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オンライン座談会 開催リポート
次期学習指導要領を見据えた学校支援資質・能力の構造化で見えてくる、 授業改善支援のあり方
京都大学石井英真教授、秋田県教育委員会
2026/08/15 09:30
2026年7月21日、『VIEW next』教育委員会版編集部は、2026年度Vol.1の特集テーマと連動したオンライン座談会を開催した。次期学習指導要領で示されることになる資質・能力の構造化によって、授業はどのように改善され、その際、教育委員会には学校に対してどのような支援が求められるのか。京都大学の石井英真(てるまさ)教授と学力・体力などの各種調査で全国上位に位置する秋田県教育委員会が、次期学習指導要領を見据えた授業改善支援のあり方について語り合った。
『VIEW next』教育委員会版2026年度Vol.1は下記のリンクからご覧いただけます。
特集「シリーズ 次期学習指導要領を見据えた学校支援① 資質・能力の構造化で見えてくる、授業改善支援のあり方」
開催概要
日時 2026年7月21日(火)16:50〜17:50
形式 オンライン(ZOOM)
参加対象者 教育委員会 部・課長、指導主事
プログラム
・第1部:次期学習指導要領への対応・その本質の理解〜答えまでの距離が長い問いから考える
・第2部:教育委員会としての学校支援〜これからの「伴走」のあり方とは
登壇者

石井英真(いしい・てるまさ)
京都大学 大学院 教育学研究科 教授

安田浩幸(やすだ・ひろゆき)
秋田県教育委員会 教育長

真崎敦史(まさき・あつし)
秋田県教育委員会 義務教育課 学力向上・教育情報化推進チーム チームリーダー

藤谷 寛(ふじや・ひろし)
秋田県総合教育センター研修チーム 主幹(兼)チームリーダー

齋藤輝之(さいとう・てるゆき)
モデレーター
ベネッセコーポレーション VIEW next編集部 小中領域担当責任者
「生きて働かない学力問題」を解決するヒント―秋田県の「授業力のキーワード」
第1部では秋田県での実践を基に授業改善について語り合った。秋田県教育委員会は、子どもたちの授業中の発言や問いを大切にする、子ども主体の探究型授業に約30年前から力を入れてきた。文部科学省「全国学力・学習状況調査」などの各種調査で全国上位に位置する理由について、安田教育長は「学習・生活習慣に関する家庭の教育力や、地域の人たちを巻き込んだ学習の実践が子どもたちの意識を変え、自分で考えたり、学んだりする力や体力をバランスよく子どもたちに育んでいるのではないか」と説明した。
それを受けて中央教育審議会の委員の1人でもある石井教授は、「現行の学習指導要領が求めている『主体的・対話的で深い学び』の実現は、『生きて働かない学力問題』の解決にもつながる。生きて働かない学力とは、学んだはずのことを覚えていない、分かっていない、使うことができない状態のこと。その状態を改善するためには、問いと答えの間を長くすることが教員に求められる」と、授業改善に向けた1つの方向性を示した。
秋田県教育委員会の真崎(まさき)チームリーダーは、優れた授業アプローチを授業者の暗黙知にとどまらせず、誰もが再現できる形式知として共有するための「授業力のキーワード」(図)が、授業改善の共通の視点となっている現状を紹介。藤谷(ふじや)主幹は「授業力のキーワード」を踏まえ、見通しと振り返りを連動させれば、石井教授が指摘する、問いと答えの間を長くする授業を実現できると説明した。
秋田県教育委員会の実践に対して石井教授は、「子どもたちに学んでほしいことが、子どもたちの学びたいことになり、子どもたちがともに考えることで『分からない』が『分かった、できた』に変わる、優れた授業が教員間で共有できている」と評価。モデレーターの齋藤は、秋田県教育委員会が長く取り組んできた授業改善に向けた施策が、次期学習指導要領の方向性にも合致していることを改めて整理し、第1部を終えた。
教育委員会に求められる伴走とは、子どもをともに見て、一緒に実践する関係づくり
第2部では学校に対する伴走支援について語り合った。秋田県教育委員会では、指導主事が研究校に年20回訪問するなど、手厚い伴走型支援を行っている。真崎チームリーダーと藤谷主幹は、これまでの指導主事の役割は実践された授業に対して評価を行うことが主であったが、秋田県教育委員会では、指導主事が現場の教員と同じ目線に立ち、一緒に授業をつくる伴走役となっていると説明。単元計画の作成など、授業構想の段階から議論に加わり、時にはチーム・ティーチングの形で授業にも参加して、子どもたちのために何ができるのかを現場の教員とともに考えていることを紹介した。
2人の説明を受けて石井教授は、「秋田県教育委員会は、若手の教員が指導主事と一緒に授業をつくることで、先輩の背中、横顔、手元から学ぶことができている。授業改善における伴走役には、ただ寄り添うのではなく、一緒に授業をつくることで、授業者が何に悩んでいるのかをつかみ取ることが求められる」と、これからの伴走支援の核心を指摘した。
安田教育長は今後力を入れていきたいこととして、一人ひとりの子どもが持つ力を見いだし、伸ばすことができる授業のあり方の追究を挙げた。そして「自治体を超えて知見や実践を共有しながら、子どもたちの夢や希望の実現を支援する学校づくりを進めていきたい」と展望を語った。
石井教授は、「これまでは、先生方が『こういう授業をしなければいけない』と求められることが多く、『目の前の子どもたちとこんな授業をしたい』といった、自分の思いを解き放てる機会が少なかった。調整授業時数制度(*)などを活用して先生方がやってみたい授業、子どもたちがもっと学びたいと思える授業を実現していってほしい」と、次期学習指導要領を見据えた現場への願いを語り、会が閉じられた。
* 各校の判断により、各教科の標準授業時数を調整して教育課程を編成することを可能とし、生み出した時数を他教科や学校が必要とした独自のプログラム、教員の組織的な研究・研修などに充当できるようにする制度。
参加者の声
・秋田県教育委員会の具体的な取り組みと、その背景にある考えがよく理解できた。「伴走型支援」の方法を早速、本市の指導主事の実践に取り入れたいと思う。石井教授の話を聞いて、「問い」「伴走」「働き方改革」などについても整理ができた。
・秋田県教育委員会のような学校への伴走支援が、今後は一層大切になると思う。子どもたちの「やりたい」と現場の先生方の「やりたい」をともに支援する教育委員会のあり方とはどのようなものか、私にとっての「問い」が生まれた。
・秋田県教育委員会の素晴らしい取り組みを、石井教授の解説とともに聞くことで、理解がより深まったように思う。「生きて働かない学力問題」など、石井教授のキャッチーな表現とポイントを突いたお話から多くの学びを得ることができた。


