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特集

事例2
自ら問いを立て、学びを深める教科学習で「未知に挑む」子どもを育む
福島県・福島大学附属小学校

2026/06/15 08:00

2025年度まで、「総合的な学習の時間」において子どもが自ら設定した課題に取り組む個人探究を実践してきた福島大学附属小学校(*1)。教科学習でも最適解・納得解の追究を軸にした授業を実践している。例えば4年生の国語では、和歌を題材に昔の人のものの見方や感じ方を読み解く授業を、6年生の体育では、マット運動発表会に向けて自律して活動する授業を行った。

*1 同校は2026年6月26~28日に開催される「日本生活科・総合的学習教育学会 第35回全国大会(福島大会)」の会場校の1つであり、6月27日に公開授業・授業研究を実施する予定。

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学校概要

教育目標は「未来の可能性に向かって愛と英知をもち たくましく前進する 創造性豊かな人間の育成をめざす」。2024年度から研究主題を「未知に挑む」として、教科学習や「総合的な学習の時間」の研究に取り組む。2027年4月、附属中学校と統合して義務教育学校となる予定。
開校 1880(明治13)年
児童数 約610人
教員数 51人
学級数 20学級

お話を伺った方々

副校長
青田伸一(あおた・しんいち)

同校に赴任して2年目。

探究部部長
福永祐一郎(ふくなが・ゆういちろう)

体育科。3学年担任。同校に赴任して4年目。

教育研究部部長
髙橋正充(たかはし・まさみつ)

国語科。1学年担任。同校に赴任して5年目。

子どもが感じた「ずれ」を起点に、和歌を読み解く

福島大学附属小学校は2024年度から、「未知に挑む子ども」を「答えが1つではない問いに向き合い、考え続ける子ども」として授業研究に取り組んでいる。「探究」を「一人ひとりの子どもが答えが1つではない問いを持ち、目的や状況を踏まえながら試行錯誤を重ね、他者との対話や考察を通して最適解や納得解を追究し続けること」と定義。2025年度は、3〜6年生の「総合的な学習の時間」(以下、総合学習)では各自が設定した課題に取り組む個人探究を、各教科では最適解・納得解の追究を軸とした授業を展開してきた。

例えば4年生の国語では、百人一首の和歌を題材に昔の人と現代の人のものの見方や感じ方の共通点・差異点を見いだす活動を行った。和歌の単元における4年生の目標は、言葉の響きやリズムに親しむことだが、5年生の目標である「昔の人のものの見方や感じ方を知る」という概念化を見据えて本単元を設計した(図1)。

図1 4年生 国語「ことの葉タイムトラベル〜和歌の言葉から、昔の世界をのぞこう〜」

まず、単元の導入で秋を題材にした2首の和歌(*2)を読み比べた。すると子どもから、「同じ秋でも一方は自分たちの感覚と似ていて共感できるが、もう一方は詠み手の感じ方に納得できない」という声が上がった。そのずれを起点に、子どもは自分が選んだ2首の和歌に込められた詠み手の思いや詠まれた風景を読み解いた。授業を担当した教育研究部部長の髙橋正充(まさみつ)先生は、自分と昔の人、双方のものの見方に着目できるように言葉をかけたと語る。

「子どもは恋を詠んだ歌に『相手を思う気持ちが分かる』と共感するなど、どの時代にも共通する人間の普遍的な感じ方もあれば、時代によって異なる感じ方もあることを実感していました。その見方・考え方は、社会科における歴史の学習などにもきっと役立つことと思います」(髙橋先生)

単元の終盤には自分が選んだ和歌の意味を熱く語るなど、昔の人のものの見方・感じ方を理解し、心から百人一首を楽しむ子どもの姿が見られた。

*2 「奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき」(猿丸太夫)と「秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ」(左京大夫顕輔[さきょうのだいぶあきすけ])。

