っ取り早い方法は、『怖い』教師になることだよ」と言っていたこともあります。しかし、特にコロナ禍を挟んだここ5年ほどで、そうした「場あたり的な厳しさ」はほとんど通用しなくなりました。強く言えば言うほど、生徒は落ち込んで意欲を失い、関係がこじれてしまう。そんな光景を何度も見てきました。だからこそ今、私たちに求められているのは、内発的動機づけを高める指導だと思います。「やらせる」のではなく、生徒自身の中に火をともすこと。本来、教師の言葉は、生徒が「自らやってみたくなる方向」へ背中を押すものであるべきなのだと思います。それは簡単なことではありません。だからこそ私は今、「どう言えば届くか」「どう話せば心が動くか」「どうすればワクワクして取り組めるか」、そんなことを常に考えながら言葉を選ぶようにしています。もちろん、うまくいかない日もあります。それでも、言葉が届いた瞬間、生徒たちは驚くほど主体的に課題へ向かっていきます。強く言わなくても、です。その姿を見る度に、教師としての原点に立ち返らせてもらっている気がします。
前向きな気持ちになれなくなった経験から見えたこと
私は20代後半に前向きな気持ちになれなくなった時期があります。気持ちが沈み、判断力が弱まり、どうしても前を向けない……。その経験から学んだのは、「体が風邪を引くように、心も風邪を引くことがある」というあたり前で、でも大切なことでした。だから私は、落ち込んで課題に向き合えない生徒や、悩みを抱えている保護者の方に、以前よりずっと寄り添えるようになりました。生徒にも若い先生方にも元気に過ごしてもらいたいと思いますし、「追い込む指導」ではなく、「生徒が自ら動けるようになる指導」とはどういうものか、を探し続けています。
教師自身が「向き合う姿」を見せること
私の勤務校は学校行事がとても盛んです。体育祭のリーダーを務める生徒たちは、誰に言われなくても自分から困難に向き合い、見違えるほど成長していきます。そうした「向き合わざるを得ない場面」をどう設計するかは、忍耐力の育成にとって大切な視点だと感じています。
そしてもう1つ。私たち教師自身が、日常の中で「向き合っている大人」であること。歳を重ねるほど、新しい挑戦から遠ざかりがちになります。ですが、そんな私たちが「格好悪くても挑戦し続ける姿」こそ、生徒にとって身近なロールモデルになるのではないでしょうか。向き合う大人の背中は、言葉以上に強く、生徒の心に火をともします。だから私は、これからも学び続け、挑戦し続ける姿を、生徒たちに見せていきたいと思っています。