課題解決の方法や学び方を、別の学びに転用する

6年生の体育では、単元末のマット運動発表会に向けて、子どもが自分で計画を立てて活動する授業を行った。体育科では「自分が運動して感じた問いを基に取り組む」ことを大切にして単元計画を練っている。本単元は、1・2コマ目にマット運動の既習事項を振り返り、教員が発表会のルールを説明した後、8コマ目の発表会に至るまでの5コマにおける活動をどう進めるかを子どもが自ら決め、自律的に取り組む形にした(図2)。

図2 6年生 体育「技をつないで なめらか マット運動」

体育館に貼られた単元計画表には空欄のコマがある。それは子どもが自分で計画を立て、練習するといった自律的な取り組みを意識できるようにするためだ。

子どもは各自、「ロンダートができるようになりたい」「後転をよりなめらかにする」などの課題を設定。自分の動きをクラスメートに撮影してもらって体の使い方を確認したり、手をつく位置を試行錯誤したりしながら活動に励んだ。発表会後の振り返りで、「ロンダートは前方に勢いをつけることが大事」「前転のコツは、頭、背中、お尻を順番にマットにつけること」 といった技のポイントが子ども同士で共有されると、ある子どもが「回転系の技はほとんどの技が勢いをつけることが大事なのでは?」と発言。それに周囲の子どもは深くうなずいた。授業を担当した探究部部長の福永祐一郎先生は、「個々の技の知識が共通する概念へと統合された瞬間でした。その気づきが共有されたことで、他の子どもも知識を概念化できました」と語る。

さらに、年度末のサッカーの単元では、「小学校の体育の授業で学んだことを振り返りながら学習を進める」ことを目標とし、単元の進め方やルールの大部分を子どもたちの裁量に委ねた。すると、子どもは「やってみないと課題が分からない」と、まずは試合を行い、「パスが苦手だから練習しよう」「空いたスペースをうまく使えるように作戦を練ろう」などと、自ら課題を見いだして活動に取り組んだ。

「マット運動で学んだ『課題を見つけ、試行錯誤しながら自律的に取り組む』という学習の進め方が、サッカーという異なる単元に転用され、総合的に発揮されていました」(福永先生)

教員の価値づけや声かけが知識の統合や転移を促す

子どもが自分のものとした概念を他の場面で活用する姿は、総合学習や他教科でも見られた。例えば、総合学習でドライヤーの製作に取り組んだ5年生は、その仕組みを理解するために理科の電気回路で学習したことを振り返り、発展的な学習にも取り組んだ。4年生の国語の授業では、1つのテーマから考えを膨らませる活動の際、「総合学習で学んだマインドマップが使えるのでは?」と子どもが提案し、思考ツールを教科学習に生かしていた。

「総合学習と教科学習が結びつくと、子どもの中に教科を学び直したい、さらに深めたいなどと学習の必然性が生まれたり、総合学習で身につけた汎用的スキルを教科学習で活用したりします。『これは別の学びでも生かせそうだ』とアンテナが立つと、総合的な発揮があらゆる場面で生じるものなのだと感じています。そのためには、子ども任せにせず、教員が指導性を発揮することが欠かせません」(福永先生)

同校では子どもに振り返りをタブレットに入力させ、教員がよいと思った振り返りには印をつけて価値づけし、クラス全体で共有。また、「ほかにどんな時に使えるかな」などと、意識的に子どもに問いかけている。青田伸一副校長は、「先生方は、子どもの『だったら』や『ということは』など、思考を展開する際に使われる言葉を拾い上げ、その発言を価値づけてクラス全体に広げています。それは、教科の枠を超えて知識を統合するきっかけをつくる、教員の重要な役割です」と語る。

子どもが総合学習と教科学習を往還する中で、双方の学びが深まるという相乗効果が生まれている同校。そうした確かな手応えと成果を受けて、2026年度は教科探究を軸とする授業づくりの研究に取り組んでいる。

『VIEW next』教育委員会版 2026年度 Vol.1
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